碁石オセロ
「碁石でオセロをしよう!」
八神先輩は両面黒の碁石を持って、そう言った。
「俺が黒で、お前が白。ルールはオセロと全く同じで、最後に自分の色の碁石が多かった方の勝ちだ。
じゃあ、俺が先行で始めていくぞ。」
先輩はオセロ盤にオセロの初めの形になるように、碁石を置いた。その後、右上の白の上に、黒の碁石を置き、挟まれた白の碁石をひっくり返した。今の所、黒が三個、白が二個だ。
僕は先輩が置いた碁石の上に白の碁石を置き、黒の碁石をひっくり返す。今は、黒が三個、白が三個だ。
このまま、碁石オセロは進んでいった。僕の碁石の数は先輩の碁石の数に追いつくことはなく、僕はずっと劣勢のままだった。
「角取った!」
さらにあろうことか、先輩に角を取られてしまった。
「二個目の角ゲット!さらに、上と斜めの白を大量ひっくり返し~。」
先輩はオセロが強いようだ。先輩はクルリクルリとテンポよく白の碁石をひっくり返す。僕は頭を抱えて、次の手を考える。僕はここだと思って白の碁石を置く。
「置いちまったな。後悔するぜ。」
それから、僕が二手打つと、角を取られる所に白の碁石を置かなくてはならなかった。
「角三つ目、淡島、オセロ弱いなあ。」
そのまま、先輩のペースにのまれたまま、四つ目の角も取られてしまった。そして、最後の一手となってしまった。その最後の一手を打っても、黒の碁石をひっくり返すことはできなかった。僕は諦めて、白の碁石を残ったマスに置く。
「……先輩、おかしいですよ。
なんで先輩は、角を四つも取れているんですか?」
「それはお前が弱いからだろ。」
「それに、二個目の角を取った時、斜めの白の碁石をひっくり返せているんですか?」
「だから、それはお前が弱いからだろう。」
「じゃあ、なんで、僕の最後の手で、一つも碁石がひっくり返らないんですか?」
「もう、認めろよ。淡島、お前は負けたんだよ。」
「いや、碁石オセロは、勝敗は生まれないはずです。偶数個のマスに、二人で交互に碁石を置くんです。なら、絶対に引き分けになるはずなんです。さらに、オセロのルールに従って、碁石を置けば、どんな置き方をしても、角は、白と黒が二つずつ取れるはずなんです。
つまり、この盤面はおかしいです。」
「……おかしいか。ハハハ、そうだな。おかしいな。
でも、どれだろうな。おかしいのは?
この盤面か?この碁石か?それとも、お前だったりしてな。ハハハ。
混乱しているお前に、一つ言葉をあげよう。
私は間違っているが、世界はもっと間違っている。」
「先輩……、今頃、ナチズムは流行りませんよ。」
「ハハハハハ、そうだな。この国は民主主義だったか。血も脂も火薬の匂いもしないもんなあ。
まあ、お前の言うことは間違っちゃいない。でもな、結果はお前の思い描いたものではない。そんなことは、よくあるもんだ。
まあ、深く考えない方がいい。お前は、のほほんと生きていればいいさ。お前にこの世界は難しすぎるんだ。」
そうだ、オセロのように、表裏が黒と白の世界じゃないんだ。碁石のように、表裏なんて分からないのがこの世界なんだ。




