311-剣聖嵐武
───お主が蒼月か!初めまして、だな!
あの日のことはよく覚えている。
魔法少女になってすぐ、一ヶ月ぐらい修行と称して裏で鍛錬していた時。まだ表舞台に立つには早すぎるから……魔法少女の屍の山を知っているから、力をつけてから悪夢との戦いに挑むと判断した。
幼馴染も、契約妖精もそれを肯定した。
ただ、幼馴染の承認欲求が爆発して、配信魔法を通して世間に認知されてしまったけど。それでも、僕が納得を、これなら大丈夫だと確信が持てるまで、発現した月魔法を精錬させることに心血を注いでいた。
……結局、近場で暴れるアクゥームのせいで、不本意な本確デビューが始まったわけだが。
そんな折に、僕は彼女と出会った。
魔法少女であるのにも関わらず───魔法少女を辻斬りするという、狂気の沙汰を体現したかのような、侍の如き魔法少女と。
“斬魔”のモロハ。当時でも名を馳せていた現代の侍。
「いや殺しとらんぞ。ちょっと喧嘩ふっかけて競い合って勝ってるだけでござる。殺傷は……傷はつけたが、流石に命までは奪っておらんぞ?ホントでござるよ?」
「自分で言って信じられる要素、ある?」
「───無いでござるな!正直、強者と戦いたい欲に忠実過ぎたとは理解しているつもりでござる。反省する気も、後悔なんぞも無いでござるがな!!」
「畜生かあんた」
そんな危険人物と一緒にいてもいいことはない。ただ、相手は自分よりも格上の魔法少女。実力も年季も遥か格上であり、先手も後手も全てに置いて自分が劣っている。
警戒心は解かず、視界から外さないように。
当時一番危険視されていた辻斬りが、何を思って自分の目の前に現れたのか。
僕の厳しい目つきも、モロハ先輩は意にも介さず若手の後輩を吟味する。未だ戦い甲斐のある戦士ではない。まだ殺意をぶつけるには早すぎる。
時期尚早。摘むにはまだ早い。
だからこそ、モロハ先輩は僕に邪気のない笑顔を向け、こちらの警戒心を和らげるよう、決して刀には手を触れず間合いにも入らない。
ここにいるのは、新人潰しに来たわけではないと。
ただ、見所のある後輩を───才覚のある魔法少女との交流をしたいだけだと。そう真摯に訴える彼女のことを、信じられるわけなく。
「仲良くしよ」
「絶ッ対ヤダ」
将来的に強くなりそうな後輩に唾をつけて、戦おうなといつかを予約する為に。
それが迷惑すぎる先輩との出会い。
味方も警戒すべきであると、僕が魔法少女対策も訓練に組み込んだ瞬間であった。
……結局、あの人の新人潰しは、非力な魔法少女を戦場から遠ざけて、犠牲を少なくするっていう間引きにも似た善意だったけど。迷惑だったし、危険視もやむなしな無法少女であったのは事実。
ムカつくけど、魔法少女に選ばれるぐらいの善性とかはあったわけだ。
そんな先輩の剣技を手にしたのは───僕なら扱えると確信を持ったから。
あの人の死後、見様見真似で習得した斬魔一刀流。
魔力持ちであれば誰でもできる、と構想を練った上で、有史上三人しか会得できなかった……それぐらい常人では扱えない超絶技巧、若しくは秘剣。
ひと握りの強者だけが手にできた、魔力喰らいの刃。
モロハ先輩と、僕ことムーンラピス……そして、新たな斬魔の使い手。
「シィィィ…」
“斬星儚魚”、ヴォービス・トレーミー。
若しくは“斬魔二世”───斬魔一刀流の正当後継者の、透明な、邪念なき刃が迫る。完璧なまでに昇華されたその覚えのある剣技は、明確に僕の命を狙う。
悪夢の身体で不死であろうとも。不死を行動不能にする術など、この世に幾らでもある。それを彼女は実行せんと切り込んでくる。
