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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第38話 リクエストのパンに悩む

 ルチャルはガイウスからのリクエストされたパンをどれにしようか……非常に悩んでいた。


 今日まで食べたことのないパン以外。


 けれど、ほとんどなんでもいいという難題。


 これをクリアするには、どのパンがいいのか。朝ご飯にはオープンサンドにしてしまったので、それ以外の軽食系も省かなくてはいけなかった。



「う~~ん。なにがいいんだろ?」

『難しいねぇ?』



 厨房の隅でシュスイと悩んでいたルチャル。


 マルシスたちには生地の分割と丸めを練習させているので、観察しながらも頭の中ではリクエストのパンを悩んでいるのだ。器用なように見えて、ふたつのことを考えているだけだから本人的には難しくない。


 さておき、リクエストのパンを何にしようかは候補を挙げても消すの繰り返しをしていた。



「揚げパン系も却下」

『だねぇ?』

「サンドイッチっぽいのも朝お出ししたし」

『それはいいんじゃないのかい?』

「出来れば、とは言われたけど。別のがいいじゃない?」

『ふーむ。だとしたら、総菜系はどうだい?』

「総菜……カレーパン以外で?」

『別にカレーパンにこだわらなくてもいいだろう?』

「まあ、たしかに」



 甘いものでもいいが、しょっぱいものでもいい。それなら、今回は初回に食べさせたカレーパンのような『総菜』系にしようか。


 包み込むか、挟むか。


 それによって、用意する材料も変わってくるのでまた悩むが。


 今回は、時間を少しかけていいのでこの国でも『まだ食べられていない』パンを作ってみることにした。


 そのために、用意した材料と言うのが。



「……ルチャルさん。この大量のバターは??」



 マルシスらに相当驚かれるくらいに、用意した材料は『バター』。これまでの生地よりも段違いに用意したので、圧倒されるのも仕方がない。無限収納棚から透明の袋を取り出し、その中へ板状にしたバターを敷き詰めていく。



「これをもっと大きな『板』にして、生地に練り込むようにするんです」

「……べたべたになりませんか?」

「今回は冷たいままを維持するので、冷却魔法も同時にかけるんです」

「……そんな、パンが?」

「総称名は、『デニッシュ』と言います」



 焼き上がりもだが、味も格別だと思っているパンの種類。


 手間暇はかなりこだわらなくてはいけないが、その分とても美味しいとガイウスが喜んでくれる顔を見れれば問題はない。


 ザイルの機嫌も少しは戻るのなら、多少の手間をかけるのは大したことはないのだとルチャルは麺棒でバターをシート状にしていく。


 マルシスらには、別に用意してもらった生地を伸ばす作業をしてもらう。この分担作業があるだけでも、デニッシュ生地の手間がぐっと楽になるのだ。


 生地とバターを挟み込み。


 シュスイが変身した器具で、さらにシート状にする。伸ばして重ねて、また伸ばして。間に冷却魔法を何度か繰り返しかけて。


 そして、出来上がった生地は卵色の美しい大きなシート状のものとなった。



「これを、どう成形するんですか?」

「今回はシンプルなものに仕上げるので、カットだけは私がしますね」



 用意していた包丁で、さっさと、長い三角形の形に切り分けていく。余った生地は、ルチャルの無限収納棚に入れていくから問題ない。あとで、適当な成形をして焼けばいいことだから。


 三角の生地をくるくると巻いて、綴じ目をしっかりくっつけ。


 これを発酵させたら、あとは焼くだけ。


 まずは、クロワッサンにするためのパン作り。焼き上がった後に、軽く冷却をかければ、完成である。



「……巻き型のパン?」

「バターの香りが、凄くいいですね」

「これだけでも、テーブルパンにしていいんですが。今日は公主様のリクエストなので、もう少し豪華に仕上げます」



 無限収納棚から取り出した、小さな小瓶の中身がその要となる食材なのだ。


 これを、あらかじめ作っておいた『卵サラダ』と混ぜ合わせれば……高級感のあるサンドイッチとなるわけで。味見が今から楽しみだった。

次回は木曜日〜

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