そうして俺は木へと転生した
「そういや蒼空は神様になんて言ったんだ?」
「僕は無難に「素敵な日々が続きますように」って」
「素敵な日々って具体的になんだよ?」
「大地と居ること……。なーんちゃって」
「照れるだろ。俺も蒼空と過ごす日々は素敵な日々だよ」
「……僕まで照れさせるきか?」
「あ、バレた? お返しにって思って」
「もう!!」
二人並んで笑いながら階段を下る。ブランはというと驚くことに自力で俺らの前を下ってく。理由は簡単だ。先ほどしゃれ合っていた蝶々も階段を下るように飛んでいるからだ。ブランは元気よく蝶々を追っている。
「そんな体力あるなら、いつも自力で降りれただろ」
「モチベがないんじゃないかな? ほら、登った先には景色があるけど、下った先には特にそうゆうのないし……。それか甘えたいんじゃない?」
「そうゆうもんか?」
「大地だってテストじゃないのに、わざわざ勉強しないだろ。同じようなもんだろ」
「息を吐くようにディスられた気が……」
「でも、間違ったこと言ってないでしょ」
「ごもっともです」
階段を下り終える。
背伸びしながら言う。
「来週はテスト返しかぁ~。楽しみなようなそうじゃないような……」
「どっちなんだよ?」
「真逆の気持ちが同時に湧き出てくる時ぐらいあるだろ。今はそうゆう感じってわけ」
「はいはい」
蒼空は俺に背を向けながら手を振って、横断歩道を渡る。
俺はその背中を追いかけるようにして口を開いた。
「ちょ、ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるって」
俺は蒼空の声よりも右の景色に釘付けされた。
トラックがこちらに向かってきている。
「え……」
思わず零れる声に蒼空は振り返る。
俺は石のように動けずに固まっていた。トラックはこんなにもゆっくりに見えるのに……。
しかしすぐに口元が緩んだ。
ふっ。ようやくこの時が来たか。
そう、異世界転生する時が……。
でも、なんでテストが終わった日なんだ?
点数が気になるじゃないか!!
迫ってくるトラック。遠くから聞こえる蒼空の薄い声が俺の名を呼ぶ。
どうしてだろうか。あんなに望んだことなのに、いざ前にするとこんなにも怖いものなのか……。死とは。
俺は首を強引に動かして周りを確認した。
蒼空は俺に向かって手を伸ばしている。
ブランは蝶々に夢中なおかげでトラックの射程外だ。
よかった……。
大丈夫。俺は一人で死ぬ……。
俺は最後の力を振り絞って固まっている口を動かして、笑顔で告げた。
「俺。異世界転生してくる……」
バンッ。
言葉を言い終わる前に俺の体は飛んだ。
トラックはようやく止まり運転手が出てくる。蒼空は俺の元に近づいてくる。ブランもようやくこちらに気づいたのか。ワンワン鳴きながら俺にスリスリしてくる。
俺の意識はそこで飛んだ。
そして次に目が覚めたのがこの姿だった。




