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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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346-開きっぱなしの蛇口


 同時刻───星霜山脈チェインフォレスター。かつては恒星異空間一自然豊かな伴星だった山脈も、今や荒れ地の滅びた地。灼土となった大地に、斬撃が更に刻まれる。

 四つ腕の天馬、将星サジタリウスの、命を燃やす戦い。

 その猛撃を食い止めるのは極光の勇者。リリーライトの介入によって、山脈は大きく揺れる。

 幾度となく星は砕かれる。

 聖剣の煌めきが、命を燃やした武器が、真っ向から激突する。


「ハハッ!やるねぇ!」

「見るからにテンション上がってんじゃん……楽しいから乗ってあげるけど!」

「そう言う割には、君も笑顔だけど!?」

「あっはマジ?」


 ライトの剣閃とサジタリウスの斬撃が激突、絶え間なくぶつかり合う。現状、力勝負で勝っているのはライトではなくサジタリウス。剣戟での押し合いはライトの負けだ。それでも、ただで押し負けることはない。

 命剣の振り下ろしを、ライトは聖剣の片手持ちで防ぎ、極光を放つことで反撃……聖剣から迸った光が、足りない膂力の代わりに命剣を押し返し、反撃。

 押し返すと同時に、極光が腕を切り裂くが……掠り傷。

 一度も距離を離さず、常に攻撃と防御を、そして迎撃を繰り返す。何度も交錯するが、サジタリウスもライトも、息をするように傷を治癒し続けて後退しない。

 筋力も速度も申し分ない、が。肉弾戦をするにおいて、ライトはサジタリウスに、明確に一つ負けている。言葉を選ばないのであれば、それは体重。ウェイトがなく、軽いせいで。魔力強化では補い切れないパワーに押し負けて、ライトは苦戦を強いられる。

 サジタリウスよりも遥かに軽量な身体は、命刀によって打ち上げられ、宙に浮く。


「わっと!?」

「軽い軽い……それと、ヤンチャが過ぎるよ、君!」

「通常運転、です!」

「おや!」


 次いで放たれた至近距離からの魔矢を、ライトは聖剣の刀身から魔力を噴き出させる、要は魔力ブーストの要領で勢いのまま迎撃。

 跳ね返すつもりで拮抗させるが……できたのは、軌道を逸らすことまで。頭蓋を狙った一矢は、見当違いの方向へ吹き荒ぶ。

 それだけでも、サジタリウスから驚きを引き出すことはできるが……


 そんな反応で満足するなど、リリーライトは赦すことはできない。


 驚かすならば、もっと……度肝を抜かせてやりたい。


「ヤンチャだねぇ!」

「そうでもないよ?」


───極光魔法<セレスティアル・ソーサリー>


 聖なる極光による多重展開攻撃。複数の方向から標的を集中砲火する魔法で、サジタリウスの視界を奪う。極光に目が眩むサジタリウスだが、狩人らしく冷静に対処。

 命刀を横薙ぎに振るい極光を切り裂き、防御。

 遅れて飛来する追加極光も命剣で貫き……撃ち漏らしは空いた手で掴み取る。


「おや?触れるんだね……返すよ」


 質量をもった光。反射的に掴み取れたことよりも、光が物質として手に取れたことに驚きながら、サジタリウスはライトのいるであろう方向に光の束を投げ返す。

 視界は光で潰されているが、気配だけで手に取るようにわかる。


 投げ返された先───半ばで折れた木を足蹴にしていたライトは、特に驚きもせずに首を傾けて回避。そのまま、聖剣に組み込まれている魔力増幅器で、聖剣内部で渦巻く光魔力を強化。視界を奪っている間に終えていた溜めを、ここで放つ。目潰しから復活したばかりのサジタリウスの懐まで、ライトは一瞬で飛び込む。

 そこは十分、馬体であっても攻撃可能な可動域であり、攻撃範囲。


 だが、ライトは気にすることなく───聖剣の魔力を、爆発させる。


「極光魔法ッ!」

「ッ!?」


────極光魔法<ラディアント・アークカノン>


 斬撃ではなく、砲撃。サジタリウスの反応よりも早く、聖なる輝きの爆発が馬体に炸裂。聖剣の魔力を大胆に使う超至近距離からの爆撃は、サジタリウスの真紅のオーラ、闘気を貫き、肉体の防御までもを貫通する。

