## 異世界生活三日目、俺はまだ生きている
目が覚めた。……痛ぇ。
とりあえず、あのデカい木まで歩く。
腕はパンパン、動かすたびに激痛。最悪だ。
朝日を眺めながら、しばらくぼーっとする。
焚き火の跡。灰の匂い。
それを見ただけで、昨日の死闘を思い出してゾッとした。
(*マジで死ぬかと思ったわ……。*)
「よっしゃ……っ!」
「今日も気合、入れていくぞおおおぉ!!」
両手を上げて叫ぶ。そうでもしないと、心がポッキリ折れそうだ。
家に戻って、昨日の残りの肉を詰め込む。カチカチ。まずい。
でも食わなきゃ動けない。
川へ行って、顔を洗って、水を汲む。
丘の上からの景色は、まあ、最高だった。
何もない田舎。空気がうまい。何度も深呼吸。
川の向こうは、見渡す限りの森。
深すぎて、何がいるのかさっぱりだ。
「……枝とか、ウサギくらいならいるだろ」
一旦水を置いて、探索に行くことに決めた。
対岸に渡る。剣を構える。
何が出てきてもおかしくない。
一回深呼吸して、中へ。
草が膝まであって、じっとりしてる。
見たことない植物ばっかり。木がデカすぎて暗い。
**音を立てないようにそろそろと進む。何が出てきてもおかしくない。**
ガサッ。
……っ!
ゆっくり振り返る。そこにいたのは……ウサギ。
(*……なんだ、ウサギか。ビビらせんな。*)
脱力。息を吐いて、剣を上げる。今日のメシだ。
が、こいつが速い。
俺の渾身の一撃を、ひらりと避けた。
……いや、俺が遅すぎるのか?
「ほう……避けるか。お前、なかなかの強者だな」
剣の重さでよろけながら、負け惜しみを言う。
何度も振り回して追いかけたけど、結局カスりもしない。
「クソッ……強すぎる……っ!」
肩で息をしながら、剣を地面に突き立てる。
もう立てない。
苦戦する騎士のポーズで、ウサギを褒めてやる。
「認めてやろう。お前は強い」
ウサギは俺を無視して、どっかへ消えた。
「おい! 騎士の賛辞を無視すんなよ! 失礼だろ!」
叫ぶけど、もう限界。その場に座り込む。
「……とりあえず、枝拾い。仕事しよ」
歩き回って、落ちてる枝を拾いまくる。
運良く結構集まった。抱えられるだけ持って、帰宅。
帰り道。
上の方から、凄まじい咆哮。
空が見えないから正体は分からない。けど、ヤバい。絶対ヤバい。
怖くなって、ダッシュで川へ。
最悪だ。川の近くでオオカミの群れと目が合った。
鋭い視線。心臓が跳ねる。
「俺は強いぞ」って顔をして、ゆっくり川へ歩く。
両手には枝。戦えるわけがない。
囲まれる前に川を突っ切り、対岸へ逃げる。
枝を捨てて、剣を構えて虚勢を張る。
……オオカミたちは、森へ帰っていった。俺の威圧にビビったのか?
「ふん……俺に挑むなら、百年早いんだよ」
強がって、ようやく一息。
丘に戻ると、もう昼だ。太陽がエグい。
枝で料理しようと思ったけど、火起こしを想像して萎えた。
石をカチカチやるのは痛いし、時間もかかる。
体はまだ痛い。無理してまたあの痛みが来るのが怖い。
(*でも、石以外に火を作る方法、ねぇんだよな……。*)
ナイフもないから、枝を削ることもできない。
結局、夕方まで待つことにした。夜まで火を持たせるために。
木陰で休憩。体力を戻す。
この世界に来てから、全部失敗。死にかけてばっかり。
一人で生きるって、こんなにキツいのか。
明日、夕方、これから……考えなきゃいけないことが多すぎる。
……泣きそう。
まだ三日。誰もいない。話す相手もいない。
友達は風と、このデカい木だけ。
惨めすぎる。
「一人になりたい」なんて思ってたけど、こういうことじゃない。
本当に、俺だけ。
目が覚めると、空はオレンジ色。
焚き火の準備だ。水を飲み、土台を作る。
腕は痛い。けど、やらなきゃ死ぬ。
自分に鞭打って、石を打ち付け続ける。
(*痛い、痛い。皮が剥ける。*)
日が沈む。火がつかない。
痛みを無視して、必死にカチカチやる。
……ついた。
慎重に、ゆっくり息を吹きかける。
少しずつ、火が育つ。
……完璧な焚き火の完成。
息を切らしながら、ぼーっとする。
毎日これか?
(*……無理ゲーじゃね?*)
食料、火、小屋。全部、解決してない。
明日何をすればいいかも分からない。
思考が真っ白。
とりあえず、家から肉とパンを出してきた。
調理、洗濯、服の直し……。
**文明ってすごかったんだな……。**
ライターが欲しい。ナイフが欲しい。
服もこれ一着。縫い方なんて知るか。
不安が止まらない。発狂しそうだ。
結局、味のない肉を詰め込んで、寝ることにした。
家の中に、掲示板。
触ってみる。……誰かが使ってた跡。
ここも、この板も。
俺の前に、誰かいたんだ。
でもヒントは何もない。あるのはボロ家だけ。
(*……やることを書こう。この板に。*)
でも、チョークがない。
外は火があるけど、中は真っ暗。ベッドすら手探り。
火がついた枝を持ってくるのは危なすぎる。
(*……寝よ。明日、頭冷やしてからだ。*)
俺は暗闇の中、体を丸めた。




