## 異世界生活七日目、魔法の光と星の名の友
目が覚めた。……体が軽い。
今日でこの世界に来て一週間だ。思い返せば、最初はまともに動くことすらできなかった俺が、今はこうして自分で獲物を狩り、生き延びている。死の淵を彷徨ったこともあったが、今朝の空気はどこまでも澄んでいて、生きている実感が全身に満ちていた。
ルーティンの洗顔と水補給を済ませ、掲示板のメニューをこなす。ランニング三往復、そして腕立て、腹筋、スクワット。
修行を終えた後、俺は一度川へ向かった。一週間の汚れと汗を流すためだ。石鹸もシャンプーもないが、冷たい水に浸かるだけで随分とさっぱりする。家に戻り、昨日の残りの魚を食べてから、俺は例の「明るい森」へと向かった。
森に入ると、すぐにあの一家に出会った。
「た、たまたま通りかかっただけだからな。……よお、いい朝じゃないか」
再会を確信していたくせに、俺はまた偶然を装って騎士の礼を捧げる。子供たちが母親の毛並みから顔を出し、俺に駆け寄ってきた。
俺は道中で拾ったベリーを差し出してみた。子供たちは興味津々でそれを食べ始めたが、それを見た母親が、スッと鼻先で俺の手を押し返した。
(*……あ、悪い。子供にこれはまだ早かったか? それとも体質に合わないのか?*)
母親の深い慈愛を感じて、俺は代わりに魚を獲ってくることに決めた。
「少し待っていろ。今、最高のご馳走を持ってきてやる」
俺は例の清流へ向かった。そこには今日も、あの光る角を持つ鹿がいた。
俺は一歩前に出て、胸に手を当てる。
「また会ったな。今日もこの川を借りるぞ。……俺は狩人ではない、ただの腹を空かせた騎士だ」
鹿は静かに俺を見つめた後、悠然と森へ消えていった。許可をもらったと解釈し、俺は川に入る。今日は面白いほど魚が獲れた。二十匹近い大漁だ。
一家の元へ戻り、魚を並べる。母親は凄まじい速さでそれを平らげていった。
俺も自分の分を焼くために、火床を作る。二つの石を激しく擦り合わせた。
「おおおおおっ!」
だが、今日に限って風が強く、火種がすぐに消えてしまう。
肩で息をしながら、俺が途方に暮れていたその時だった。
母親が、スッと目を細めて火床を見つめた。
刹那、彼女の体から柔らかな光が溢れ出し――ボゥッ! と、焚き火が勢いよく燃え上がった。
「…………は?」
俺は硬直した。
(*今、こいつ……魔法を使ったのか?*)
驚きすぎて腰を抜かしそうになる俺を、彼女は相変わらず平然とした目で見ている。あの日、あの鳥のモンスターが放っていた光と同じだ。
「……ありがとう。助かったよ。俺を攻撃するつもりじゃなくて、火を助けてくれたんだな」
溢れる感謝を込めて、俺はその大きな体を抱きしめた。
この不思議で、気高く、美しい生き物にふさわしい名を贈ろうと決めた。
(*……名前、何がいいかな。白いから『シロ』? ……いや、それはあんまりにも普通すぎるだろ。こいつはもっと特別だ。*)
俺は真っ白な毛並みと、彼女が放ったあの魔法の輝きを思い浮かべる。
暗闇を照らす光。夜空に輝く一瞬の煌めき。
「決めた。今日から、お前の名は『ノヴァ』だ。この美しき白い毛並みと、星のような輝きにふさわしい名だ」
ノヴァは相変わらず無表情だったが、俺の言葉を理解したかのように、静かに喉を鳴らした。
食後、俺はノヴァの隣で横になり、空を見上げた。
一週間前、この世界に放り出された時は絶望しかなかった。でも今は、隣に温かい体温がある。
(*……悪くない。いや、最高だな。*)
俺はノヴァと子供たちの温もりに包まれながら、昼下がりの深い眠りへと落ちていった。




