表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

376/440

347-調整入りまーす、今すぐに


 更なる覚醒を求めるリリーライトと、彼女の思惑の上辺だけを推察できたサジタリウスの、未来を譲らない激闘。手を抜くなどという微温湯に使った思考は一切なく、ただ我武者羅に、本気で相手の首を狙って攻撃を続けていく。

 好戦的な凶悪な笑みを浮かべたまま、斬り結ぶ。

 極光と斬撃、魔矢が吹き荒ぶ荒野───そこから二キロメートル離れた丘の上にて。


「なんだよアレ…」

「人外魔境宇宙決戦の前哨戦ってとこか」

「なんでそんな冷静なんだよ」

「うちじゃ日常茶飯事だぞあんなの。ボスと乳繰り合えば毎回あーなるぞ」

「バカだろ」


 邪魔だからと遠方に追いやられた“繋ぎ役”たちが、耳をぶち抜く戦闘音に意識を奪われながらも、失った分の魔力回復に勤しんでいた。

 リベンジを果たせなかったカリプスは、サジタリウスの魔法観測の為についてきたビルと丸太の上に座り、破滅の光景を眺めていた。

 ……魔法云々は、リアルタイムで観たいと熱視線を送る帽子屋がいたせいで、仕方ないなとビルが折れ、黒山羊のチームに混ざった形である。

 その結果は、このザマだが。

 一応命があるだけマシだと考え、程よく前向きに現状を呑み込んではいるが。


「……遠いな」

「あれ見ちまうと、俺らがどんだけ下にいんのか、嫌でもわかっちまうよなぁ……」

「強すぎるのも考え物だな」

「でも、諦め切れねェんだよなぁ……あそこまで行くのに何年かかるよ。百年じゃ足りねェぞ?」

「なら俺は寿命で死んでんな」

「延命してもらえよ。ムーンラピスなら、あんたみてぇな使える手駒をそう安安死なせやしねェだろ。なんなら全員気付かない内に仕込まれてても驚かねェぞ……」

「あー、無くはないな」


 天上組との実力差。

 あまりにも高く、分厚い壁の遥か向こう側にいる強者。乗り越えたいと思っても、足を引っ掛けられる場所がない上に、壁の前には断崖絶壁が広がっていると見た。

 足場がないなら作ればいい。そんな思考も許されない、大きな隔たり。

 見る者が見れば、武器を置いて強者を目指す道を諦める絶対的な格差を、遥か遠方の戦場より垣間見る。

 手の届かない天上の戦い。

 それが目の前で繰り広げられているというのに、2人の目から興奮は冷めない。どうやったらあそこまで行けるか考えて、諦めて、それでも諦め切れなくて。

 死ぬその時まで不可能に抗おうとする生き方を選んで、憧憬を抱く。


 サジタリウスの魔矢が、雲を切り裂き宙に穴を空ける。リリーライトの剣閃が山を両断し、宙に浮いた土石の塊は極光によって消滅する。

 凄まじい轟音が鳴り響く中、一際感じ取れるのは……

 聖剣の勇者、人類の希望───リリーライト。どういう理屈かはわからないが、魔力の圧が、バカみたいに溢れ、オーラのように立ち昇っているのが……ここからでも見てわかる。


「あ、熱いッ…」

「熱波轟々…」

「我慢しろ。扇風機やっから」

「わーい!」

「所望!」


 サジタリウスの闘気と相まって、二つの力は熱となって丘の上まで届く。カリプスたちの後ろで脱出船を組み立てていたダビーとナシラが苦悶の声を上げる程、その熱波は凄まじい。丘の上に点在する露頭、地上に飛び出た岩盤に身を潜めさせてもいいのだが……万が一ここにまで攻撃が飛んできた際、物陰にいたせいで反応できませんでしたは洒落にならない。

