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## 異世界生活六日目、森の姫君

目が覚めた。……腕がもげそうだ。

昨夜の無茶な素振りのせいで、関節がバラバラになりそうな感覚。

のろのろと起き上がり、昨日の残りの肉を胃に放り込む。

いつも通り庭を掃除して、顔を洗った。

さて、今日のメニューだが……掲示板のトレーニング内容を書き換える。

朝と夕方はランニング。昼間は探索。

それからプッシュアップ、シットアップ、スクワットを八回ずつ追加だ。とにかく腕の力をつけなきゃ話にならない。

まずはランニング三往復。走ること自体はだいぶ慣れてきた。

(*これ、もしかしてレベルアップしたんじゃね?*)

三往復完了。次は新メニューだ。

プッシュアップは腕が震えてガタガタだったが、シットアップとスクワットはなんとかこなした。

今日は右側の草原エリアを探索する。

一週間着っぱなしでベタベタの服を川で洗い、庭の枝に干した。

(*……よし、乾くまでは裸でいくか。風が気持ちいいぜ*)

上半身裸のまま、石器ナイフと剣を装備して草原へ向かう。

歩き続けると、見渡す限りの緑。

これだけ質のいい草が生えているのに、牛一頭、羊一匹いやしない。

(*……不気味なくらい静かだな。普通なら家畜がいてもおかしくないのに*)

この世界に自分一人だけが取り残されたような、奇妙な孤独感に襲われる。

しばらく進むと、光の差し込む明るい森へ入った。

まず目に入ったのは、木の根元に生えた真っ白なキノコだ。手首くらいのサイズがある。

(*……キノコか。どうせ毒なんだろ?*)

触ってみると、カサがザラザラして異常に硬い。直感で「これは食えない」と判断した。

その直後、茂みからウサギが飛び出してきた。

(*またお前か。ビビらせやがって*)

一気に脱力。ウサギはぴょんぴょんと奥へ逃げていった。

さらに奥へ進むと、一匹の生き物に出会った。猫のようなしなやかな体、大きな耳。

以前の鳥のモンスターを思い出し、恐怖がこみ上げる。騎士のような名乗りを上げる余裕なんてない。

ただ、そいつと目が合った瞬間、俺の手は無意識に動いていた。吸い寄せられるように、そっと頭を撫でる。

(*……温かいな*)

その温もりに触れた瞬間、張り詰めていた足の力がふっと抜け、その場にへたり込んでしまった。

ふと見ると、そいつの腹の下には小さな子供たちがいた。

俺は思わず、両手で顔を覆った。

(*……俺、何してんだよ*)

生き残るために、強くなるために、いつの間にか「共感」を捨てようとしていた。ただの殺戮マシンになろうとしていた自分の浅ましさに、涙が止まらなくなった。

すると、小さな子供たちが俺の膝の上に乗ってきて、小さく鳴いた。俺がそっと撫でると、今度は親猫が俺の顔を優しく舐めてくれた。

「さらば、この森に住まう姫よ。これは別れではない。いつかまた会いに来よう」

涙を拭い、俺はそう告げて立ち上がった。

さらに奥へ進むと、大きな岩があった。

腰を下ろすと、お尻にひんやりとした感覚。近くに水がある。

音を頼りに走ると、そこには美しい清流があった。

川の向こうには、真っ直ぐ伸びた光る角を持つ鹿のような生き物がいた。

(*……モンスターか?*)

慌てて木陰に隠れる。

「落ち着け、美しき生き物よ。俺は争いに来たんじゃない」

騎士を気取って小声で呟くが、手は震えている。

剣を引き抜こうとしたその金属音に驚き、鹿は森の奥へ消えていった。

「……あ、待てよ。戦うつもりじゃ……」

まあいい。今はメシだ。

剣と石器ナイフを手に川に入り、一時間以上の格闘の末、ようやく五匹の魚を仕留めた。

帰宅する頃にはもう夕方だ。

五匹の魚と、道中で拾った良さげな石。荷物が重くて死ぬかと思った。

干していた服を取り込み、火を起こす。

今夜のメシは、待ちに待った焼き魚だ。

(*……うまい!*)

味付けはない。けど、あの干し肉より何倍もマシだ。

最高の報酬に、心が満たされていく。

暗くなった空を見上げる。

今日は「姫」に会えたし、新しい川も見つけた。

明日も、こんな風に何かが進めばいい。

俺は魚の骨を焚き火に放り込み、眠りについた。


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