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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第30話『ホイップ入りの揚げドーナツ』①

 揚げドーナツのやり方をシャルルに教えたあとに、マルシスには『絞り袋』の作り方を教えてあげることにした。


 チョコレートがひとつ、ホイップクリームがひとつ。


 先端の金具は今回、ルチャルの持っている道具を貸すこととなった。ゼスティア公国では絞り袋の使用が特にないらしいので、ホイップクリームを作ってもスプーンで添えたりする程度にしか盛り付け方もないそう。


 だとしたら、ケーキの作り方についても改善すれば子どもたちが喜ぶかもしれない。それをふたりに言えば、目を輝かせるようにして喜んでくれた。



「タルトやパウンドくらいはあるんですが、それ以外のも?」

「もっとふわふわしたものとか、どっしりと重いのとか色々ありますよー?」

「「楽しみです」」

「それはまたの機会にしましょう。今回はパンなので」



 揚げパンが出来上がってから、注入口のために細い菜箸を使ってパンに少し穴を空ける。


 三人で全部に穴を空けてから、まずはチョコレートの袋を持ってひとつ手本を見せてやることにした。医療で言うような注射のみたにして、ちゅ、っと少し奥の方に入れてやるのだ。



「軽くいれるだけですか?」

「あとで、ホイップクリームを多めに入れるためですねぇ」

「俺、やってみてもいいですか?」

「どうぞどうぞ~」



 しかし、初心者ゆえの失敗が発生し、注入口からあふれんばかりに零れ落ちてしまった。



「……加減したつもりが」

「やさーしく、あんこを包むときと同じくらいに加減しなくては。今度は両方の手本見せますね?」



 中央部分にチョコレートを入れるイメージと。その周りをコーティングするイメージでホイップクリームを多めに入れていく。


 それを作ってから包丁で半分にカット。イメージ通りの仕上がりになっていたので、これまたふたりには驚かれた。



「きれいな断面……」

「たしかに、いっしょに揚げたらこんな断面にはなりませんね?」

「師や祖だと、作れそうですけど。あたしじゃまだ出来ないので」

「ルチャルさんでも……?」

「まだまだ修行の身です」

「「……おぉ」」

「さ、食べてみてください」

「「はい!」」



 出来立てではないのでやけどすることはないが、クリームを服にこぼす可能性はある。そこの注意点だけ伝えてから食べてもらうと、ふたりとも口周りをべとべとにしながらも幸せそうな表情で頬張ってくれた。



「なんて言うんでしょう……幸せな気分に」

「美味しい。……パンもふわふわとさくさくが病みつきで」

「「いくらでも欲しくなっちゃう味です……」」

「クリームは他にもいろいろありますが。ベリーのジャムと合わせるのもいいですね? この国では基本の食材ですよね?」

「! ジャムとホイップクリーム!! たしかに美味しそうだ」

「ジャム、たしか冷蔵庫の中にあります!!」



 すぐに試したい気持ちになるのは、余程気に入ってくれた証拠だ。ルチャルもこの国のジャムは食べたことがないので、是非とも食べてみたい。今朝の食事は昨夜のシチューではなく基本のスープとライ麦パンだったのでそれを美味しくいただいたからだ。あれはあれで、なかなかに美味しかったので具材をアレンジしたのはマルシスたちの案だろう。



「おーい、ルチャル!! 出来た??」



 ジャムの絞り袋を作ろうとしたところで、ザイルが戻ってきた。後ろには何故か疲れた表情のガイウスがいたので、質問してみれば稽古場で相手をしてもらったが太刀打ちできない状況まで追い詰められたらしい。


 しかし、相手をしろと頼んだのはガイウス自身なので、ルチャルが怒る意味はないそうだ。



「もうすぐ美味しいおやつが出来るので、待っていてください」

「ああ、ありがとう」



 出来立てを食べれるなら、それもいいことだ。立場上、少し冷めたものを食べることが多い彼にはいい機会かもしれないと思って。

次回は土曜日〜

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