 手持ち扇風機で涼み始めた子供たちを他所に、男二人で宙を見上げる。


「でも、バケモノにはなりたかねェな」

「手段がそれしかねェのが最高にイカれてんな……おっ、これで魔力全回復か?」

「急速充電様々だな……今から脱出は無理だな。逃げてる最中に余波でぶっ潰されるぜ。ったく、任せっきりな上におめおめと逃げるしかねェとは、情けねェ限りだなァ……かといってここで混ざりに行っても、味方の筈のあいつが殺意飛ばしてくるだろ、絶対。あいつの殺意、鋭いんだか重いんだかわかんねェんだよなァ」

「経験者が言うことは違うな……ダビー!ナシラ!準備、さっさと終わらせとけよ!」

「はーい!」

「了!」


 幼い側近たちが元気に返事を返した瞬間、聖剣で軌道を歪められた魔矢が、カリプスたちのいる丘に着弾したのは余談である。

 悲しい哉、丘は吹き飛んだが……

 かれらは今日も元気である。命ある限り、きっと未来を掴み取れるだろう。








꧁:✦✧✦:꧂








「どんどん、上がるねぇ!!」

「……まだまだ!もっと、もっと!もーっと上げてくよ!ついてけるっ!?」

「ハハハッ、いいとも!ご一緒しよう!」

「そうこなくっちゃ!」


 身体が熱い。

 グツグツと、煮え滾るような熱が、私の身体を凄まじい勢いで加熱している。風邪を引いた時とは違う、高揚感と全能感が、思考に少しのズレを齎す。

 いつもよりも攻撃の出力が速い。そして強い。

 調整が難しい。ここでこうすればと普段通りにやると、想定以上の火力で足場がぐちゃぐちゃになる。私の極光で世界がめちゃくちゃになる。

 それ自体は、別にいいけど。

 熱を帯びた身体は、サジタリウスの攻撃をこれでもかと素早い剣閃で捌き切る。いつも以上の速度が出たことに、これまた内心で驚きながら、矢を避ける。この矢は剣戟でどうこうできないからね。防ぐより逸らした方が確実だ。

 あー、あっつい。胸の奥底から湧き上がる魔力が、常に熱を帯びている。さっきまで溶岩惑星にいたけど、そこと体感温度は全然変わっていない。ここ元森林の星だから、少しはマシになる筈なのに。

 熱に浮かされたような思考のまま、サジタリウスの剣を真正面から受け止める。


 身体が勝手に動く。最適化された動きで、フルオートで攻撃を放ち、捌き、防ぎ、そして避ける。

 そこに、私の思考は一切介在しない。

 なんていうのかな。ラピちゃんが普段から愛用している並列思考とは違って……分離してる感じ。身体と精神が、少しずつ乖離しつつあるっていうか。

 ……なんなんだろうね、これ。

 魔力が溢れ出ると共に、どんどん思考が置いてけぼりになっていく感覚に落ち始めた。別に、それも悪くはないと思うんだけど。だって攻撃も防御も回避もできてるし。

 不思議と発言にも問題ないし。戦闘特化オートだね?

 でも、まぁ……なんか不快。自分の意思で動かしたいんだよこっちは。あと、このまま放置したら不味い予感が、なんとなく。


「さっさと返せ」

「……うん?」

「あっ、ごめんこっちの話……ねぇ、身体が勝手に動くのどうすれば改善すると思う?」

「……それは現在進行形の話かい?」

「そうだけど」

「そうだけどって……君ねぇ、敵にそんなこと聞いちゃあダメでしょうに」

「あっ」


 いやその、会話ができる相手って結構新鮮で……昔って悪夢に狂ってるヤツらかアクゥームばっかで、会話なんて無理寄りの無理だったから……

 フットマンとプリケットぐらいだったし。

 あとはリデルもか。あのクソデカ。今頃ニフラクトゥの餌になってないといいけど。幾ら強くなったって、それも模造に過ぎない。本当の全盛期はとうに過ぎて、今は全部ラピちゃんに収束してるから。あの再現体も、結局はどう転ぶのやら……


