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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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354-星は輝き、花は咲く


 “彗星”の魔法少女は考える。

 “花園”の魔法少女は考える。


 ずっと悩んでいた。自分たちの魔法の拡張性。何処まで発展性を持たせられるのか、どうすれば勝ち筋となる力を習得できるのか。

 同期が先んじて覚醒した時は、同じ手段で魔法の獲得ができると思っていた。

 だが、今の今まで辿り着けてはいなかった。

 天賦の才であると納得した。魔法少女の姉を持つ彼女に僻みや妬みがなかったわけではない。だが、それ以上に。自分たちも何時しか、あんな魔法を手に入れるんだと鼓舞する理由になった。


 光の魔法少女は火力を求めた。


 闇の魔法少女は殺意を求めた。


 夢の魔法少女は希望を求めた。


 ならば、自分たちは───何を望む。何を願う。何を、形にする?


「んまぁ〜、難しいことはよくわかんないからさ!結局は自分たちらしくやろ!ってなったんだよね!」

「思うがままに、望むがままに。ってヤツよ!」


 炉心である心臓を意識する。

 飛翔に魔力を割きながら、高まる魔力を全身に巡らせ、活性化させていく。外気温とは異なる、激しい脈動による発熱で身体が熱を帯びるが、気にも留めない。

 この熱は冷ますモノではない。

 朦朧としないギリギリを攻めて、この熱を保持したまま戦場に変革を齎す。


「夢想魔法───ッ!」


 闘志を糧に。

 想いを力に。

 理想を形に。

 魔力というユメの恵みを原動力に、リリーエーテという見本を指標にして。


「ククッ、何企んでやがんだ?」

「えーっと!勝ち筋ってやつ!!」

「覚醒とか、進化ってヤツよ───あなたはそういうの、お嫌い!?」


 己を鼓舞する。勝つ為に、生きる為に。


 大先輩と仰ぐ、魔法少女たちの後継。その異名に恥じぬ戦士になる為に……

 声を張り上げ、夢に挑む。


「いいや?オレが楽しくなれんなら、大歓迎だ!!」


 準備は整った。下地は完成している。そこに至るまでの努力の積み重ねが、今、実を結ぶ。

 邪魔するモノはいない。

 全てが好状態、好環境。

 風は吹いている。頑張る魔法少女の背中を押すように、導くように。


「行くわよッ!」

「うん!行こうっ!」

「見てなさい、エルナト!それと、エーテも!私たちの、新しい力!!」

「見てるよ!!」

「ククッ…」


 星が輝く。


 花が咲く。


 夢を追従して、その名を世界に刻まんと、2人は揃って魔法を唱える。


「───星霊(せいれい)魔法ッ!」


「───花天(かてん)魔法っ!」


 望むは突破力。


 望むは包容力。


 ブルーコメットとハニーデイズの新境地。青色と黄色、二人の象徴である魔法の色が、魔力汚染の溶岩に覆われたヴォルカモンスターに眩い光を放つ。

 マジカルステッキに、綺羅星と大輪の花が咲く。


───星霊魔法<ブルー・スピリットスター>


 彗星の如く飛来する青い星の輝きが、エルナトの眼前に突きつけられる。いつものように魔戦斧を当てて、破壊を試みるエルナトだったが……その表情は、すぐに見開いた笑みに変わる。

