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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第24話『ハンバーガーとカツサンド』

 ひき肉にした肉に、つなぎになる食材を混ぜてから……『パティ』なる平たい肉に仕上げていく。


 これについては、マルシスたちが『あ』と声を上げたのでどうしたのかと、ルチャルは振り返った。



「ルチャルさんの作り方とは少し違うんですが。余った肉を叩いて平たくしたものをパンと食べたりしてたんです」

「ああ。じゃあ、概念みたいな食事法はあったんですね? これを師匠たちは『ハンバーグ』と呼んでいました」

「「「ハンバーグ??」」」

「詳しくはわからないですが。師匠も母君でいらっしゃる祖から伺っただけだと。子どもの頃には普通に食べていらしたそうです」

「セルディアスも【枯渇の悪食】 の影響は強かったが、その祖って人物のお陰で食事が潤ったのか?」

「俺もソーウェンに居た頃はそう聞いた気がするぜ」

「合ってますよ~? あたしが生まれる前には、国のあちこちでレシピが充実していたそうです」



 シュートの疑問の通り、セルディアスでも【枯渇の悪食】による影響は強かった。というか、根源の国だったと知っているのはごく一部の限られた人間しか知られていない。


 ルチャルも、リーシャの弟子になるまでその事実を知らないでいた。今ここで告げても混乱を招くだけなので言わないでおくが、頭のいいシュートらにはバレていてもおかしくない。けど、それ以上言わないでくれているから、ルチャルはハンバーグを焼くのはマルシスたちに頼んで……もうひとつの具材に取り掛かった。



「ルチャル? そりゃ、パンの屑か?」



 無限収納棚から取り出した材料を見て、ザイルに聞かれたので『そうだ』と答えてやった。ゼスティア公国に来る途中では、『パン粉』を使う料理は振舞っていなかったのでわからなくても仕方がない。



「さっき、ザイルが持ってきてくれたこのお肉を少し厚めに切って」

「おう」

「小麦粉、卵、水少しの『バッター液』にお肉をくぐらせて……そのあとに、このパン粉をつける」

「んん??」

「最後に焼くんじゃなくて、油で揚げるの」



 シュスイが変換(チェンジ)していた揚げ鍋で温まっていた油の中に沈め、トングを使ってひっくり返すタイミングを見計らう。生でもいけないし、かちかちに揚げ過ぎてもいけない。絶妙なタイミングを見つけて、こんがりした色合いに仕上がったら網をセットにしてあるバットの上に引き上げた。



「……このまま、食えるのか?」



 狩りで腹が減っているのだろうが、まだだと待ったをかける。出来立ても美味しいカツにはなっているだろうが、せっかく作ったパンと食べて欲しいのでシャルルにお願いしていたキャベツの千切りといっしょにこれから挟むのだ。



「予熱でしっかり火の通ったカツを適度な大きさに切って。切り込みを入れた白パンにキャベツ、カツ、ソースを垂らして」



 ハンバーグの方もマルシスが焼けたと教えてくれたら同じように仕上げ。


 簡易版ではあるが、オープンサンドでの『ハンバーガー』と『カツサンド』の出来上がりとなった。食堂に匂いが漂うので、あとから来た騎士らが騒がしくなってきた。とはいえ、ザイルとの約束は忘れていないので試食用に仕上げたトレーを差し出してやれば。



「……うっまそ!? 熱々の飯って、やべーな!!」

「ほんとに熱いから、口の火傷だけは注意してね~?」

「おう!! ……あふ!? んっめぇ!!」



 怒号に近いような歓声に、食堂がさらに騒がしくなるのは仕方がないと言うべきか。シュートが黙らせようとしたのだが、何かがきっかけでいきなり『し……ん』となったので、ルチャルがそちらを覗き見てみた。



「……狩りで疲れたのはわからなくもない。食事はきちんと用意されているのだ。しばし、待つことすらできないのか?」



 団長のライオスが静かな怒りを露わにしてくれたお陰だとわかった。少し怖い雰囲気だったが、厳しい発言があったからこそ喧噪に近い騒ぎが落ち着いたのでこちらとしては有難い。なので、ほかの調理人らが間を縫ってこっちに来てくれたため、急いで配膳の準備を始めるのだった。


 マルシスたちにだいたいの手順を教えたあとに、ルチャルはザイルへ感想を聞くことにしたが。



「ザイル? 美味しいのはわかったけど、はしゃぎすぎだよ~」

「だって、うっめぇし? ハンバーガーの方はこっちで今まで食べてたやつよりやわらけぇし、味付けしっかりで食べやすいしよ? カツは初めてだな、こんな食べ方。だけど、パン屑がサクサクしてんのやべぇ……病みつきになりそう!!」

「ども~。食べきれなかったとか、余ったパンを砕いて使うと料理の素材にも出来るんだよ? ライ麦パンはちょっと難しいけど」

「へぇ? んじゃ、ソーウェンとかでも食えるように出来そうだな?」

「ソーウェンには、先に誰か伝えていそうだけどね?」

「かもな? けど、俺はお袋たちにルチャルのこと紹介してぇな?」

「ほーん? いいけど? あの国は国土広いから、数人がかりでレシピ改善しなきゃって師匠も言ってたし」

「そーなんだよ。王都以外の地方が馬鹿でかい」

「ルチャルちゃ~~ん!! パン美味しいよ~~!! お代わりしたいくらい!!」

「あ、はーい」



 エクシスもさっそく食べてくれたのか、こっちにダッシュしてきそうだったのでザイルの後ろに隠れながら厨房に戻ったのだった。


 その日から、氷熊以外にも『ハンバーグ』と『カツ』の応用が出来ないかマルシスたちに聞かれたので、どんな肉が需要としてあるかを聞いてから返答してやった。体資本の騎士団に加え、公主の食事事情も大幅に変わったことで……ガイウスの食事管理もきちんと出来るようになったと、ライオスから改めて礼を言ってもらえたのは嬉しい限りだ。



「ルチャルの提案してくれるレシピはどれも美味いな? まだまだありそうで期待が膨らむよ」

「では、ガイウス様。おやつとかはどうでしょう?」

「おやつ? 甘いものまで可能なのか?」

「パンの可能性は無限にありますから」



 その試食係にはもちろん、ザイルが幼馴染みということで任命したのだった。

次回は土曜日〜

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