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異世界生活三ヶ月、歪んだ心と暗黒の芽生え

この世界に来て三ヶ月

最初に来た頃とは、鏡を見るまでもなく別人だとわかる。服がはち切れんばかりに筋肉が付き、腕は太くなった。だが、その代償として、洗剤も通さない汚れと汗が染み込んだ服は、肌にべったりと張り付いて不快感を煽る。

手製の木刀も十五本ほどに増えた。しかし、二ヶ月間死ぬ気で振り続けても、第一節すら体得できていない。

(*……剣術なんて、そんな簡単に身につくもんじゃない。わかってるんだが……*)

孤独が俺を蝕んでいた。誰でもいい、言葉を交わしたい。この沈黙だけの世界に、もう吐き気がする。

その夜、事件は起きた。

頬を叩く水の冷たさに飛び起きると、ボロ小屋の屋根から雨が滝のように漏れ出していた。

「……っ、クソが!」

冷気と雨水に打たれ、体はガタガタと震え出す。俺は濡れていない隅の方へ逃げ込み、枕や毛布を幾重にも重ねて、凍える尻の下に敷いた。

「……最悪だ。死ぬぞ、これじゃ」

真夜中の豪雨の中、身を縮めることしかできない無力感が、俺の心をさらに暗く染めていった。

翌朝、小屋の中は無残な有様だった。サクラの本は無事だったが、集めた薪はすべて水を吸い、中も泥だらけだ。

俺は現実から逃げるように、新しい屋根の材料を探すために森へ入った。

家に戻り、拾ってきた枝の皮を剥ぎ取る。だが、苛立ちから力が入りすぎ、愛用の石器ナイフが粉々に砕け散った。

「……っ、ふざけんなよ!」

大きく息を吐き、自分を落ち着かせる。今度は慎重に、ゆっくりと剥ぎ取る。

昼飯はベリーだけで済ませ、再び森へ向かった。道中、あの光る角の鹿に出会ったが、そいつは俺を見るなり一目散に逃げ出した。

「ふん、馬鹿な獣め。俺の気配に怯えて逃げたか」

傲慢な言葉が自然と口をついた。

泥の入った重いバケツを抱え、帰ろうとした矢先、再び雨が降り始めた。

「またかよ! 勘弁してくれ!」

滑る足元に毒づきながら走る。洞窟で雨宿りをしていたノヴァが、俺の服を咥えて引き止めてきた。だが、今の俺にそんな余裕はない。

「離せよ、この畜生が! 邪魔するな、俺が急いでるのがわからないのか!」

俺は荒々しくノヴァを突き飛ばした。

「後でまた遊びに来てやる。だから今は帰らせろ、クソが!」

吐き捨てて小屋へ戻った。家に着く頃には雨は上がっていたが、薪も石も濡れそぼり、どれだけ擦り合わせても火は点かない。

俺は一人で火を熾すことを諦め、再び森の洞窟へと戻った。

(*……そうだ、あいつがいる。ノヴァは俺が魔法を使うためのただの中継地点ツールだ。*)

俺はノヴァの前に薪を並べた。彼女が魔法で火を灯すのを見て、暗い感情が胸を埋め尽くす。

(*結局、こいつも魔法も、俺が利用するための道具に過ぎない。*)

「……この程度は役に立てよな。火をつける以外にも、もっと使い道があればいいんだが」

毒を吐くような独り言をこぼし、俺は洞窟の奥で背を向けた。

だが、俺の腐った思考とは裏腹に、背中に柔らかな重みを感じた。ノヴァと子供たちが、冷え切った俺の体に寄り添うように丸くなったのだ。

(*…………温かい……*)

泥にまみれ、棘だらけになっていた俺の心が、その無垢な熱に触れて、ほんの少しだけ揺らぐ。

俺は深い自己嫌悪と、それ以上の抗えない眠りに誘われ、意識を手放した。



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