 下方向からの爆発に、サジタリウスは大きく身体を仰け反らせ、苦悶の声を上げる。

 身体を包み込む闘気は、防御障壁も担う力の塊だが……オーラを貫通した爆光によって、強靭さに拍車のかかっていた肉体は大きく破損。視界が明朗になった瞬間を狙った攻撃は、サジタリウスの右前足を吹き飛ばした。

 それでライトは満足せず、他三本の足に斬撃を放つ。

 均等に、平等に。残念ながら闘気の守りに防がれるも、その衝撃をもってへし折る……力任せの暴力で、馬の足は大きくひしゃげた。


「機動力破壊」

「ハハッ、痛いじゃないか…!」

「なーんで余裕そうな顔できるのかなぁ。あっ……無痛症だったりする?」

「いいや。我慢強いだけさ!」

「んっ!?」


 一切笑みを絶やさないサジタリウスは、折れた三本足でガタガタの地面をしっかりと踏み締め、躊躇うことなく、折れた左後ろ足を使ってライトを蹴り飛ばす。

 急旋回からの蹴撃を、聖剣を盾になんとかガード。

 肉ごと骨もへし折れている脚でやったとは思えないその威力に、ライトは山の斜面を抉る形で力を逃し、土石流を発生させることで拡散。衝撃を食らった腹を擦りながら、崩された体勢を元に戻す。

 ……その間に、サジタリウスは命を燃料に骨折、そして部位欠損を修復。


「いたた……やるもんじゃないねぇ。思ったよりも痛みが長引いてしまったよ」

「あーあ。空元気終わり?」

「ふふっ、このまま固定砲台に徹しててもいいのだけど、それではつまらないだろう?今までは、彼らが離れるまで待っていてあげたが……もう、その必要も無さそうだし」

「律儀というか慈悲というか……ありがとね?」

「狩人の矜持ってヤツさ。一度追い回した獲物とはいえ、今、無闇に追いかけるよりも……君という極上の獲物から狩るべきなのは、言うまでもないしね」

「獲物ねぇ。あっ、なんか馬刺し食べたくなってきたな。食べたことないけど」

「おやおや」


 ……先程まで戦闘を繰り広げていたカリプス、ダビー、ナシラ、ビルの四人は、ライトがサジタリウスと切り結ぶ直前、彼女に吹き飛ばされる形で戦場を離脱した。

 邪魔されたくなかったのもある。

 体力は回復しても。戦う気力はあっても。彼女の戦いに邪魔が入ることは許されない。サジタリウスとの戦いを、最大限に楽しむ為に。ライトの手で、戦闘の余波が大して届かないとこまで吹き飛ばされている。今は大量に失った魔力の回復に専念しているが、参戦はしない。ライトから見てろと、人類最強の姿を見てろと厳命されたから。

 自分たちでは手も足も出なかった怪物と、余裕の表情で切り結んでいる年下の少女にドン引きしているのは、また別の話。

 増援を望まぬライトは、闘気で身体を燃やされようと、力で責め立てられようと止まらない。


「動いちゃやーよ」

「残念、動くよ!」


 再度武器を交錯させた2人は、暴風を巻き起こしながら高速で切り結ぶ。その場に抑えつけようとしたライトは、即座に方針を転換して、攻撃の押し合いから連続攻撃……要はヒットアンドアウェイに攻撃方法を変更。

 絶え間のない連続攻撃に、サジタリウスも同調。

 手数の差は圧倒的にサジタリウスが上回っているが……ライトが与える傷の方が、サジタリウスが与えるダメージよりも多かった。


 常に再生と活性化を継続しているサジタリウスと同等。若しくは、上回る速度で……リリーライトの魔力出力が、威力が上昇している。

 身体を動かす度に。

 魔力を練り上げる度に。

 魔法を使う度に。

 そして、聖剣を振るう度に……リリーライトの全てが、活性化していく。時間経過に伴い、ライトを構成するその全てが、強化されていく。


「ッ!動きが…」

「あなたのそれは命を燃やした力。代償ありきの強化は、すっごい恐いモノだけど……その力が、私を上回ることはないよ……痛いことに、変わりはないけど」

「ふっ、ならば、その認識を改めてあげよう!ハァッ!」

「だから無駄だって!!」


 サジタリウスの舞うような剣戟、弓術も併用した薙刀と大剣の連続攻撃は、怒涛の勢いでライトに差し向けられ、決して勝ち星を獲ることを許さない。

 この戦場における勝者は、自分以外許さない。

 両者共通の未来を思い描きながら、サジタリウスは命を燃料に力を底上げさせる。何故か自分に追従できている、正体不明の未知の出力を見せるライトを、命燈の力ですぐ追い抜く。


