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僕の気まぐれな神官さま  作者: もちぴー
第一章 恵与の国編
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十日目_敵襲

 トロールを巣穴から連れ出して一刻半、ついに街の正門まで辿り着いた。さて、ここから先が本番だ。トロールに街を襲わせなければならない。


 前準備としてヴィッケに金を積んでいる。いい加減な男だが、金を渡せば言われたことはキッチリとこなす男だ。そう思っていたのだが……一向に開くことのない正門に、ガスパールは困った顔で頭をかいた。


「あれ? 正門を開けてくれる約束だったんだが……ヴィッケのヤツ忘れてやがるのか?」


「どうします団長。待ちますか?」


「んあ、いい、いい。トロールの馬鹿力があればどうにかなるだろう」


 いつまでも待っていたら朝になってしまう。トロールは日差しに弱いのだ。そうなっては作戦も台無しだ。


 部下たちに指示を出し、梯子を使い正門の上に登らせる。トロールを橋まで誘導したところで、ガスパールも正門の上に登った。


「投擲開始!」


 ガスパールの言葉に従って、部下たちが正門の上から持っていた石をトロールたちに投げつける。それが顔や体に直撃し、トロールの身体に傷をつけた。


 最初は現状を理解していなかったトロールたちが、攻撃されている事に気がつくと、一気に怒りのボルテージが上がっていく。


 一匹一匹が手に持った棍棒を振り回し、正門上のガスパールたちに向かい咆哮を始めた。振動で空気がビリビリと震える。凄まじい迫力だ。


 トロールたちは足踏みを揃えると、そのまま正門に一気に突進してきた。


 ドゴン! と分厚い門が歪む。たった一発で凄まじい威力だ。


「こりゃすげぇな。銃もいいが、やっぱり一番は生物兵器だ。銃は大陸教会の連中が出て来たら面倒だからなあ」


「あー、あの組織、なんなんですか? よく分からないけど、神官の集まりのくせに異様に強い権限持ってるし」


「有体に言えば、でっかい自治組織だよ。世界を守るヒーローってね」


「はは、なんだそれ」


「馬鹿みたいだよねえ」


 雑談をしている間に、トロールの攻撃が門を貫通したらしい。凄まじい音を立てて、扉の残骸が吹き飛んだ。


 耳慣れない音に気が付いたのだろう、暗かった家の明かりがつき、街の人々が様子を見に外に出てきた。


「なんだ!? なんの音だ!」


「トロールの群れが襲ってきた! 死にたくないヤツはさっさと逃げろ!」


 ガスパールの言葉に街人たちが騒めきだす。その間にも止まらない攻撃音に、皆家を捨てて走り出した。


「教えちまって良かったんですか?」


「別にいいよ。むしろ逃げてもらった方がこっちも楽だ」


 ガスパールたちは別に街を滅ぼしたいわけではない。やりたい事は火事場泥棒だ。女を攫おうなんて言う奴も中にはいたが、奴隷売買は足がつきやすい上に見つかった時の罰則が重過ぎる。だから街人なんてさっさと居なくなってくれた方がいい。


 しばらくすれば、街の詰所に待機していた衛兵たちがゾロゾロと走ってきた。


「なにがあった!?」


「トロールの群れだ。門を壊して入ってこようとしてやがる!」


「なんだと!?」


 ガスパールの言葉に、衛兵たちが目を見開く。正門を指差せば、破れた正門からトロールたちが無理矢理身体を捩じ込んでいる姿があった。


「何故森の奥深くに住んでいるトロールが人里に……!?」


「さあな。そんなことより、住民を避難させた方がいいんじゃないかい?」


「その通りだ。おい、直ぐに住民を――」


 順調にことが進みそうだ。そろそろ自分たちも一旦逃げようかとガスパールが思っていたところで、物陰が動き誰かが飛び出してきた。


「そ、そいつらが犯人だ!」


「ヴィッケ、何を言って……」


「俺はずっと見ていたんだ! そいつが何か光る物でトロールを街に誘導していたのを! ベスタウ様に誓ってもいい!」


 どうやら一部始終を見ていたらしい。この男、使えないばかりか邪魔までするとは……これでは計画が台無しだ。


「おやおやヴィッケ、酒の飲み過ぎじゃないのかい? そうじゃないなら、お前の普段の行いも言わなきゃいけなくなっちまう」


「う、うるせえよ! 流石に限度ってもんがある! ここで嘘ついたら、ベスタウ様にキレられちめぇよ!」


 また神様か。この街の人間は本当にうるさい。ガスパールは正直言ってうんざりしていた。神様神様って、自分でものごとを決められないのだろうか。


「第二部隊は住民の避難を優先しろ! 第一部隊は俺と共に来い! この男たちを取り押さえる!」


「なんだい、あんな酔っ払いの言う事を信じるのか?」


「ヴィッケは神ベスタウに誓うと言った。ならば俺たちはそれを信じる」


 向けられた切っ先に少しだけ驚く。あんな酔っ払いに信頼で劣るだなんてとんでもない屈辱だ。


「あーあーいやだいやだ、これだから宗教狂いは面倒でいけない」


 理解できない。理解したくもない。救わない神を信仰するバカどもなんて。


 仕方なしに武器を腰から抜き、剣を向けてきた衛兵に構える。


「神様なんて、どこにもいないんだよ」


 だって本当に神様が居たなら、あの青年(カティ)は死ななかったんだから。

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