 魔戦斧と彗星が衝突すると、なんと、エルナトが大きく仰け反った。

 力押しでは、彼女が勝っていたというのに。

 魔戦斧を押し退けた彗星は、逸れることも曲がることもなく直進。驚愕と喜悦、両方の色が混ざった笑みを見せるエルナトの胸部に、勢いよく貫通。

 星の輝きが暴牛を貫く。


「ッ!?こいつは…」


 しかし、エルナトの身体に穴は空いていない。胸を貫く青色の光は、胸に刺さったまま。すり抜けるように胸部を射止めた星の輝きは、エルナトから離れない。

 訝しむ彼女を無視して、星の輝きは更に煌めき。

 一際輝く青い星が───エルナトの体内で、起爆。星の炸裂には、さしものエルナトも吐血する。彼女の防御力が高いからと、透過貫通させた輝きによる内部爆発。

 コメットが求めた突破力は、どんな障害物があろうと、必ず標的を撃ち抜く。


 約束された必中必殺───絶対に敵を倒すという輝きを手にする。


「ぐぅッ……ハハッ、やるじゃねェか!頭捏ねくり回した甲斐があったなァ!?」

「褒めるには早いんじゃないかしら?」

「そーだそーだ!いくよっ!───花天魔法<ガーデン・オブ・ミルフルーフ>!!」

「あ!?」


 花が咲く。

 魔力を燃やす溶岩の上に、魔力でできた花が……次々と咲いていく。花の種類は一つではなく、色とりどりの花、多種多様の花が咲き乱れる。

 溶岩は、豊穣の土壌へ。

 フカフカの土の上に、魔法の花が狂い咲く。溶岩なんて知ったこっちゃないと……ハニーデイズの花園が、世界を塗り替える。


 そして───大輪の花々から、清浄な魔力が溢れ出る。


 取り込むだけで身体の痛みが消えて、治療され、傷痕も無くなっていく。但し、それは魔法少女だけの、デイズの仲間だけを癒す魔法の花。

 エルナトを傷つけたまま、魔法少女は全回復。

 デイズが希った、傷ついた友達を癒す包容の魔法力が、危機を退ける。


 エルナトの決戦フィールドを、たった一つの花の魔法で無効化してみせた。


「なっ!?おいおい、嘘だろ!?戦場に似つかわしくねェ景色じゃねェか!気に食わねェ!!」

「そんなこと言わずにさ!花見してってよ!」

「趣味じゃねェ!」


 驚きながらもエルナトは戦う手を止めない。爆破された内臓が痛むが、まだそれだけ。

 暴れるのを止めるには至らない。

 コメットに刺され、デイズに環境を変えられようと……戦いを止める理由にはならない。哄笑する怪物は、魔法の覚醒なんぞでは止まらない。

 だからこそ───仲間の覚醒に高揚したエーテの夢想が突き刺さる。


「夢想魔法!<ミラクルハート・カノン>ッ!!」


 自慢の夢砲がエルナトを穿つ。

 コメットの星霊魔法とは異なり、夢想に貫通力といったゴリ押しはできないが。浄化消滅の力を、出し惜しみせずぶつけていく。

 星霊と花天に触発されて、夢想の威力は倍増。

 エルナトを削れる威力のユメが、気分上々のエーテから放たれた。


「チィ!揃いも揃って絶好調ってか!?」

「そりゃそうでしよ!私たちは三人で一人前!漸く横並びできたんだから!テンション上げてかないで、どうするんだって話じゃんっ!!」

「そうかよッ!」


 魔法の威力はテンションの上下でも左右される。そこに絶対はないが、関与しているのは明白。エルナトの左肩を削ってみせた夢想は、星霊と花天を牽引する。

 コメットとデイズも、エーテに負けじと魔法を放つ。

 強化された魔法の乱舞に、エルナトは折れてたまるかと反撃。思いの外見せてくる魔法少女に内心関心しながら、それでもこんなものかと牙を剥く。

 まだ、まだ。

 自分を倒すにはまだ至らないと笑いながら、闘神魔法で新星を撃墜する。


「禁断の二段重ねだ!

───闘神魔法ッ!<ウォーゴッドアーツ・ブーティス・ヒヤドゥム>!!」


 爆風が花園を焼く。

 更なる強化に伴い、花園に塗り替えられた土壌に、再び火山が舞い戻る。出力を上げる。威力を更に底上げする。ただでさえ強いバケモノを、更に強く。

 そうするだけの価値を、エルナトは3人に抱いた。


「くっ…」


 立ち昇る闘気は更なる熱を帯びて、近いだけでも身体が蒸し焼きにされたかの如く熱され、脳がくらりとする。

 近くにいるだけで痛い。身体が悲鳴を上げる。

 顔を顰めて熱波を遮るエーテ。本音を言えば、この場を逃げ出したい。それだけ暑い戦場。花園があってなんとかなっているぐらいの熱量が身体を痛めつける。

 それでも、負ける理由にはならない。否、しない。

 圧倒的な力は絶対的だ。どんな策を弄そうと、どれだけ高い状況判断の精度を持っていようとも。武器の扱いも、蓄えた知識や戦闘経験も、本来なら戦局を左右するはずの要素が、力の前ではただの飾りに成り下がってしまう。

 その絶望を、3人は何度も味わってきた。

 味わってきたからこそ……自分のできることを最大限に活かして、勝つ。


「勝つよ!」

「うんっ!」

「えぇ!行くわよ!!」

「三人共すごいぽふ〜!さぁ!みんな!魔法少女に、応援パワーを送ってぽふぅ〜!!」


:合点承知之助!

:魔法強化やったー!

:こんなに成長して…

:がんばれー!

:何度でも送るで!応援なら、いくらでも!

:任せろー!

:いけー!


