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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
エピローグ

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438/440

409-ただいま、地球


ガタンゴトン…

ガタンゴトン…


 夢奏列車での帰り道。行きも帰りも列車移動で、景色の変化はあんまりないけど。安全運転の速度だけど……道は開けてるからね。三時間ぐらいかな。

 和気藹々と談笑しつつ、地球への到着を待つ。

 帰り道の方が人が多いけど……大した荷重じゃないし。約三体邪魔だけど。


「ゲコッ」

「チュー」

「グギョ」

「喚くなゾンビ共。いいか、僕の許可なく人型を取ったらぶち殺すからな。具体的に言うと、ノワの穴という穴に頭からぶち込むからな」

「ちょ!?なんでワタシ!?」

「……?え、制裁」

「終わってないの!?ちょっ!ごめんってぇ!もう許してラピピ〜!」


 手のひらサイズまで小さくさせた旧三銃士。窮屈そうな雰囲気出してるけど、これ、決定事項だからね。オマエら人死いっぱい出してるヤツら、野放しにもできないし。

 メアリーでさえ反感すごいんだからさ。当然だけども。

 オマエら、国単位で滅ぼしたりしてるんだから。正体を隠す為にもそのままだ。いいじゃん、トランプ兵に変わる新たなマスコットやってれば。

 好事家に売るのも可。


 縋り付くノワを足蹴に、座席に深く座る。クッションがいい仕事してるよ。


 ……ここ一週間、本当に大変だった。帰ったらまだまだやることがあるから、全然安心できないけど……メアリーからの報告を信じるなら、あれだもんね。

 いや、道中逢えるか。

 取り敢えずハサミで斬られる用意はしといて……あっ、弟子作った詰問もしなきゃ。

 やることが、やることが多い……!

 異星人との交流場所とか、国の許可もぎ取ってやる必要出てきちゃったし。クソ、押し付けらんねぇ。宇宙関連はアメリカにぶつけようにも、確認した段階じゃ多分無理。あっさり拠点化される未来が見える……主にタレスの技術パワーで。乗っ取られそう。味方なのに。できそうだからやりましたとか普通に言いそう。

 で、なんか未来都市できてそう。

 ……それはそれでアリ、か?アメリカの文化は宇宙色に塗り変わるけど。


「うーちゃん」

「なぁに、ほーちゃん」

「これで平和だね」

「……まだ、やることいっぱいだけど。一応、平和?にはなったんじゃないかな」

「頑張ったね」

「そう、だね」


 肩に寄りかかるほーちゃんをどけずに、受け入れたまま会話を合わせる。一応、これで面倒事の大半は吹き飛んだわけだ。宇宙問題も、もう殆ど気にしなくていい。

 なにかあっても、暗黒銀河が地球の防波堤になる。

 ……その為にも、地球に不可視の結界でも張っとくか。地球産の宇宙船とかだけ認識できるような、高度なヤツを作ろう。


「ぐぅ!」

「こら、逃げるな。オマエは今から英才教育を受け、私に都合のいい悪夢の運び役に……あっ、違うんだうるるー。聞かなかったことにしてくれ」

「真・月魄魔法×2222222」

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」

「そんなに打てないでしょ。てか、なに企んでんだか……ほら、おいでー」

「!」


 通路を走るグゥはほーちゃんの腕の中に、何か企んでたリデルは腰枕にした。拘束もできて、隙間も埋められて、一石二鳥ってね。

 暴れんな。おい待て誰が重いって?

 あとアリエスは僻むな。オマエは抱き枕であってだな。対抗心燃やすな。


「賑やかでござるなぁ〜」

「何処もこんなもんだろ」

「いやぁ〜、一件落着でよかったッス。危ういって場面がいっぱいでしたけど」

「ん、万事解決……あっ、課題やってない…」

「えっ、出てるの!?」

「ねこちゃ!?あたしそれ知らない!待って!?ねぇお口チャックしないで!?」


 呑気に湯呑みでお茶を嗜んでるヴォービスさ、新参者でありながら、既に場の空気に馴染んでいる。一緒に茶菓子食べてるビルとペローも、手馴れた様子。

 ちなみに、二人の異形態は既に解除済みだ。

 僕の承認が無ければとはいえ、よくなったもんだ。覚悟すごいよねぇ。二度と使わないで欲しいけど。最悪、元に戻れないんだし。

 怖いじゃん。


 昔の三銃士は兎も角、今の、僕が選んだ三銃士は愛着があるからね。大事にするよ。寝子が言う課題云々は、学校側への言い訳として、期間不明の留学設定で星を飛び出しているからだね。

