テスト二日目。今だに俺を締め付ける
「ただいま」
「おかえり」
「ねぇ聞いてよ。おにぃ~」
「どうしたん?」
おにぃは優しい声で聞き返した。俺はそれに乗っかって話し続ける。
「ブランがさ」
「うんうん」
おにぃは何度も頷いた。それが聞き流してるようにしか見えない俺は、おにぃの近くに行って言った。
「ねぇ聞いてる?」
「聞いてるよ。それでブランがどうしたんだ?」
おにぃは相変わらず優しい声で言った。
「今日は休憩せずに帰るって約束したのに。ブランのやつ居座りやがったんだよ」
「あぁ~あそこの階段は長いからな。ブランの気持ちも分かる……」
おにぃは神社を想像しながら言って、また頷いた。
「もう、おにぃは俺の味方じゃなかくてブランの味方をするん!!」
頬に空気を入れた俺におにぃは牛を落ち着かせるようにドードーと俺を落ち貸せる素振りをした。
「お兄ちゃんはみんなの味方だぞ」
頬に含んだ息を吐くようにしてから、呟くように口にした。
「話にならねぇ……」
「ひどいなぁ~」
今度はおにぃが頬を膨らませるのかと言う感じで拗ね始めた。
時計をふと見ておにぃは言った。
「ほらほらそんなことより時計を見てごらん。そろそろ学校に行かなきゃまずいんじゃない?」
「話逸らしたな」
俺は視線だけおにぃに向けた。おにぃは無罪を証明するように笑って言った。
「だってその通りだろ」
「そうだけど……」
「テスト頑張りなよ。応援してる」
「おにぃに言われんくとも頑張ってくるよ。ありがとな、いってきます」
「どういたしまして、いってらっしゃい」
そして俺は家を飛び出し学校へ向かった。
「蒼空~!! おはよ~!!」
俺は遠くに見える蒼空に手を振りながら駆け寄った、そして二人並んで学校に向かう。
「おはよう、大地。昨日は勉強教えなくてもよかったの? 電話来なかったし……」
「あぁ~それな。安心してくれおにぃが勉強教えてくれたから。決してサボってたわけじゃないぞ。勘違いするなよ」
「お兄さん……か」
「そうそう。最初は前回同様に蒼空に教えてもらおうと思ってたんだけどな。ほら、連絡してくれたし。だけど、おにぃが蒼空には蒼空のテスト勉強があるだろ。邪魔すんなって」
「別にそんなの気にしなくていいのに……」
「ん? どうした?」
「え? いやなんでもない」
「そっか。とりあえず今日もお互いにテスト頑張ろな」
「大地に負ける気はしないけど」
「勝負するとは言ってない。俺も蒼空に勝てる気しないし」
「認めるのが早いな」
蒼空が楽しそうに言ったその言葉が脳内で連呼される。
認める……認める……認める……。
「認める……」
「どうした?」
「そういや、藍瑠と萌に聞きたいことがあるんだった!!」
「え、急にどうした?」
「昨日色々あってさ。ま、そうゆう事だから。また」
「あ、大地……」
蒼空を置いて学校に向かって手を振りながら走る、俺。蒼空は手を伸ばしたが、何も掴めず腕は下りた。
俺は藍瑠と萌のいる席に向かった。
「おはよ」
「「おはよ~」」
「お前らに問おう」
「急にどうした?」
「君らに問おう」
「二人称を変えて欲しいちゃうねん」
「いいから、まず聞けよ!!」
「ヘイヘイ」
「元気がないな。まぁいい。俺は今、とある疑問に脳内が支配されている」
「で、それは?」
「それは……。なんでお前らはテストの間の時間に俺の場所に来ないんだよ!!」
「なんだ。ただのかまちょかよ」
「ちげぇし。だってだって、前まで俺が真面目キャラだから気を使って来てないと思ってたけどよ。実際はそんな風に思ってたわけじゃん。ってことはどうゆうことだ?」
「自問自答して自滅すんなって」
「大地が僕らんとこらに来ればええだろ?」
「そうそう。なんで俺らが大地んとこいかなきゃいけないんだよ」
「よく考えて見ろ。この教室の配置を……。席は出席番号。すなわち、俺は二人の中間の席にいる。それなのになぜ」
「だったらこっちからも言わせてもらうそ。なんで俺がわざわざ頭の悪い大地のとこに行くんだ? 頭の良い萌んとこに行った方が何倍も得だぞ。そして……」
「あ、これ続ける感じかな?」
萌が軽く首を傾げると藍瑠はアイコンタクトでグッとサインをした。
「そして、僕は普通にテスト勉強をしたい。すなわち僕は自分の席から動かないのだよ」
「うぅそうゆうことか……」
「理解してくれたかな?」
「大地こそ先によく考えるべきだったな」
「ほらほらそこの二人。そろそろチャイムなるぞ~。席につけ~」
「やべぇ」
「本当だ」
俺らは時計を確認してから席に直行した。俺らが席に座った頃に見計らったようにチャイムがなった。
先生は昨日同様に、今日のテストや提出物、注意事項をみなに伝えた。
そしてテストがスタートした。
空白だけは作らないように分からなくても適当に埋めた。数学なら数字を。国語ならありそうな読みを。英語は英文から必死に当てはまりそうな単語を探した。
「ふぅ~今日もなかなか頑張りましたわ、俺」
「僕が教えたおかげかな?」
今回俺はテストの間に萌の席に行った。藍瑠と二人で萌が何を覚えようとしてるのか必死に観察した。
「なにおっしゃい。萌は自分が勉強するだけで、俺らに何も教えてくれなかったじゃないか」
「この世には”見て学べ”という言葉があるやろ。そうゆうこっちゃ」
藍瑠を見つめ、可哀そうな目で言う。
「いつもこうなのか?」
「俺はもう慣れた。そして期待を捨てた……」
遠い目をして言う藍瑠に同情してするしかない俺は、藍瑠の背中を優しくさすった。そして目線を萌に戻す。
「お前!! 藍瑠の気持ち考えたことあんのか?」
「そな……。どっかのヒーローみたいに。これだと僕が悪役みたいじゃないか」
俺は萌の言葉を無視して、藍瑠に視線を戻してから、続けた。
「つらかったな……」
藍瑠は今だ背中をさする俺に目線を合わせて言った。
「大地!!」
「藍瑠!!」
そして俺らは強い抱擁を交わした。そんな中萌は冷たい目を俺らに向けた。
「僕は何を見せられているんや?」
手で目を覆い、軽くため息をついた萌は続けて言った。
「そんな言うんやったら、二人とも自分で勉強すりゃええやろ」
「それが出来ないから、萌に頼ってんだろ」
「頼りにしてるぞ」
俺らは抱擁をしたまま顔だけ萌に向けて言った。萌はため息をついてから言った。
「ぶりっ子すな」
「ぶりっ子じゃないもん」
「「ねぇ~」」
俺らは目を合わせば一緒に首を傾げた。
「少なくとも今回はそうやろ」
「萌くんが求めてるかなって」
「そうそう俺らなりの配慮ってやつ」
「そんな配慮は要らん」
「ありゃりゃ」




