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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第39話 自覚のない気持ち

 ザイルは少し考え込んでいた。


 今朝のガイウスとのやり取りで、自分が口にしたことを逆にシュートにも返されたからだ。



『ルチャルのことを気にかけている』。



 それはむしろお前じゃないかと言われたことに、何故か焦ってしまい……訓練にも打ち込めずに、滞在場所に借りている騎士寮の一室で悶々と考え込んでいたのである。



「……俺が? ルチャルを??」



 ガイウスに告げたときは、何故かイラッとした感情が込み上げてきて……つい口にしただけだったのだが。


 ふたりに言われたあとに、どうしてあそこまで焦ってしまったのか、自分でもよくわかっていない。けれど、ルチャルに『自分は子ども』ときっぱり言われたときにも……どうしてか、ほっとしてしまった気持ちも嘘ではない。


 なら、本当に……ザイル自身は必要以上にルチャルを気にかけてしまっているということなのか。


 何度も何度も繰り返し考えてみたものの、その答えは同じものに行き当たりそうになっている。


『その通り』であると。



「……えぇ? いきなり、見込み無し言われたガキに? いや、ガキだけど……俺、幼女趣味なんて持ってないない!!?」



 だがしかし、ルチャルは『普通の子ども』ではない。大人顔負けの頭の回転力に、気配り上手。


 今日のガイウスの頼みも、彼がルチャルのパンの虜になったから頼まれただけで……それに、軽く嫉妬のような気持ちが沸き上がってあんな発言をしたまでだ。


 つまりは、懸想しているのはザイル自身だと自分で言っていたようなもの。自分で墓穴を掘るような真似をしてしまったのだ。けれど、ルチャルの目にはそんな対象に映っていない。脈無しとも言われたのと同じこと。


 そこに考えが追い付くと、『ちくしょう……』と、自分で考えてみて悔しくなってきた。



「……ぜってぇ、振り向かせてみせる!」



 だが逆に、今までにない『欲望』も沸き上がってきた。


 どんな女にも振り向いた試しのない、ザイル本人が。はじめて、『欲しい』と思った相手だ。シュートとかに下手に打ち明けても、笑われるとかで終わるかもしれない。そうじゃないと言われたとしても、これは自分自身の感情の表われだ。


 自分也に行き着いた答え。


 短い期間だが、ルチャルの良し悪しを見てきたのはザイルだけだ。見てきたからこそ、必要以上に気に入っていたし、祖国へと連れて行きたいのも本当だった。



「冒険者ランクにも靡かない女……だからこそ、最初から気に入ってたんだ。絶対、俺の女にしてやるぜ!!」



 意気込みが出来たのはいいものの、今までろくに女へのアピールをしたことがないザイルだったが。そこは流石に、幼馴染みの助力が欲しくなってきて……結局は、訓練途中のシュートを引きずり出して聞き出すことにした。


 当然、苦笑いされたが『マジか……』と、本気でいっしょに考えてくれるようだった。幼馴染みの初恋が超歳の差恋愛だと知ると、迂闊なことが言えないからだろう。ザイルも少し冷静になったところで、それを理解するのだった。

次回は土曜日〜

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