 感想文書けってさ。あのゆるふわ担任、若干気付いてるかもなぁ。


 で、そんなこんなで列車は進み───地球に近付いた、その瞬間。


「うわ、ホントにいた…」


 列車内だというのに。

 僕の喉を狙って、よく研ぎ澄まされた氷を纏うハサミが突き付けられた。下手人が誰かなのかは、言うまでもないだろう。いや本当、どういうわけなんだか。

 僕でも知覚できない気配消しで列車内に潜って、殺意を差し向ける女。


「ヤッホー、センパイ」

「……久しぶりですね、後輩」

「わー!キル先輩!本物だ!!」

「元気でよろしい……おかえりなさい。代わりと言ってはなんですが、守っておきましたよ」

「ありがと!」


 “正義”のキルシュナイダー……僕が悪夢に与したことにブチ切れている正義厨である。

 ごめんって。てか、首パキパキ凍り始めてるんだけど。

 当然、先輩以外の……僕たちの代わりに、夢の世界側で地球を守っていた魔法少女たちが、続々と現れる。車窓を乗り越えて、こんにちはと。

 モロハ先輩に、オルドドンナ、マペットプリマーレと、イリスミリエ。懐かしい顔ぶれが、五人も。

 ……遅いよ。


「あーねき〜!」

「は、ライ!?テメ、なん……ッ、ハハッ、重ぇ!死んで肥えたか!?」

「んなわけあるかよ!」

「師匠!?」

「うむ、うむ。よく頑張ったな、弟子よ。ただ、ラピスに負けたのはいただけんなぁ〜」

「うぐっ、しょ、精進します…」

「みんなー!」

「……!」


 姉妹の再会、師弟の叱責。そして、後輩二人が仲間との再会を喜ぶ。なんというか……見たかった光景が、そこにある感じ。穂花ちゃんたちも、六花の面々も、魂の状態でここにいる魔法少女とのふれあいに、少し涙ぐんでいる。

 殺意が削がれたのか、キルシュ先輩は刃を下ろす。

 溜め息を吐いて、仕方がないなと呆れ顔。ごめんって。でも、本気の殺意じゃないだけ、受け入れてはもらえてるってことかな。


「反省してます?」

「不可抗力だって……」


 本気だったら……今頃、全身氷漬けでバラバラにされて列車の外だろうし。

 怖いね。


───その後も、まぁ。幽霊状態のフルーフ先輩とは全然違う質感の亡霊たちとの交流を挟んで。彼女たちが、この領域から外には出れない……ユメの世界でしかいられないことを知ったが、それはそれ、これはこれ。

 閻魔大王とやらを脅して、輪廻転生しないのを条件に、この夢を守り続けるとかなんとか。

 うん、覚悟極まってんな?

