第36話 鍛冶部門も看破
「噂には聞いてたが、マジでちっこいな?」
朝食の戦争(?)が終わったあとに、シュートたちに事情を話したら連れて行ってやると簡単に了承をもらえたので。ルチャルは、自分用に作ったオープンサンドなどの在庫確認をしてから、彼のあとについて鍛冶部門の棟へと連れて行ってもらった。暇つぶしも兼ねて、とザイルももちろんついてきた。
そこで、管理責任のフィンドという壮年の男性とあいさつすることになったが、開口一番にルチャルの見た目に関心されたのである。年齢のこともあり、ルチャルくらいの子どもの背丈は普通だが、職人の地位を持つ者としてはだいぶ若いからからかってはいない雰囲気だった。
「ルチャルです。セルディアスから来ました」
「おう。よろしくな? んで、シュート副団長は俺になにを依頼したいんだ?」
「詳しくは、ルチャルから聞いてくれ。職人の欲しいものは俺にはさっぱりでな?」
「ふーん? 嬢ちゃん。なにが欲しいんだ?」
わざわざ屈んでまで目線を合わせてくれたので、これはちゃんと話を聞いてくれる人だと嬉しくなる。そこで、無限収納棚かなオープンサンドをひとつ取り出してフィンドの前に差し出した。
「こういったパンを作るための……調理器具です。まずは、大きなボウルが欲しいんです」
「ボウル? ……そのパン、なんだ?」
「あげます。あたしの故郷では普通のパンです」
「お、おお……」
少し強引に手の上に乗せてみたが、ごつごつした皮膚の感触から間違いなくこの人物も『職人』だと理解できた。シュートらの様子を見てから、ひと口かじってくれたが。すぐに、そのパンの美味しさを理解してがつがつと食べ進めてくれた。
「美味しいですか?」
自分が作ったものをこんなにも豪快に食べてくれるのが嬉しい感情がにじみ出てしまう。フィンドは、ルチャルの問いかけにパンを飲み込んでから頷いてくれた。
「おう。こりゃ、すっげぇ美味い!! パンは香ばしいだけじゃなく、柔らかいし甘くて最高だ!! 間に具が入っているのも面白いな? このパンを、この国でも作れるようにしたいのか?」
「はい。それがあたしのお役目です」
「そうか。それに加担出来るって言うんなら、喜んで力を貸すぜ」
了承がもらえたので、さっそくと言わんばかりに打ち合わせをしていく。ボウルの大きさと数を調整し、いつくらいまで試作を見せれるかなど。
だいたい決まったら、三日後くらいにしようということになったため、ルチャルはまたパンの差し入れを持ってくる約束をして騎士団の寮へ戻ることにした。
「騎士団以外の食堂って、あるんですか?」
「あるぜ? って。まだ来たばっかりなのに、もうほかのとこも考えてくれんのか?」
「そうですね。騎士団の食堂とかの噂が広がっているのなら、食べたい人たちは多いでしょうし」
「だからって、目標は国全体だろ? 冒険者ギルドとかもまだなのに」
「ザイルの言うことも最もだ。無茶はしないでいい」
「んー。じゃ、次は鍛冶部門のとことかに絞ると?」
「そんくらいでいいだろ?」
「だな」
決めるのは公主であるガイウスの方が決定権が上でも。その幼馴染みのふたりがこういった意見をくれるのだから、その意見を捻じ曲げて行動に移すのはよくない。子どもだからとは言え、ルチャルもそこそこ以上の養育を受けた身。大人の会話には慣れているし、気配り過ぎにも度を越してもよくないのはわかっているため、それには頷くことにした。
「まずは、白パン定着出来るくらいにマルシスさんたちには修行を頑張ってもらっています」
「あのパンな~?」
「美味いよな~? 親方が初見でがっつくくらい美味いし、飽きねぇし」
「余っても揚げパンに出来ますしね」
「あのパンやばかったもんな~?」
「だな? 俺も好みだ」
「今頃発酵が終わると思うので、余り生地で作ろうか? ザイル」
「いいのか?」
「その代わり。無賃宿にしないためにも、稽古頑張ってきて」
「……あいよ」
「今朝のも、ルチャルが言い出してくれたのか?」
「何もしないでぼけっとしてるよりも。体を動かして空腹にした方が、食事はより美味しいからです」
「なるほどな?」
祖の受け売りだが、燃費の悪いルチャルにそんな楽しい言葉を教えてくれたのだ。実際、その通りだったのはこれまでにもあったし、ザイルとの短い旅路でも彼に沁み込ませていた。
とりあえず、食堂で別れたあとは指導再開と声を上げながら厨房に入っていく。
次回は土曜日〜