───夢想魔法<ドリーミーストライク>


───星霊魔法<ブルーステリアル・ブレイカー>


───花天魔法<ハニー・フェアリーライト>


 今まで何度も傷付いてきた。

 エルナトとの戦力差は、依然魔法少女の方が分が悪い。単独戦力でも格上なのは言うまでもない。手を取り合った連携でも、漸く手が届くぐらいの差がある。

 夢想の砲撃も、星霊の爆発も、花天の光線も。

 視聴者の応援をパワーに変えた一撃を浴びても、闘神は怯みもしない。先程まで効いた攻撃も、今ではまたしてもいまひとつに格下げされる。

 それでも、効いている。

 重ねて、重ねて、攻撃を届ければ。いつしか、必ず……倒せる筈だ。


「なんて思ってんのかァ!?バカが!そんな希望なんざ、テメェらにゃ与えてやんねェよ!!」

「闘・神・魔・法ッ!!」


 世界が揺れる。

 世界が熱される。あらゆる魔法攻撃をも、その身一つで受け止める灼熱の怪物。心を折る。彼女の戦場に、生還者などあってはならない……変数以下の塵芥共を葬るのは、エルナトの十八番でもある。

 弱者を許さない。強者だけが生きることを許容された、極端な世界。

 それがエルナトの理想である。

 強ければ全てが押し通る。強者の理想こそ正しい理想。力無きモノの喚き声など聞くに絶えず。宣わる前に、そのチンケな命を啄み、一切の容赦なく焼き捨てる。

 大半の魔法少女は生かすに値する。死んだままの雑多な連中には興味はない。今いる魔法少女たちは、エルナトを魅了する強さを持っている。

 それでも、歯向かうのであれば。

 彼女は笑顔で敵対を認め、全力をもって、己の糧にするだけだ。


 暴れ狂う溶岩を率いて、エルナトは力強く宣誓する。


「重ねて宣誓する!!

───【エルナト・アルデバランは、最後まで倒れることなく戦い続ける】とッ!!」


 魔法に誓った、その瞬間。

 エルナトの圧が倍増する。

 死ぬまで暴れ続ける生物兵器。どれだけ傷つこうとも、エルナトは止まらない。

 そう自分を定めた。定めたからには、止まらない。

 宣誓の力は使うだけで術者を強化する。そこに限界など存在せず、何処までも。タガを外して、無理矢理にでも、宣誓の内容に沿って強化する。

 エルナトは決めた。この場にいる魔法少女だけでなく、暗黒銀河にいる全ての魔法少女を平らげる、その瞬間まで負けないことを。死なないことを。勝ち続けることを。

 前菜も、主菜も、デザートも。

 全てを平らげ、更なる強さを手にし、この世界の頂点に君臨する。


「だいぶ消耗したね」

「こっちの方が、だけど……まだ身体がジンジンするわ。でも、負けてなんていられないわよ」

「うぅ〜!ここまでやってもてっぺん見えないとか、もうホントやだ!!」

「弱音言わないの!ほら、全力で行くよ!」

「えぇ!ここで決める!!」

「うんっ!」


 凄まじい力の圧にも、心を折らない。これで折れるには成長し切っていた。リリーライト、ムーンラピス、そして他の魔法少女たち……地球全体で見ても上澄み中の上澄みたちとの死闘、訓練の範疇を超えた戦いを通して、三人の心は熱いうちに叩かれ、鍛え上げられている。

 絶望に膝を折ることはない。

 最強には程遠い。漸くスタートラインに立てたような、その程度の実力しかない。

 それでも、魔法少女は負けない。

 その過程にどれだけの苦難があろうとも、魔法少女は、勝利を掴んできたのだから。

 負けてなんて、いられない。


「夢想魔法!」

「星霊魔法!」

「花天魔法!」


 願いよ、祈りよ、想いよ。

 苦難を乗り越えんと、心を奮い立たせる少女たちに……勝利の祝福を。


夢 (ゆめ)→ 夢想 (むそう)魔法

星 (ほし)→ 星霊 (せいれい)魔法

花 (はな)→ 花天 (かてん)魔法

訓読みから音読み、頭文字に属性、語尾にそれっぽいのを付けたかったが故の命名。

正直“天花”か“万花”かでも悩みましたが…

揃えたかったからね。

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― 新着の感想 ―
たとえ彼女たちの魔法がすでに進化していても、「魔牛」を倒すためには、彼女たち自身にふさわしい「真・魔法」を習得しなければならないかもしれません。何しろ相手は神という名を冠した強者ですから。 また、太…
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