お主の成長具合には驚くばかりだ
人は俺に気づくやいなや、口を開いては何も発さず閉じた。再び開けられた口元から発せられた言葉に俺は口角をあげずにはいられなかった。
「おや? もう、我のところまでたどり着いたのか。なかなかの者やの」
人は煽るようにニヤけながら言った。その者の纏う雰囲気がこの場を支配し始める。そしてそれは俺も例外ではなかった。
「……。宿敵との戦いの日。そう、それはまだ始まったばかりの戦だ……。だからこそ我は、念入りに下準備をするためにそうそうに貴様に会いに来たのじゃ」
「ほぉ〜。なかなかやるではないか。気に入ったぞ!! では、我も参ろうぞ」
「敵に情けをかけるとは……。我は仲間と共に行く。貴様がついて来たいと言うのであれば勝手についてくるんだな」
「……。それは少々無粋なんじゃないか? もう少し考えたまえ。その仲間とやらがスパイかも知れぬぞ。そう、ここは一つ。我の手を借りるべきではないか?」
「てめぇの方がスパイの可能性があるだろ……」
「?」
「……まぁ一理あるな。お主と一緒に参ろうぞ!!」
見合って見合ってお互い不敵な笑みを浮かべた。熱い握手をかわそうとする時……。
ブランが俺らの間に入ってきた。
「わんわん」
「もう、ブラン。今、良い所なんだから」
「ってことは……」
「今回、良い感じだったぞ」
ぐっとポーズをして言った。
「おぉ~!!」
喜びが隠せないのかブランを思いっきり撫でていた。
「だって今回、おにぃは何も言わずとも乗ってくれたしな。だ・け・ど。原文だけじゃ変になってるから。なんで、急に敵が味方に手を差し伸べるんだよ。何が仲間がスパイの可能性があるから敵の我と参ろうぞなんか言うんだよ。そっちの方がスパイの可能性が高いだろ!! 」
「うぅ……。なにも反論できない……。でも、今回ばかりはしょうがないだろ」
「言い訳聞こうじゃないか」
「俺は大地の力になりたいんだから!!」
「まぁ、おふざけのまま会話を続けてくれたし、おにぃにしては上出来だな」
「じゃあ、そんな上出来なお兄ちゃんが勉強教えてやるから。準備してきな」
「は~い」
こちらは俺の兄。木村陸だ。よくこうゆうおふざけに付き合ってくれる優しい兄だ。最初はうまく出来ていなかった。
俺がさっきみたいにふざけても「どうしたんだ?」と言うだけだった。だが、ここ最近は、俺が”やって”と言わなくても出来るぐらいまで成長した。
やっぱ俺の兄は頭がいい。そんな俺の兄。木村陸は、ブランに魂と名付けようとした張本人だ。そう、俺の兄は頭がいい。だけど、少々ズレているところがあるのだ。