 っと、危ない。今こめかみ掠ったよ。ちゃんと避けてよ私の身体。


「うーん、まぁ。強いて言うのであれば…」


 えっ。


「脳筋なやり方にはなるけど、身体に無理言って効かせるなんてのはどうかな。こう、右膝を動かせって指示して、君の意思関係なく戦おうとしてる身体を邪魔して、時間をかけてでも一致させるしかないんじゃないかな?」

「律儀に助言してくれるんだ……でもそれ、体のいい的になれってことじゃん?」

「ハハハッ、当たり前だろう?」

「嫌だなぁ、もう!」


 くれるんだ、助言。

 理由は兎も角、確かに、強引に一致させた方が話は早いかなぁ。そのズレを、きっと彼は的確に狙ってくるけど。修正を始めたら、さっさと修正しないと……死ぬのは私。さっき思念でチェルちゃんが死んだだの魔法少女になっただの、デマなのかデマじゃないのか全くわからない通信が立て続けに飛んで来たけど……真実だと仮定すれば、死が覆ったことは喜ばしい。なら、ここで私が死にましたとか伝わったら、もうブーイング間違いなし。三度目の復活は多分無理だから、色んな意味で終わり。

 だから、身体と思考を急いで一致させる必要がある。

 秒単位でブーストがかかってるから、常に更新されてるようなもんだけど、なんとかする。なんとかできてこそ、私を私たらしめるから。

 ……うん、やってみるか。

 大丈夫大丈夫。魔力でゴリ押しして、この熱量に意識を慣らすから。


「早速やるのかい!?」

「そっちから提案しといて?驚かないでよ。私、提案にはすぐ乗っちゃう女なんだ」

「愉快な子だねぇ!なら、その間に仕留めちゃおうか!」

「やれるもんなら───やってみろ!!どんな状態でも、私は強いよ?」


 腕を右に。足を前に。首を少し傾ける。そう脳みそから指令を出しても、身体は言うことを効かずに勝手に動く。だから力を込めるように、強引に。

 この有り余る魔力がズレを生じさせている。

 なら、それを利用して、魔力を使って身体を無理矢理に動かしていく。


 命令と伝達、強制を、魔力強化でゴリ押して……今から私がやることは、そんな単純な話だ。

 普段からやっていることを、いつもより強くやるだけ。

 身体と思考が分離してても、魔力は問題なく使えるのが幸いだったよ。


 身体が勝手に動こうとするのを、私の意思による動きとなるように制御する。そう思考を出力すると、何故か私よ身体は一瞬硬直しやがる。

 その隙をサジタリウスに狙われるけど、そこは強引さが売りな私のパワー。言うこと効かない手に馬鹿力を注ぎ、聖剣を振るって薙刀を弾き返す。

 ヨシ、痛いけどできた。

 この調子で順応させて……あー、もうっ!魔力ブーストすごいかかってるせいなのかはわかんないけど、時間経過強化ホントやめろ!!


 オラ、言うこと聞け!!


