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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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23/25

第23話 パン作りのためにも……

 ルチャルは少し考えていた。


 厨房の面々にシュスイと契約していることは告げてあるし、自身の異能のお陰で少し以上の速さでパン作りが作れることも可能だとは伝えたが。


 もともとの『白パン』の概念がない国で、どのようにしてそのパンをこの国に広めていけばいいのか。


 レシピを伝えれば完了……では、よくないと思う。一定の指導者になれるまでの技術取得のために、『弟子』のような人材が必要なのだと思ったのだ。


 かといって、大人がルチャルのような子どもの弟子になるなど、普通なら言語道断だとか思うだろう。『普通』なら。


 厨房の面々に関しては、昨夜の調理の腕前を見てもらっているので変な忌避感を覚えられていない。むしろ、好印象を持たれていた。


 とくれば、男女一名ずつは指名したいところだったので選んだのが。



「「よろしくお願いします」」

「よろしくです」



 男性はマルシス。女性は調理人として少し歴が長いという、シャルルという若い者を選んだ。


 ルチャルが子どもの使者であれ、昨夜の高速調理を見てもらった中で『目』の良さを重視して選んだのだ。工程を視線で追えるという人材は、適任者に相応しいと思ったので。



『わっちが、シュスイ』



 契約精霊の姿を見せれば、軽く驚いたがルチャルへしたように会釈をしてくれた。なにかで見慣れているのかと聞けば、森に行くと精霊があちこち居て、契約する者は冒険者でも多いからだと。



「騎士団のメンバーでも契約している人はいますね」

「けど、基本影に入れているのであんまり表側には出さないんですよ」

「なるほど。あたしはこの子と基本的にパン作りをします。……見ててください」



 無限収納棚を解放し、そのあとに調理器具への変換(チェンジ)とだいたいのスキルで『食パン』を作り上げた。今度は当然、目を丸くしたふたりだったので質問攻めをされる前にルチャルは待ったをかけた。



「「??」」

「この異能は師から受け継いだものです。あたしが皆さんに教えるのは、昨日マルシスさんに教えたように……手仕込みが基本。道具についてはすぐに調達できないのでシュスイのような精霊に頼むしか出来ません」

「というと、あくまで手本ってこと?」

「シャルルさんの言う通りです。あたしも最初からシュスイたちに頼んでいたわけじゃないので」

『わっちのは、あくまで大量生産型の補佐だね』

「「へー」」

「とりあえず、ほかにも足りない道具は多いので……まずは、白パンの大きいサイズをたくさん作りましょう!! 氷熊のお肉でつくりたいサンドイッチがあるので」

「「はい!!」」



 粉の種類。酵母と水の加え方。


 こね上げに、発酵の時間の割り振り。


 窯で焼くのに、様々な手順があることを昨日はマルシスだけには教えたが。シャルルには覚えることが多過ぎて、頭の中がしぼむ勢いで考え込むほどだった。



「……覚えること、たくさんあるんですね」

「まだ序の口ですよ? 型を必要とするものや、具材を混ぜたり形を変えたりするものまで色々あります」

「ふぇ~! 料理長、覚えきれます??」

「うーん。俺もまだ自信はないな……」

「ふたりを中心に覚えてもらいますから。ひと月くらいは覚悟してくださいよ?」

「「あ、はい」」

「焼き上がったら、今度は冷却(コールド)で乾燥手前くらいまで冷まして」



 とここで、狩りから解体状態で搬入された『氷熊』の肉が。持ってきたのはザイルとシュートで、昨日告げた『ハンバーガー』と『カツサンド』を早速食べたいのだろう。



「ルチャル~。サシの多い部分選んできたぜ!」

「ありがとー。随分いいとこもらえたんだね?」

「ザイルの野郎。先頭になって突っ込んだから……ほとんど、狩りもこいつの手柄なんだ」

「へっへ~!!」

「おお。それはそれは、試食係の第一号に任命しよう」

「よっしゃ!!」



 マルシスたちにも運搬の手伝いを頼み、まずはハンバーガーの方が時間がかかるのでカツサンド用の肉にスライスした以外の余り肉を……大人ふたりでミンチ肉にしてもらうところから始まった。


次回は木曜日〜

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