どういう経緯か、夢伝いであるとは聴いているが……
二代目を襲名した、その事実に嘘偽りはないと、改めて確信する。
「やるねぇ」
仕込み杖の刃と、妖刀の刃。二つの金属が掻き鳴らす、斬魔の共鳴。心地よいとは言えないが、この世に2人しかいない刃の独特な協和音も悪くない。
その相手が地球人ではなく、異星人なのは嫌だけど。
それが先輩の選択であり、そうするだけの価値を彼女に見出したのであれば、これ以上言うのは野暮というもの。異星人差別になっちゃうしね。
だから、これは。
「……純粋に君を認める戦いになりそうだね、面白い」
渡り廊下での剣術勝負。この戦いの結果次第で、戦争の趨勢は双方のどちらかに傾くことになる。
負けられないね。
……生憎、将星レイの不意打ちでこっちは絶不調。
万全からは程遠いが……【悪夢】の力を使い辛いだけで問題はない。魔力回路を傷つけられた云々は、アルフェル対策の応用でなんとかした。直に癒えるから魔力の問題は解決している。ただ、傷の治りは未だに遅い。そこだけは留意しないといけない。
とはいえ。
「ハハッ、どうでござるか!?」
「申し分ないよ。十分な程に!」
───斬魔一刀流・闇一重
───斬魔一刀流・哀二食
互いに同じ流派の剣術を放つ。ヴォービスは縦切りの、僕は横薙ぎの二連閃を。斬魔一刀流は、技名を定義された斬撃はだいたい飛ぶ斬撃だ。直接切りかかる技もあるが、そっちの方が多い。
縦と横の斬撃は衝突し、互いを斬り刻みながら対消滅。
それと同時に、僕とヴォービスは駆け出して互いの刃をぶつけ合う。
「技量自体は同等でござるか?」
「そうかもねぇ。でも、調子に乗らないように───ハイ次の行くよー」
「むむっ!」
───斬魔一刀流・虚蝶嵐
───斬魔一刀流・虚蝶嵐
今度は同じ剣技を、無数の斬撃が嵐のように乱舞する。紫色の斬撃と蒼色の斬撃。同じ技だからか、二つの斬撃は互いに打ち消し合う。
うーん、やっぱりなぁ。
技量は同等、力加減はこっちの方が上。難しいよなぁ。決定打に欠けるんだもん。真贋を決めるとは言え、双方がちゃんとしてたら勝負になんないよね。
でも、今んとこ優勢なのはあっち。
やっぱり剣術一筋だからなかな。こっちより攻撃速度が数段速い。
「負ける理由にはならないけどね」
───斬魔一刀流・黒雨落
刃先に魔力をよく込め、ヴォービスに向けて連続突きをお見舞いしてやる。身体に穴を空ける技だが、彼女は全て見切り、妖刀を巧みに操り防御する。
うーん、この妖刀も厄介極まりない。
触れるもの皆傷つけるみたいな、刃自体にギザギザした魔力がまとわりついてる。切り結ぶ度にこっちの刃が少し傷つくっていうか、刃毀れ不可避の斬撃を押し付けてくるクソ妖刀なんだけども。
どこ産だよ。聴いたら答えてくれるかな。
何回も切り結んで、仕込み杖の刃が欠けてくのを魔力で再生させながら質問してみる。
「どこの妖刀?それ」
「王鉄惑星メラクドゥべー。そこの古代遺跡の最深部にて封印されていた代物でござる。発見当時は、謎めいた魔剣だと宝物庫に封印されていたでござるが……セッシャが、お師匠様と出会ったことで刀と知り、妖刀であると判断し私物化したものでございますれば!!」
「私物化はよくないと思う。許可は取ったの?」
「? セッシャのモノなのだから、許可を取る必要などはないのでは?」
「うわぁ」
こいつ本物じゃん。
誇るように掲げる刀。地球の、日本のそれとは大分違う印象だけど、製法は恐らく同じモノ。材質は全部知らないヤツかなぁ……改めて見てもわからない。
地球由来の物質とで未知のモノが多いんだ。
