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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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357-決着のライダーキック


 空間が焼き裂ける。

 煌々と輝く真紅の闘気。凄まじい圧が空間に伸し掛り、荒々しい斬撃へと形成されて魔法少女に放たれる。

 将星エルナトの圧倒的暴力。闘神の暴威。

 彼女自身の魔力に加え、ヴォルカモンスターの灯火をも取り込んだ武力は、魔力消費による威力低下を狙うなんて生半可な思考すら思い浮かばないぐらい、肌身に力の圧を感じさせる。


 弱音を吐けば、即座に呑み込まれる───純然たるその事実を飲み込みながら、エーテ、コメット、デイズは紅き暴力に食らいつく。

 先の大敗の払拭を拭う、空中機動のリベンジ戦。

 大先輩の調整を含めたお膳立てから、遂にこの展開まで辿り着いた。


 魔力ブースト、想いの力、魔法の覚醒による心の高揚。それらのピースが一つに合わさって、対等とは行かずとも闘神に食らいつけるまで至った。

 夢杖が、星槍が、花斧が。魔戦斧を受け止め、なんとか跳ね除ける。


「オラオラオラァ!さっきまでの気概はどうしたァ?もう降参かよ、魔法少女ォ!!」

「ッ、まだまだぁ!!」

「見切んのが早いんのよ、バカッ!デイズ、何悩んでんの頭下げなさいッ!攻撃来てるわよッ」

「そ、そー……早計ってヤツ!」

「「おバカ!!」」


 勝つ気満々。猛攻を退けながら三人は思考を巡らせる。この濃厚な殺意をへし折って、肌を焼くウザったい闘気をぶち抜いて、硬い表皮に技を通して、勝つ方法を。

 必要な手札は揃っている。

 夢想魔法の浄化消滅、星霊魔法の透過貫通、花天魔法の包み込む光。そこに、他人頼りではあるが、配信魔法から随時送られる応援の力を還元していく。

 魔力ブースト一つでは足りない。身体強化を重ねがけ、突撃していく。


「乾坤一擲ッ!!」


 コメットの刺突がエルナトの頬を掠める。狙いが外れた星の刺突は、僅かに頬を削ぐだけに収まったが……魔法の余波が、余剰分の魔力が血を噴き出させる。

 それでも軽傷。即座に星のエネルギーで傷口を再生。

 差し出された星槍をエルナトは掴んで、力任せに手元に引き寄せる。


「ッ!」

「こんなもんか?」

「んなわけ、ないでしょうッ!!」

「おっ!」


 額と額が付き合わさって、挑発されたコメットは星槍を起点に魔力を爆発させる。至近距離からの爆撃は有効打にするには弱いが、衝撃はしっかり肉体に浸透する。

 そんな自爆に等しい攻撃を受けても尚、エルナトの手はコメットの星槍を離さない。

 ニヤリと笑って、握り締める。


「そうカッカすんなよ───もっと笑ってこうぜ?これがテメェらの、最後なんだから、よッ!」

「ぐぅっ!?」


 煮え滾る魔力を武器に、自分自身を焼きながら力任せにコメットを投げる。魔力に焼かれたコメットは、あまりの激痛に悲鳴を上げながら吹き飛ぶ。

 痛みに耐えながらも、コメットは力強く敵を睨み。

 慌てたデイズが花で受け止め、鎮火させて火傷を癒し、回復させた。


「いったいわねぇ……くっ、本当嫌になる…」

「ダメだよコメちゃん!突っ走っても勝てないよ!もっと頭使わなきゃ、おバカなままだよ!……って、すごい前にエーテちゃんが言ってた!!」

「エーテッッ」

「濡れ衣!?」


 一瞬弱気になったコメットを、デイズはノワール直伝の煽り口調で威勢を保たせた。悪い先輩の影響を過分に受けているようだ。

 尚、矛先を向けられたエーテもブチ切れの模様。

 よくないやり方で仲間の士気を保ってみせたデイズは、あたしよくやったとフンッとガッツポーズ。背後で怒気を震わせる般若には気付かない。

 そんな愉快な一団をエルナトは笑いながら、手についた炎を吐息で鎮火する。


「なんだ、おしゃべりの方が大好きか?」

「そりゃあね!」

「ごめんなさいね、バトルジャンキーが相手じゃなくて!我慢しなさいッ!」

「なんならこのままお喋りしてる!?」

「するわけねェだろつまらねェ!力ァ蓄えて、技磨いて、死ぬ気でタマァ取り合うのが楽しいんだろうが!いつかはテメェらも、わかると思うぜ!───“いつか”があれば、だけどなァ!!」

