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顔を替えられたら、宿敵の社長が独占で守る  作者: zhaozhao


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第19話 暗紋が動く

 闇に、際限はない。


 神楽檀は、どれだけ閉じ込められているか分からない。光もなく、音もなく、触覚もない場所では、時間の目盛りが消える。一日と一年に、違いはない。


 唯一「見える」のは、あの身体の目を通して届く、破片みたいな画面だ——厚い磨りガラスの向こうで芝居を見るみたいに、芝居の人間が自分の顔、自分の声、自分の身分で、荒唐な一人芝居を演じている。


 香月潤が拙く筆跡を真似、書類の上で署名を何度も練習するのを見る。


 鏡に向かって話し方を学ぶのを見る——交渉のとき微かに上がる語尾、報告を聞くとき無意識に机を叩くリズム、歩くときの肩背の弧。


 よく似ている。ますます似ている。


 最初の日々、神楽檀は闇の中で叫び、ぶつかり、意志の全部を使って身体の主導権を奪おうとした。だが隔膜は壊れず、毎回の抗いは綿へ拳を打ち込むみたいで、最後は疲れて沈み、外のすべてが壊れ続けるのを見るしかなかった。


 ある日、一事に気づく。


 その日、香月潤は取締役会を試すため、半年かけて論証した研究開発計画を、わざと否決した。神楽檀が衆議を排して立てた案件で、神楽のこれから五年に置いた、いちばん大事な一石だ。


 否決の決議にサインするとき、香月潤の口角には笑みがあった。


 だが筆先が落ちた瞬間、神楽檀はあの隔膜が——一瞬、薄くなったのを感じた。


 ごく短く、無視していいほど短い。だがはっきり感じた。香月潤が「悪」をした瞬間、自分の意志に逆らい、心血を踏みにじった瞬間、閉じ込めている闇が、一筋、緩んだ。


 堅い氷に、髪の毛ほどの裂け目が入ったみたいだ。


 それから、神楽檀は叫ばなくなった。


 観察を始める。


 観察には方法がある。闇の中で、自分に決まりを立てた。毎日三つのことを記す——あの女が何をしたか、「神楽檀」が絶対にしないことはどれか、裂け目はそれで何分、緩んだか。


 一つ目は、起居だ。神楽檀は権を握って六年、七時十五分に出社し、誤差は五分を超えない——自律の演技ではない。父が残した決まりだ。父は生前、言った。当主は誰より先に着き、灯は下の人間のために先に点せ、と。あの女は分からない。自然に起き、九時に執務室へぶらつき、朝の混雑を嘆く。


 二つ目は、サインだ。神楽檀が「檀」の字を書くとき、最後の払いが必ず三ミリ上へ跳ねる。会社を継いだ一年目、父の墓前で立てた誓いだ。収筆が上を向けば字が立ち、会社も立つ。あの女は真似に懸命だが、払いは平たい——その跳ねに何が乗っているか、知らない。


 三つ目は、人心だ。清掃の遠藤さん、息子は来年受験。運転手の大野、腰が悪く、雨の日は休みが要る。研究開発の浜田、娘が先天性の心臓病で、会社の付加医療がずっと底を支えている。この人たちを、神楽檀は六年、目に入れ、心に記してきた。あの女は横を通り、目もくれない——彼女の目には、背景でしかない。


 神楽檀は闇の中で、一つずつ記す。


 香月潤の綻びを全部記す。朝、目覚めた一瞬の目の空洞。重要書類にサインする前、無意識に唇を舐める小さな動作。氷室硯に会うたび、丁寧に保った穏やかな表情の下で、筋が微かに硬くなること。


 隔膜が緩む法則も、より鋭く捉える——香月潤が一度悪をし、「神楽檀」の身分で自分が気にかける人間と事を一度傷つけるたび、裂け目は一分、深くなる。


 香月潤自身は、まったく気づかない。神楽社長を演じる快感に沈み、取り巻きに担がれるのを享受し、恭しい「神楽社長」の一声一声を享受し、しまいには神楽檀の人生そのものまで享受し始める——仰がれ、必要とされ、呼べば応える人生だ。


 神楽檀は闇の中で、冷たく見ている。


 小さいころ、祖母が話した話を思い出す。山の精が人の皮を被れば、その人間になれる。だが皮には記憶がある——旧主が歩いた道、言った言葉、護った人を、皮は覚えている。精が似せれば似せるほど、悪を重ねるほど、皮は家へ帰りたがる。


 当時は、田舎の怪談だと思っていた。


 今は、信じる。


*


 その夜、香月潤は深く眠っている。


 闇の中の神楽檀が、ふと「聴く」。極めて微かな声だ。何キロも先のトンネルの向こうから来るみたいに、途切れ途切れだ。


「姉さん……」


 魂が、いきなり震える。


 湊。


 湊の声だ。耳で聴いたのではない。血の底から、あの身体の心臓のいちばん下から浮いてきた——弟が、自分を呼んでいる。ずっと遠く、松山の鉄条網に囲まれた建物の中で、弟が寝台に縮こまり、何度も自分を呼んでいる。


「湊……」


 闇の中で応える。声は虚無へ散る。


「姉さんはいる。姉さんは、ずっといる。」


 心臓の位置に、鈍い痛みが来る。香月潤のものではない痛みだ——この身体の痛み、血で繋がった痛みだ。


 神楽檀は、ふと分かる。


 この身体は、まだ覚えている。弟を、会社を、アメリカーノに砂糖を入れないことを、交渉卓で一歩も譲ってはいけない瞬間を。皮は旧主を覚えている。古い屋敷の門が、帰る人を覚えるみたいに。


 香月潤は顔を盗め、身分を盗める。だがこの身体に刻まれた、二十六年の人生は、盗めない。


「悪をしろ。」


 闇の中、一字一字言う。声は恐ろしく平静だ。


「一分、悪をすれば、私は一分、近づく。」

「戻る。」

「戻って、この皮を自分の手で剥ぐ。」


 外では、月が紗を通して寝室へ入り、眠っている顔へ落ちる。


 香月潤は夢の中で眉を寄せ、身を返し、何か呟く。


 知らない。自分の心臓の奥で、一対の目が、瞬きもせず、忍耐強く自分を見つめていることを。


 罠に足を踏み入れた獲物を、狩人が見つめるみたいに。


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