宇宙まで行くとわかんないモノはわかんない。仕方ないことだ。
「便宜上、妖刀と称してはおりますが……この刀、魔剣の正式名称は“淵魔影打アマツトジ”。星を断つ我が斬撃を、世界を断つ斬撃へと昇華させる、魔に由来する刃。加えて人の命を啜ることで、その切れ味を増すのでござる」
「いや、世に存在しちゃダメな刀じゃん……つか、それで影打かよ。嫌だな」
「? 何故でござる?」
「んあー、影打ってのは量産型みたいなのでさ。厳密には違うんだけど。真打っていうのを元に作った、二本目とかなんだよね。だから、君が持ってるそのヤベーのが他にもあるかもって嫌な予感がプンプンしてるの」
「わお」
宇宙って広いからなぁ。
暗黒銀河にあるとは限らないけど。つか、真打も影打も関係なくヤバそう。関わりたくねぇ……将来的に世界から消し去ってやる。
手始めに、こいつの刀からへし折ろう。先輩のみたいにぶっ壊してやる。
「ハァ〜、あ、悪いね中断して。再開と行こうか、斬魔の後継者ちゃん?」
「くふっ!望むところでござる!」
……今の会話の最中、治癒阻害を緩和できるかこっそり確かめてたんだけど、なんか無理そう。これ時間経過とかでなんとかなるヤツかなぁ。
悪夢の消化が終われば、自動的に解決するか。
そう楽観的に笑って、仕方ないよねと無理矢理に自身を納得させながら。
ヴォービスとの剣戟を再開する。
「ハッ!!」
「ッ、へぇ」
───斬魔一刀流・影食深
下から切り上げる斬撃が放たれ、僕はそれを仕込み杖で防ごうとして。斬撃を注視していた僕は、遅れてその軌道から逃れる選択を選んだ。
危なかった……
本来なら敵を呑み込むような殺意と共に相手を斬り裂く斬撃なんだけど。なんか、こいつのそれは空間が変な風に歪曲していた。
多分、あのまま当たってたらこっちが弾け飛んでた。
なんだよ弾け飛ぶって。斬撃ならちゃんと斬撃してろや魔改造すんな。
「もういっちょ!」
追加で放たれた<影食深>は殊更に大きく、渡り廊下の柱を何本か喰らい、消滅させながら僕の方へ迫ってきた。おいおい、やっぱ本家より殺意高くなってない?
後継ってのもバカにならないな……
ったく、今の状態で食らったらたまったもんじゃないんだから。
「加減しろバカ───<青蜻蛉>ッ」
仕込み杖を一度鞘に納めてからの、抜刀。居合切りでの真っ向勝負。
空間を斬る斬撃?馬鹿野郎、正面から切り開くとも。
斬撃を受け止め、ギャリギャリと悲鳴を奏でる刀剣には無理を言って。押し込む形で、力を込めて……魔力で覆うことで、空間に呑み込まれるのを防ぐ。
物は試しにとやってみたが……どうにかなるもので。
刀身の半分が抉れる被害をもって、ヴォービスの斬撃を斬り伏せた。
「ほほう!」
「感心するにはまだ早いよ」
「そうでござるなぁ!ささっ、もっと斬り合いましょ!!永久に、この時を楽しみましょうぞ!!」
「遠慮しとくよ」
───斬魔一刀流・崩泉華
───斬魔一刀流・翁断幕
ヴォービスの<崩泉華>は飛ぶ連続突きを放つ剣技で、質量をもって、弾丸のようにこちらに襲いかかる。対して僕が放ったのは横薙ぎの一閃である<翁断幕>。しまった失敗した。いい手じゃなかったかな。
半分は切り落とせたけど、追加で突きまくるもんだからたまったもんじゃない。
でも、まぁ。
「<朽白雅>───全部を避けてしまえば、無問題」
弾丸の如き突き技を、紙一重で避けていく。敵の攻撃の全てを躱し、相手の懐に潜り込んで切り刻む柔の剣。僕の速度を上乗せすれば、暗殺剣に早変わり。
髪の毛を一部吹き飛ばされながら、ヴォービスの懐へ。
「おぉ、速い」
でも、彼女は余裕を崩さず。