「ヨシ、多分いける!」

「早くないかい???」


 そりゃできるでしょ。

 なんか変なことが起きていても、これは私の身体。私のモノなんだから。これでいつまでも言うこと聴かない身体なんて、ラピちゃんに頼んで分解して貰った方がいい。

 あの子、やろうと思えば生きたまま分解と再構築ってのできそうじゃん?人のこと玩具か機械工具感覚でバラして元に戻せそうじゃんあの子。だから最終手段だ。

 ……風評被害だって叫びが聞こえた気がする。すごい、私ってば読心どころか察知能力まで……

 後で自慢しに行こう。


 言うことを聞け。逆らうな。従え。私の導きに、意思に恭順しろ。


「極光魔法ッ」

「天域闘武!」


 いつもの強引さに掛け算をして、倍々の無理矢理で全部なんとかする。その間も、原因である魔力ブーストは一切止まらない。身体の熱さも、もう酷い。

 でも、私は止まらない。

 魔力の増幅は堰き止められない。このまま溢れに溢れて精神を追いやってくるだろう。理屈はわからないが、この魔力が全部悪いのは確かだ。

 原因はなんだろう。魔力の質的に、ディアティナ様……先代妖精女王のそれが混ざっているのが感じ取れるから、多分妖精の力が関係しているのは確かだ。このまま上手く行けば、その力を私は引き出せる。

 これは試練だ。

 この力に呑まれて、身体が勝手に反応する人形に───悪夢を殺し尽くす兵器になるか、自我をもって世界を正す勇者になるか。


 うん、乗り越えちゃおう。


 人間が妖精女王になるなんて、確かにおかしい。先代はそれを認めてくれたけど、この力の奔流は……どこから、来てるんだろうね。

 それも解明したいけど、それは私の頭じゃ無理だ。

 あっちから来てくれるんなら、それでいいけど。いや、行くか。


「っ、あああああ───!!」


 身体が熱い。

 身体が痛い。

 益々増えていく傷は、まだ身体と思考が完全一致していない証拠。徐々に修正できてるし、硬直時間も短縮できてマシになってるけど……やっぱりまだまだ。

 こんなんで勝てるなら、もうとっくに勝ってる。

 サジタリウスは速い。そして強い。力任せの一撃なんて何処にもなくて、卓越した技量の上に全てがある。だから私の力任せな攻撃も大して通用しない。

 どれだけ強くっても、捌かれちゃ意味がない。

 時間制限つきの戦いだけど……多分、このままやっても彼には余裕がある。


 さっさとその余裕を崩す為にも、ここら辺で覚醒しとく必要がある。


 だから。


「ちょっと精神世界行ってくるね」

「うん???」


 一旦身体にDVするのやめて、ちょっと奥まで潜るね。わんちゃん原因いるかもだし……

 ちょっとお話してくるね。

 ってことで、フルオートボディに一旦任せて、ちょっとコツがいるけどできはする、精神世界への切符を切って。行ってきます。


 ちょっ!なんて声を荒らげるケンタウロスを無視して、意識を溶かして……



























































































「きーたよ、ってホントにいる…」

『あぁの、故意じゃないってことはご理解頂けるとすごい嬉しいのですけど……弁明とかって許されます?なんとか生き残る道ってありますか?』

「私そんな物騒な魔法少女じゃないんですけど!!」


 意識の底、暗闇の濁流を降りきった先に───私の力の新たな根源として同化した、彼女と再会する。

 今はもう、残滓のようなモノだけど。

 あの日、意識を保てないとか言ってた割に自我を持っている様子の彼女。真昼の空なのにオーロラが広がっている花園で体育座りしていた彼女は、再会を喜ぶのではなく、焦った様子で私に弁明してきた。

 かわいいなぁ、もう。

 プラチナの髪に金の瞳、薄らと透けた蝶の羽が綺麗な、可憐な妖精。身長が低いせいで、かわいいの比率がすごい大きいけど……そっか、それがあなたの姿なんだね。

 あの日は見れなかった、その顔を見ながら。


「……お久しぶりです。女王様。結構、可愛い顔してるんですね。抱き締めてもいいですか?」

『んんぅ、能天気……こほん。お久しぶりです。お人形はやめてください、ね?』

「ちぇ〜」


 大地となった足場から、ユメ色の魔力が噴き出している花園を踏み締めて、私は微笑む。

 彼女は、十二代妖精女王、ディアティナ様。

 久しぶりに出会えた命の恩人との会合と、この溢れ出る魔力をどうこうする為の、対話を兼ねたこの再会に。私は心の底から喜んだ。


 お話しましょ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