第27話『あんこの作り方』
小豆はないが、似たような赤い豆で『あんこ』を作るところから始める。
そのためには、異能の中のスキルたちを思いっきり活用することにした。今回はガイウスのリクエストを叶えるためなので、時間をかけ過ぎてもいけないからだ。
「重ね掛け、短縮化! 最大短縮!!」
祖や師も得意とする『時間短縮』というユニークスキル。文字通り、対象物の時間の流れを一気に縮めるだけでなく……『工程を短縮』してしまうスキルのことだ。
これを魔術と魔法で研究はセルディアス以外でもされているとルチャルは聞いたことがあっても、使用可能にできるのはやはり師から異能を賜った弟子たちにしか出来ていないとされている。
マルシスたちには驚きを与えてしまったが、ルチャルの腕前を知っているので『そういうものだ』とすぐに認識をしてくれたが。
「豆に水を吸わせて……どうするんですか?」
「茹でてスープとかにするんじゃなくて。砂糖と一緒に煮て、パンの中身にしちゃいます」
「「ええ??」」
「手づくりだと、ひと晩水を吸わせたりとかするので。今回はあたしのスキルを使いました。煮たときの柔らかさが段違いですよ!」
鍋一杯の豆とさらに水を足してよく煮詰め、灰汁を適度に取ったら砂糖を加えてさらに煮込む。
とろとろしてきて、水気がなくなってきたら潰す工程にはマルシスたちをさらに驚かせた。
「え? 豆を潰して??」
「そりゃ、これで『あんこ』というのを作るためです」
「「あんこ??」」
「パンの内側に入れる具材でも、豆のそれの呼び名だそうです。祖が教えてくださいました」
「……セルディアスの救世主が?」
「だそうです。祖のあんぱんは美味しいんですよねぇ……」
数回しか口にしていないが、ひ孫のように可愛がってくれたルチャルにわざわざ振舞ってくれたのだ。パン生地の美味しさもだが中身のそれも極上と言えるくらいに美味だったのを覚えている。
まだまだ技術も遠く及ばないが、基礎以上の及第点をもらえているのは三世代目でもルチャルくらい。自分としては微妙だとルチャルは思っているのだが、ほかの兄弟弟子らには『とんでもない』と言われる仕上がりだそう。
潰し終えてから軽く味見。まだ砂糖が欲しいところだと、シャルルから受け取って加減しながらも足す。仕上げにはほんのひとつまみの塩だ。
「せっかく砂糖を入れたのに?」
「塩でかえって味が引き締まるんです。スープの味が足りないときに塩を入れるとは少し意味合いが違うそうですが」
「「……これが、あんこ??」」
「食べてみます?」
「「はい」」
スプーンでひと口食べてみてくれたが、豆の甘煮というのが食事のそれにないので緊張しながらの様子で口に運んでくれていた。
だが、豆のほくほく感と砂糖の甘さが舌の上で転がっていくのが分かった途端、表情に変化があった。とても美味しいと言わんばかりに笑顔になってくれたから。
「面白い味でしょう?」
「ええ、これは!」
「柔らかいだけじゃなくて……とても、優しい味」
「本当は小豆がいいんですけど。この赤豆でも悪くない味ですしね。これを、さっき作って発酵させた生地で包むんです」
「それを、揚げると?」
「病みつき間違いなしのおやつです。あと、カカオ豆でチョコも作って、クリームにもしますよ~」
「……あの、豆を??」
あんこの認識にも少し手本が必要だったが、カカオ豆についても色々レシピを開示せねばと意気込むルチャルだった。
ひとまず、あんこはルチャルの無限収納棚へ保管しておき、カカオ豆の加工をスタートすることに。頑張って、カカオ豆の皮を剥いでくれていたシュスイにはあんこ玉にしておやつを食べさせてやった。
次回は土曜日〜