「ハハッ!悪くないね、この感覚!」


 サジタリウスには時間がない。命を燃やす、つまりは、戦っているだけで命を削っている。

 刻一刻と迫る死。生命の終わり……だが、時間はある。リリーライト一人を殺す程度なら、十分なお釣りができる程には。


 命刀ホシナギが極光を両断する。

 命剣ホシヅキが勇者を刺突する。

 そして、愛用する弓に膨大な魔力を注ぎ込み……身体を吹き飛ばす。またしても空中に吹き飛ばされたライトは、勢いを殺さず利用して、空間を面と捉えて、空気を足場に跳躍。発射台のように勢いよくサジタリウスへ突っ込み、極光を斬撃として放つ。

 サジタリウスの反応速度を超えた斬撃は、辛うじて首に切り傷を入れる程度で済んでしまう。

 だが、ライトは気にしない。

 攻撃が入るだけ十分だと、更にその出力を上げていく。際限なしに、底無しの魔力を。


「あはっ!」

「そうれ!」


 お互いに余裕の笑みを崩さず、自分のペースを維持して戦い続ける。サジタリウスの刺突をライトは跳んで避け、身体を捻りながら背後に回る。燃える頭髪に頬を撫でられながら、間髪入れずに聖剣を背中に突き立てる。

 背後をとった。だが、決定打にはならない。

 そんな未来をわかっていながら、ライトは、胸の底から湧き上がる力を発散し続ける。聖剣より極光を放ち、彼の心臓に後ろから衝撃を与え、即座に離脱。

 少量吐血したサジタリウスの、胴体を捻りながら放った斬撃を回避する。


「ふぅっ!」

「おや、お疲れかい?」

「まさか!最高の調子だよ!これからも、これまでも!」

「それは僥倖!でも、ちょっと息遣いが荒くなってきてるようだね……無理は禁物だよ?」

「だから降参しろって?それこそまさかでしょ!」

「いい子だ!」


 魔力を帯びた息を荒く吐き出しながら、ライトは構わず攻撃を続ける。防御は最小限に、魔力をふんだんに使ってサジタリウスに斬撃を重ねる。

 魔力切れを気にしない行動の数々には疑問が浮かぶ。

 省エネで動くべきであるところを、ライトは必要以上に魔力を使って動いていた。

 その理由は、ただ一つ。


 今、リリーライトの身体に、一つの異常が起きている。胸元に秘められた心臓という名の魔力炉から、無限に魔力が湧き続けていた。

 蓋もできず、栓を止めることもできず。

 無限に溢れ続ける魔力で、身体が熱を帯び、想定以上の膂力が出力される。

 

 ライトは攻撃をし続けなければならない。魔法によって魔力を吐き出し続けなければならない。胸の内から、魂の奥底から溢れ出る力を、発散し続けなければならない。

 本能的に理解した、戦いを通して強化されていく自分の全て。エルナトとの戦いでタガが外れた器は、宿主であるライトを呑み込みかねない勢いでエネルギーを発し続け、その出力を上げ続けている。

 消費しなければ、内側から爆散しかねない程に。

 それでも、ライトは苦に思わない。それが必要な工程であると理解して、冷静に物事を成し遂げる。

 通過点は、もう超えた。

 後は、結実させるだけ。


 この戦いの果てに、“極光”のリリーライトはもう一段階強くなる。


 肩書きだけだった、その名を。

 十三代妖精女王の権威───夢を司る妖精の力を、全て引き出すことで。


尚、そう簡単には行かない模様。

現在進行形で一つ災難に見舞われているライトちゃん……詳細はまた明日。書くの忘れてて加筆しようと思ったけど問題なさそうなのでそのまま行きます。

では。

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