───斬魔一刀流・不知火
残像を置く逃げの剣技、陽炎と言ってもいい技で斬撃を回避した。あの技、ただ足が速いだけじゃあ成功しない、結構難易度高めの残像設置技なんだけど……上手いな。
後方に跳んだヴォービスは、今度は<虚蝶嵐>で斬撃の嵐を打ち出してくる。
少ない素振りで百以上の剣閃を生み出す剣術。
最早魔法の領域に入っているそれは、先程対消滅できた技と同じとは思えないぐらい、こちらの斬撃を掻い潜って上回ってくる。
「……チッ」
思ったより捌き切れない。参ったなぁ。これじゃ模倣が最強とは言えない。それぐらい、ヴォービスの剣術は僕の模倣斬魔と漸近している。
あっ、これは無理。
切り砕いた斬撃の“欠片”が、僕の頬をシュッと裂いた。鬱陶しい。
「そんな距離取ってていいわけ?」
いい加減埒が明かないので、もう一度<朽白雅>で全て掻い潜り、なんとか被弾しないように切り抜けて。笑顔でこちらを見るヴォービスの前で、跳躍する。
渡り廊下って関係上、天井という制限があるが。
天井に足をつけ、重力に逆らってぶら下がり。空から、斬撃の雨を。
───斬魔一刀流・暗雲煌
文字通り空から降り注ぐ斬撃の雨。本来は飛翔しながら絨毯爆撃のように斬撃を放つ技だけど、今回はちょーっと改変して、固定砲台になる。
狙いはヴォービス、ではない。
僕たちの戦場となっていた、思いの外広い渡り廊下……その床全て。
「ッ、まさか!」
「斬撃でボロボロなんだ。場所変えようぜ───この下、なんの建物か知らんけど!」
「薬草園でござるな!」
床に穴が開き。
柱は縦に裂き。
渡り廊下の要である支柱が、今まで耐え切っていた柱の全てが斬撃の雨に敗れ。
僕がいる天井ごと、渡り廊下が沈む。
遥か数十メートル階下にある、薬草園とやらのガラスのドームハウスへ落ちる。
ここは狭いからね。広いとこに行こう。そっちの方が、僕が戦いやすい。
「せっかちでござるなぁ───ならば、落ちきる前に一度仕留めさせて頂く」
「へぇ?見せてご覧よ」
でも、相手もただで有利をくれてくれるわけがなく。
「ふぅ…」
落下する浮遊感に苛まれながらも、ヴォービスは一切の隙を見せず。手を動かすのを面倒臭くなって、仕込み杖の補助装置を発動させて斬撃の雨を自動発射している僕を、ジッと見上げたまま。
腰を深く落とし、妖刀を今一度鞘に納めて。
閉眼し、ゆっくり息を吸い込み、スゥーと一息に吐いて精神統一を開始。
「呑気な」
何をするつもりなのか、同じ剣技を持っているからこそ
わかってしまう。わかってしまうからこそ、実行させまいという思いで幾つもの斬撃を放つ。
見様見真似で手にした、斬魔の我流。
今から同じのを放つのでは遅いから、矢継ぎ早に斬撃をお見舞いしてやる。
闇一重。
哀二食。
黒雨落。
翁断幕。
影食深。
暗雲煌。
不知火。
朽白雅。
崩泉華。
虚蝶嵐。
青蜻蛉。
魔太天。
空亡唄。
天津風。
複数の型、入り交じった斬撃をヴォービスに絶え間なく浴びせるが……彼女は、一切動じず。納刀された妖刀から放たれる剣圧が、こちらの斬撃を逆に切り刻む。
凄まじい妖刀だ。自動防御付きみたいなものかな。
賽の目状の斬撃を放つ<魔太天>は吸収、死角から命に突き刺さる<空亡唄>は逆に喰らい、鎌鼬の如き風の斬撃<天津風>は霧散してしまった。
成程、これなら溜めが必要な技も放てる。道理で深呼吸できるわけだ。
……これ、止めれないかな。剣術勝負に乗ってやったんだから、ここは仕方ないってことで。絶えず剣技を放ち、その剣圧の範囲と速度を測定しながら、その時を待つ。
迎え撃つしかないなぁ。