「くぅっ!」


 本気の暴行。

 大きく殺意を込めた連撃が、速度を上げて3人の身体に叩き付けられる。回避は間に合わず、魔戦斧ではなく拳で直接殴り付けられた魔法少女は、大きく吹き飛んだ。

 空中で錐揉み回転。気絶必須の攻撃。

 なんとか意識を保った少女たちは、体勢を変えて即座に食らいつく。


「負けて、たまるかぁ!!」


 根性で立ち上がり、心を震わし、努力で掴んだ、奇跡で立ち向かう。勝ちたいという想いを、決して離さぬように抱き留めて戦う。

 不屈の闘志を見せつけて、エルナトにわからせる。

 攻撃する手は緩めない。魔法を放ち、拳をぶつけ、杖を振るい続ける。攻撃を重ねていく。頭を、胸を、手を、足をと、重点的に狙って。

 重ねる度に、魔力が浸透する。

 三人の魔力は親和性がいい。夢想と星霊、花天の魔力が攻撃を重ねる度に、エルナトの闘気を超えて、その剛皮に染み渡る。


「あん?チッ、燃やせのねェか」


 攻撃によるダメージはそれなりにあるが……それ以上に肉体に染み渡る魔力の不可思議さに、エルナトは首を傾げつつ体内を侵す魔力を焼き尽くす……が、効果はなく。

 痛くはない。辛くなければ、苦しくもない。

 害はないと判断を下しながら、何を企んでいると微かに期待しながら、攻撃を続行。

 攻防は二転三転、入れ替わり続ける。

 魔法少女の奮闘は、実を結ぶ。あのあまりにも硬かったエルナト自慢の肉体に、次々と創傷が刻まれていく。若干程度の切り傷から、打撃による内出血。骨を折る、まではいかないものの……着実に、ダメージを与えられるようになっていっている。


「チィ!」

「ッ、効いてる!?」

「よく、わかんないけど!このまま畳み掛けるわよ!!」

「うんっ!!」

「んな掠り傷で、隙だと思うんじゃ、ッ!?やろ、テメェそこは無しだろッッ」

「わざとじゃないから!?」

「知ったことッ!!」

「ぐっ!?」


 それらは全て、皮膚に染み込んだエーテたちの魔力が、相互作用を引き起こしたからに他ならない。

 外と内の魔力が火花を散らし、魔牛を攻撃する。

 必殺に繋げる役割を持たせた魔力浸透が、妙手となって背中を押す。


「ハァァァァァ───ッ!!」

「オォォォォォ───ッ!!」


 打撃が通る。魔法が通る。斬撃が通る。

 そして、最もエルナトにダメージを与えるのが……硬い皮膚と筋肉の下にある、体内に伝わる衝撃や攻撃の数々。一つ一つは無視しても問題ないが、時間をかけて蓄積し、エルナトでも看過できない負荷をかける。

 だが、それでも。

 先程取り込んだ星のエネルギーによって、即座に治療。ダメージをものともしない強靭な肉体と精神力には、最早辟易するしかないが……

 準備は整った。


「二人とも!」

「えぇ、今ね!!」

「うん!」


 宣言通り───二つ目の勝ち星を勝ち取りに、新世代は飛び立つ。


「! おいおい、どこ行くんだよ!」

「ちょっとそこまで!」

「だいじょーぶ!すぐに戻ってくるから───そこでっ!待ってて欲しいなっ!!」

「ッ!」


───花天魔法<ハイピュアリー・メガフラワー>


 示し合わせて飛翔するのを追いかけようとするが、少し遅れて飛んでいたデイズが、エルナトを足止めする為に、大きな大きな、牡丹を彷彿とさせる花弁を持つ魔法の花を咲かせて邪魔をする。