 これだから魔法少女は……自己犠牲ばっか。あと、一度決めたらテコでも動かない。


 結局、たまーに会いに行ったり、配信魔法で繋がるのを約束したりして。


「そんじゃ」

「やると決めたのなら、貫くことです……応援してます。精々頑張りなさい」

「上から目線〜。はいはい、わかったよ……次こそ、目ぇ逸らさないでね」

「えぇ」


 お別れの言葉はなく、礼を告げて───現実へ。地球へ帰還する。








꧁:✦✧✦:꧂








 久しぶりの地球。

 懐かしさまで感じる土の踏み心地に、なんともいえない気持ちを抱く。いやぁ、なんだろ。宇宙の土とはちょっと違うんだよ。なにが違うのかは、僕もわかんないけど。

 夢奏列車が、役目を終えて光の粒子となっていく。

 そして、降り立った先───星見公園の大きな丘の上。人払いを済ませたその地にて。


 先んじて、迎えに来ていた留守番組の……オリヴァーがうるさく泣く。


「ブルームーン!サンシャイン〜!よかった!無事だな?ヨシ、この勝負、我らの勝ちだ!ヴェ〜ハッハッハッ!!おかえり!!」

「ただいま!うるせぇ!」

「泣くな喚くなみっともない……ただいま。そっちも色々あったみたいだね」

「そうなのだよ!聞くかね!?私たちの武勇伝!!」

「もう聞いたよ。なに、酔っ払っ……てはいないのか。素なんだそれ」


 陣頭指揮を取っていたオリヴァー。彼にも、ちゃーんと感謝は告げるべきなのだろう。それはそれ、これはこれで辛辣に当たっちゃうけど……こればっかりは仕方がない。

 文句があるとすれば、このうるささだけだし。

 感極まって抱き着こうとするのを阻止して、後ろにいた女二人に声をかける。


 包帯塗れのルイユと、目の焦点が合ってるメアリーだ。


「おかえり」

「ただいま」

「……無事で何よりです。こちらとしても、命を尽くした甲斐があります」

「ありがとね、本当」


 異星人の投下作戦に、絵の具の怪物……単騎で半分以上狩り尽くしたのがメアリーだ。本当に頭が上がらない……理性があるだけで、ここまで頼り甲斐があるとは。

 不死の絵の具共も、処刑で一撃死させてたらしいし。

 後で労いも必要だろう。ルイユにもマッサージとかでもしてやるか。


 そう彼女たちに礼を告げていると、メアリーが僕の背後へと視線を向けた。


「……その者たちは…」


 そこには、彼女なら見覚えのある……妖精体と酷似した形状になった、三銃士の面々が。女王様……と小さく呟くカエルとネズミに、初代様は目を見開く。

 瞬間、メアリーの姿が掻き消え……

 気付けば、僕の背後に。元妖精の国民たち、宇宙からの移民も関係なく抱き締めて、なんと、蹲ってしまった。

 ……啜り泣きは、聞かなかったことにしよう。

 この人だって、悪夢に抗った英雄なんだ。少しぐらい、救いがあってもね。


「なにがあったんや…」

「ゴナー・アクゥームの調整をミスった。魂が降りてくるなんて、想定外にも程がある……流石に世間様にはお見せできないからね。暫くはあのまんまかな」

「そうかい。取り敢えず、早く帰ろう。あんまり長居は、できないからね」


 茶々を入れるリデルと、それに倣おうとするグゥを一旦食い止めつつ、ルイユの言葉に頷き。騒ぎ立てるみんなに声をかけて、庭園に戻る。

 その、直前に。

 微風が吹き、風に煽られる。頭の上のハットが、小さく悶える。


【ハッツ…】

「ん…」


 不意に、空を見上げて。

 雲一つない快晴、青空を目に映す。いつ見ても、綺麗で代わり映えのない景色、だというのに。今日ばっかりは、何処か感慨深いモノがある。

 ……ずっと、星空ばっか見てたからかな。

 いくら綺麗だからって、ずっと見ているのも、なんだか味気なかったし。


 帰ってきた、って実感が湧いてきた。うん。やっぱり、青空が好きだわ。


「うーちゃん」

「うるあ!」

「お姉さん!」

「ん、うーねぇ」

「うるるー」

「蒼月様」

「……ハイハイ、遅れたからって呼ばんでいいよ。すぐ、行くから」


 待っているのは、いつもと変わらない……ちょっとだけ平和になった、日常。

 昔から追い求めていた、未来。

 悪夢という脅威は、手のひらの上に。星喰いという宙の脅威は、退けた。きっと、他にも問題はゴロゴロしてるんだろうけど。


 多分、もう大丈夫───だってもう、僕は独りじゃないんだから。


 空間の裂け目が開いた先に、続々と消えていくみんなを追いかけて。最後まで待っていた、幼馴染と共犯者に手を掴まれる。

 その手を、しっかり握り返す。

 今日はまだまだ忙しい。改めて、戦争終結のお祝いと、新メンバー加入のお祝いを兼ねたお茶会をするんだから。協力してくれた大人たちも、呼べば来るかな。

 来させようか。


「いえーい!」

「ふぅー!」

「これなんの時間〜!?」

「わっかんない!だってあたしたちは、いつも!雰囲気で生きてるからっ!!」

「デデドン!」

「キャッキャッ」

「〜♪」


 ……楽しそうでなによりだよ。


 みんなの背中と、笑顔を見て。少しだけ、僕もくすりと笑みを零して。

 笑顔の輪に混ざるように。

 ほーちゃんに引っ張られながら、飛び込んで……意味もなく笑い合う。そんなありふれた日常が、いつの間にか、自分から無くなっていたんだから。本当に、たまったもんじゃない。

 でも。


「ただいま、地球!」


 これからは───いや、これからも。きっと、楽しいで満ちてる筈だから。


 僕は、そう信じている。



















꧁:✦✧✦:꧂








───そして、一年後。


 平和になった世界で───運命の歯車が、また。少し、軋む音がした。


次回、最終回

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― 新着の感想 ―
あと一話で終わりです。時間が本当に早く過ぎますね。 そして、日常的に迫害される「鏡」と威厳を失った「閻王」 ちなみに、この時の「死告とメード」は列車内で何をしているのですか?
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