足場を安定させる為に床に降りて。もう少しでドームに落ちるところで。
「ハァ───…」
深く吸っていた空気を、剣圧によって塵一つない清浄な空気を、ヴォービスは吐き出して。
研ぎ澄ませた魔力を、刃の隅々にまで行き渡らせて。
「“虚ろ咲”」
「“星見盃”」
「“夢断ち”」
「“空殺め”」
滑らかな詠唱をもって、斬撃の威力と速度の天井を軽く突き破り。静かな殺意が空気を伝わり、僕の首を、腕を、心臓をチリリと掠めて。
僕は咄嗟に、斬撃反射の構えを取る。
<逆身仏>───刃の腹を使い相手の攻撃を跳ね返す、ただの剣技。かつて、魔法すらも相手にお返ししてみせたその背中を思い出しながら。
目を閉じた彼女を睨む。
「“神殺し”」
───開眼。
深紅の瞳が、爛々と輝いていて。精神統一を完了させたヴォービスは迷いなく。
反射する構えを取った僕にお構いなしで。
甲高い金属音が、キィィィィン…と鍔から鳴り響いて。一息に、刃を抜刀する。
「斬魔一刀流───<両翅切>」
創始者の名を冠する、十字形の斬撃が───“次元斬”が通り道にあった瓦礫を消滅させる。
空気が霧散する。
魔力が消失する。
その軌跡にある全てを、進行方向にある見えない全てを呑み込んで。
過程を置き去り、“結果だけ”をその場に発生させる。
つまりは。
「ッ、ぐっ───…」
それを認識するよりも速く、僕の身体は切り刻まれた。左腕が宙を舞い、胴体は斜めに両断され、首は身体の接続を絶たれて、更に、心臓がある中心部に穴が開く。
十字架の斬撃だけでは説明のつかない、そういうモノ。
概念の押しつけと言ってもいい、意味不明すぎる先輩の極致の一つ。
んまぁ、知ってた。これを真正面から受けて勝利した、魔法少女狩りの異質さがよくわかる。
この結果は想像するまでもなかった。
今の僕なら首チョンパされようが心臓消えようが、治癒阻害があるだけで活動できないわけじゃないし。どうにか感覚でくっつけて、取り込んだ悪夢を消費して無理修復。
まだ斬撃でピリピリする痛みを無視して、僕は笑う。
今のを浴びてみて、よーくわかった───ヴォービスの剣に、僕では勝てない。
「ふむ、殺し切れませぬか。クフッ、不死身殺しはやはり骨が折れるでござるなぁ!」
「切り刻むだけで勝てる程、悪夢の大王は弱くないよ」
「でしょうな!ですが……どうやら、真贋の差というのはご理解頂けたようで」
「不本意だけどね」
模倣と後継。残念ながら、まぁ、実際はわかりきってた勝敗である。例え模倣が本物になろうとも、本人から直接教えを受け継ぎ、その全てを継承した相手となれば。
技量自体に大した差は無いとしても。
残念なことに、僕の斬撃よりもヴォービスの斬撃の方が強い。鋭く切れ味がよく、下手な斬り合いではどうしても勝ち目がない。できても今みたいなジリ貧な、人外の力に頼って生き残る以外に術がない。
それじゃ僕がツマラナイ。
今までそっちの土俵で戦って、君らのどっちが上なのか確かめる我儘に付き合ってやったんだ。認めるよ、模倣は後一歩届かないって。
だからこそ。
「仕方ないから譲ってあげるよ。でもね」
渡り廊下の瓦礫がガラスドームを突き破り、薬草の嫌な匂いが蔓延する空間に落下する。
重力の流れに従って、落下しながら見つめ合う。
まだまだ終わらぬ剣術勝負。彼女の瞳は、より好戦的な喜悦を帯びて。
その期待に応えてやる。
「今までのはただの剣術勝負。つまりは余興。ここからが本番だよ。斬魔の後継。あいつの意味わかんない技を全て習得した君を、僕の土俵に入れてあげる」
「───切断魔法、付与、“断雲”インストール」
ハイ、魔法使いまーす。