 彼女の背後に咲いた牡丹は、獲物を包み込まんと花弁を震わせる、が。

 それよりも早く、エルナトの熱線が魔花を焼殺。

 あっさりと燃えカスになった花に見向きもせず、追撃を放たんと斧を構えて……


「ガハッ…!?」


 ───吐血。


 花弁に紛れた魔力粒子。花粉にも見えるそれは、彼女の身体表面、細胞の一つ一つにまで染み込んだデイズの魔力と呼応して、再生させたばかりの傷口を、開いた。

 エルナトにとっては、軽めの嘔吐剤を飲まされた程度の痛みだが……


 第二段階。大技の完成に繋げる為に、コメットが勝気に笑って、星杖を掲げる。

 唸る魔力に、身を任せて。


「できることは全部やる!それが、私たちよ───さぁ!目に焼き付けなさい!!」

「星よ、落ちろ!!」


───星霊魔法<シャイニーブルー・メテオ>


 途端に青色の輝きが宙を満たして、その更に上空から、魔法で生み出された隕石が落ちてくる。青光が包んだ天の裁き。人生初の大魔法に、コメットは高揚しながら操作。

 青色に輝く隕石を、エルナトの真上へ。

 口から垂れた血を拭ったエルナトは、轟音を立てる星を見上げて、笑う。


「ククッ……いいぜ、受け止めてやんよ」


 エルナトは、彼女たちの思惑に乗ってやることにした。ここまで期待以上を魅せてくれたから。今度は何があるのかと期待して、降り注ぐ隕石を両手で受け止める。

 わざと時間をかけ、拮抗を演じてやって。

 さぁ、どうする?と、光の隙間から宙を見上げて───歓喜に目を見開く。


 視線の先───杖を重ねた魔法少女たちが、己の全力を注いで、魔法陣を完成させる。

 ゴウンゴウンと、重い音が宙に鳴り響く。

 ゆっくりと回転を始めた魔法陣から、三色の光が次々と迸る。溢れ出んばかりの魔力は、全てが余剰分……本来は必要のない量を、エーテたちは魔法陣に注いでいく。

 そうしなければ、エルナトには勝てないから。

 外に逃げようとする魔力を、上手く掴み取って魔法陣に引き戻し、循環させて、出力を上げ。

 魔法陣に、足を乗せる。


「ただの魔法じゃ負ける」

「ただの物理じゃ勝ち越せない」

「それなら───」

「「「どっちも組み合わせて、ぶっぱなしちゃえば、最強なんだから!!」」」

「脳筋ぽふ〜!?」


 結論に否を唱える声を、彼女たちは許さない。

 実際に戦って、そうした方がまだマシだと結論付けて、これしかないと選んだのだから。縮こまったぽふるんを、危ないからとエーテは抱き寄せて。

 お互いに笑みを向けあって、いっせーのと声を揃えて、魔法陣を発動する。


「“夢に花咲く、真心の花”!」

「“星霊よ、想いを束ねて、光り輝け”ッ!」

「“どこまでも、どこまでも───私たちの夢が、奇跡の明日を連れてくる”!!」


「「「新・夢幻三重奏!!

