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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第28話 包み方の難しさ

「「むむ……」」

「はい。それはそれで包みましょう。次、次!」

「「くぅう……」」



 チョコレートづくりが終わる頃に、あんこが適温なくらいに冷めたので。


 ルチャルは『あんドーナツ』にすべく、マルシスたちに次の指導を進めていたのだ。


『包餡』という技術だが、すぐに出来るものでないのは当然。包み技術がゼスティア公国にはほとんどないことがわかっていたため、失敗の連続が多いのは仕様がない。そのため、生地がデコボコになったり、穴が開くように押し込んでしまうなどの結果が出て当然。


 ただし、それをリカバリーするのがルチャルの仕事となった。あまり穴あきが酷いと油で揚げときに跳ねの原因になることが多いからだ。



「今回はあんこを『玉』にしている分、簡略化しているんですよ?」

「……それでも、ルチャルさんのは綺麗」

「私、舐めてました……」

「そりゃ、五年以上は修行しているので出来てないと」

「「ううっ……」」



 ふたりに告げた通り、最初の最初は大きく失敗したのはルチャルも同じだった。味もだが、技術についても土遊びの延長線上になってしまったのも多かったのだ。


 それを根気よく練習を積み重ねたことで、今では『筆頭弟子』などと呼ばれるくらいに成長したのである。ルチャル自身の努力もあるが、師や兄弟弟子らとの協力があってこそだ。ひとりで出来るようになったとは、微塵も思っていない。



「さて。先に包んだのを揚げますか」

「「!!」」



 揚げパンの味は、先にザイルの反応を軽く見ていたので期待が高まったのだろう。


 コンロに用意しておいた揚げ鍋に、ふたつ生地を入れ……ぷくぷくと泡が立ったらしばらくは触らない。揚げ物の基本だ。



「ほんのり、茶色になるまで火を通したらひっくり返して」



 いわゆる『きつね色』になったら、もう片面も同じようにして火を通す。間に出来た『線』を気にするのであればくるくる回すようにひっくり返すが今回はしないでおく。ルチャルの好みとしては、その境目の油の吸い方が美味しいと思っているからだ。


 かりっ、となるまで揚がったら、トングでシュガーパウダーのバットに入れまんべんなく白く化粧を施す。試食するときに、半分にカットしてから薄紙に包んで完成だ。


 あんこの周りがふんわりしたパン生地に出来上がっているので、これはこれで成功と言えよう。


 出来上がりを見て、マルシスたちが唾を飲み込んだのを見逃さない。どうぞ、と薦めればすぐに食べ始めてくれた。



「!? ふっわふわ。え? 甘いけど、しっとりもしてて」

「砂糖をたっぷりつけたのに、甘過ぎない。かりっとしているとこの食感が堪らないですよ!!」

「どうです? はじめてのドーナツは」

「「めちゃくちゃ好きです!!」」

『ルチャルの揚げ方は絶妙やからねぇ?』

「うん。今日も美味しい」



 自分で食べても美味しく出来ていることが確認出来てからは。


 次に、チョコレート入りのホイップドーナツを作るため、シャルルにはホイップづくりを。マルシスには普通にベンチタイムを入れて軽く膨らんだ生地を揚げるところを教えてやった。てっきり包んでから揚げるものだと思っていたらしいが、チョコレートでそれを作るのは祖や師でも作ったのを見たことがないので……多分、失敗しやすいと認識していた。


 チョコレートをトリュフ型にしても熱で溶けやすいので生地から爆発するくらいは……カレーパンでもよくある失敗なので、ルチャルも却下することにした。あれも作りたいのだが、ガイウスには一度食べてもらっているので今回はやめておいたのである。

次回は火曜日〜

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