───<ニュースター・マギアトリコロール・ドリーミーカノン>ッ!!」」」


 魔法陣から、いつもの数十倍の魔力が込められたユメの極光が砲撃され───…

 その魔法陣を、蹴りを入れるポーズで突き破って。

 三人の魔法少女が、ユメ色の極光と共に、エルナトへと進撃する。


 浄化の光ごと突っ込むという、前代未聞の必殺技だ。


「おいおい、オレの知ってるのと違ェじゃねェか!クッソ面白いなテメェら!!んなら、お望み通り正面から……、ッ、なんだ?身体が……」

「引き寄せられる!?」


 あまりのワクワクに隕石を殴り割ったエルナトは、己の異変にすぐに気付いた。自分から迎撃に出向こうとした、それよりと早く。

 身体が勝手に、降り注ぐ極光の方へと浮上した。

 まるで、磁極が引かれ合うかのように───エルナトに浸透したエーテたちの魔力が、三人の必殺技に呼応して、構えを取る猶予も与えずに引き寄せる。

 絶対に攻撃を当てるにはどうするべきか。

 意表を突いて、少しでも余裕を削ぐにはどうすべきか。その答えが、目の前に。


「ライダーキック!!」

「何度でも言うわ───ぶち抜いてあげる!!」

「うおおおおおおおッ!!」

「んなことやんなくたって、逃げやしねェよ───オラ、受け止めてやんよ!!来いッ!!」

「お望み通り!!」


 着弾までコンマ数秒。加速する魔法少女とユメの光に、エルナトは両手を広げて構える。身体が引っ張られていく感覚には未だ慣れないが、そこは筋肉で対応。

 魔力を漲らせ、全身を更に紅く輝かせて……

 魔法少女と、将星は、衝突───少女たちの蹴りと光が魔牛を穿つ。


「ハァッ───!」

「お゛!?ぐっ、ぐおっ───ハハッ!こいつはヤベェ、想像以上だ!!」


 加速が乗った蹴撃の三重奏と、絶対に勝つという想いが形になったユメ色の極光。物理と魔法が重なった必殺に、さしものエルナトも顔を歪めて呻き声を上げる。

 それでも後退せず、受け止め続けられているのは流石と言ったところか。

 エーテたちの蹴りが減退するか、魔法が消えるか。

 なんて勝ち方も、エルナトにはあるが───万が一でもそれが成功するとは思えず。彼女もまた、己が自慢の魔法でもって相対する。


 闘神魔法、出力最大───真っ向勝負で、か弱い戦士を捩じ伏せてみせる。


「闘・神・魔・法───<ウォーゴッドアーツ・ブート・アルクトゥールス>ッ!!」

「ッ!!」


 肉体が発火する。

 轟々と猛ける劫火が、エルナトを包み込む。己の存在を魔法に焚べて、炎の化身となる技。溶岩よりも遥かに熱く猛々しい劫火の中で、エルナトは燃えながら笑う。

 至近距離で、今まで以上の熱を浴びる三人。一瞬にして笑みは苦悶に変わるが……浄化の光に守られている故に、引火することはなく。熱を感じながらも、負けじと吼えて力を込める。


「負ける、かァッ───!!」


 光と炎の押し合い合戦。一歩も譲らぬ拮抗は、徐々に、エルナトが魔法少女を押していく。

 若くして強者である彼女は、並の魔法少女よりも強い。

 その純然たる事実を力強く突き付けて。威勢のいい魔法少女を、絶望させ、敗北させるべく。更に更にと、火力を上げていこうと……

 意気揚々と力を込めた、その時。

 エルナトは、僅かに───自分が押されつつあることに気付く。


「…あ?」

「いっ、たでしょ!」

「私たち、想いの力じゃ、負けなしのよッ!」

「生憎っ!私たちは、個人の力じゃない!みんなで戦う、そういう魔法少女だからッ!」

「ッ!」


:協力万歳!

:そーだそーだ!

:がんばれー!

:うちの信頼できる最高戦力ナメんなよ!!

:そんな信頼できない方がいるみたいな…

:お口チャック

:がんばれ!


 三人で一人前。一匹混ざれば向かうところに敵はなし。そこに、配信魔法を通して彼女たちの勝利を信じてくれる人々の声援が合わされば……

 まさに、百人力。


 個人で完成しているエルナトよりも、遥かに未熟な弱い生き物。その自覚は、ちゃんとある上で……自分たちは、ひとりじゃないと豪語する。

 ひとりでは勝てない。でも、三人なら。仲間となら。

 勝利を信じてくれる人がいるなら……悪夢に打ち勝った彼女たちは、絶対に負けない。

 だからこその、有言実行。

 声を張り上げ想いを上乗せし、自分たちならできると、自信を持って。


「「「ハァァァァァァァァァァァァァ───ッ!!」」」


 声を荒らげ、エルナトの胸元に叩き込んだ足に、残りの魔力をたっくさん注いで。

 足が燃えても、痛くなっても、耐えて、耐えて。

 諦めを知らない魔法少女の底力は、徐々にであっても、時間をかけてでもエルナトの身体を押していく。凄まじい負荷が全身にかかるが、お構い無し。

 そして、自分が押されつつある事実に、エルナトは一瞬瞠目してしまう。予想外の展開に思わず動揺して、そんなバカなと否定したくなった彼女だが……

 すぐに、目をカッと見開き。


「ナッッメん、なァァ───ッ!!」


 苛立ちと、興奮と、屈辱と、楽しさと。一瞬にして胸に飛来した様々な感情を綯い交ぜにして、咆哮を轟かせて。空間が、熱で歪む程の勢いで反撃に出る。

 どちらも引かず、どちらも諦めず、押し合って。


 魔力が火花を散らし、暴れ狂って。


 数秒か、はたまた数分か───当人たちすらわからない刹那の時間。長いとも、短いとも取れる拮抗に、遂に決着がつく。


「がッ───ッ!?」


 炎を突き破り。

 闘気を蹴破り。

 鋼の肉体に、想いの力を、蹴りと共にぶち込んで───遂には、ユメ色の極光が過ぎ去り。


 魔法少女の力は、確かに、将星に届き……


 加速が止まる、その時まで。胸を穿たれたまま、怪物は小惑星帯に突っ込んだ。


もちっと続くんじゃ

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― 新着の感想 ―
この技は「仮面ライダーシリーズ」なのでしょうか?! 現状を見る限り、今後の戦争は今回の戦争を超えることはないでしょう。「王域」にとっては、負ければ全て滅び、勝てば「悪夢」を完全に解決できる機関と「皇…
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