X11_Sibling
第四十三話「Sibling」。サブタイトルは「人生の岐路に立ち」。
カッカーの屋敷で呼ばれているのは、管理人としてすっかり馴染んでしまった元探索者のギアノ・グリアド。
突然訪れた客は王都からやって来た騎士の男で、ヘイリー・ダングと名乗った。
妹から預かったという手紙と大切な物を見せられるが、ギアノは心当たりがなく戸惑っている。
深刻な様子のヘイリーと向き合い、言葉を交わすうちに、管理人はある可能性に気付き、大きな事件の真相を追って走り回る。
〇 ヘイリー・ダング
王都デルシュレーからやって来た騎士団所属の青年。
迷宮調査団の一員であったチェニー・ダングの実兄であり、名前だけは既にちらりと出て来てはいた。
初登場時の年齢はニ十歳。身長は百八十三センチ、髪は黒、瞳は鳶色の好青年。
騎士団所属時の印象についてはレテウスが語っており、「髪は短く刈り揃え、明朗快活で周囲から慕われている」。
だがギアノの前に現れたのは暗い瞳に怒りの炎を灯した迫力のある人物で、これはどうしようもない理由があってのこと。
縁談はあったが破れ、独身。妹と顔は似ておらず、この話ではわからないが剣の腕は良く、かなり強い。
― 迷宮都市豆知識 ―
□ヘイリー・ダングの来訪
屋敷の利用者モーリに呼ばれて、ギアノは客を迎え入れる。
やって来た男はヘイリー・ダング。王都からやって来た騎士であり、妹からの手紙を預かってきたとギアノに手渡す。
チェニーの名に心当たりはなく、ギアノは困惑し、手紙を読んでも謎は深まるばかり。
手紙を渡しただけではなにも解決しないとわかって、ヘイリーは妹の死をギアノに告げる。
□ギアノに手紙を書いた理由
チェニーがギアノに手紙を書いたのは、21話でレテウスを訪ねにやって来たところを見かけていた為。
デルフィたちと同じ部屋に逗留していた男だと気付いたチェニーは慌てて身を隠したが、王都に戻された後に自分にできることをしなければと考え、ギアノを思い出し、手紙を認めた。
チェニーにとってギアノはベリオと関係を持たなければならなくなった原因にあたる人物ではあるが、人当たりの良さ、デルフィと親し気に話す姿も目にしていた為、託せるのではと考えている。
□名探偵ギアノ
ギアノはチェニーの姿を見ていない為確信はないが、デルフィと自分に連なる人物の少なさから推理を進めていく。
X8話でマティルデから告げられた「ヌー」についても既にカヌートと結び付けており、「橙」から戻らなかった五人組になにか起きたのではと考えていく。
この話のサブタイトルは当初、「名探偵ギアノと助手アデルミラ」にしようと考えていた。急にこんなタイトルではあんまりかなという理由で却下し、かっこつけたものに変わっている。
□背の高い神官
仕事に戻ったギアノはアデルミラに質問を投げかける。
偽名を使う神官などいるだろうかという問いから話が発展し、アデルミラたちが出会った背の高い雲の神官について知らされる。
後日雲の神殿を訪ねた際、そんな外見の者はいないと告げられたことまで聞いて、ギアノはまた推理を深めて、新たに話を聞ける人物を思いつき、出かけることに。
□聞き込み調査
自分とチェニーの接点について考えたギアノはレテウスを訪ね、女性の調査団員について聞く。
レテウスはダング兄妹をどちらも知っており、有用な話を聞かせてくれる。
噂に出てきた剣についても話題に出て来たし、ウィルフレドとの仕事についてもわかった。
その後託された腕輪についてキーレイに聞きに行ったギアノは、「絆の証」の名称と、手に入れられる場所について知り、バルジとダンティンが死んだのではないかと考える。
□バリーゼにも聞ける
バルディの店で働いていた時の縁で、ギアノは薬草業者バリーゼとも面識がある。
そう密な付き合いがあったわけではないが、ギアノが訪ねればバリーゼは快く話を聞かせてくれただろう。
□新しい仕事
バルジたち五人組がどうなったのか思い悩むギアノを、アデルミラは心配し、休むように勧める。
なんだかんだと働こうとするギアノに対し、アデルミラは「新たな仕事」として自分を見守るように頼んだ。
ヘイリーから聞かされた話についてだけではなく、ギアノは兄と甥の訪問以来悩んでおり、神官はそれを見抜いて心を寄せている。
□ギアノと家族
アデルミラに問われ、ギアノは家族との関係について話していく。
故郷での暮らし、実家を出た経緯、兄であるジッドゥとの再会や、シュヴァルからの言われた言葉など。
働くのは苦ではないし、故郷や家族を愛している。けれどなにかが心に引っかかって、すっきりとしない。
答えを出せないギアノに、アデルミラは静かに寄り添い、言葉をかけていく。
雲の神官は管理人に休息の大切さを説き、自分の為に生きて良いと伝えようと試みている。
□ひとりぼっちのマティルデ
「ヌー」の話をマージに聞けないか考えたギアノは、マティルデが顔を見せていないことに気付く。
貸家にはマティルデが一人きり、マージたちが帰ってこなくなったと訴えられて、解決策を考えることに。
買い物を済ませる為にマティルデに食事をさせ、市場に走って配達を頼みと、ギアノの面倒見の良さが炸裂していく。
マティルデはギアノに連れられカッカーの屋敷にやって来て、アデルミラの部屋で世話になることが決まった。
□夕暮れ時のごたごた
屋敷の住人の帰宅ラッシュ、ティーオとの店についての話し合いなどの最も忙しい時間にヘイリーが現れる。
マティルデのことはアデルミラに任せ、肉の買取はティーオに頼み、ギアノは騎士と向かいあい、話を聞く。
レテウスから聞いた情報を伝え、気障な男の訪問について伝えられ。
バタバタとした時間をなんとか乗り越えたところでゾースが現れ、マージからの伝言が伝えられる。
「本当は俺も少し困っている」と珍しく正直に打ち明けるもごめんで流され、さすがのギアノもキャパオーバー寸前だ。
□爆弾発言
マティルデを泊めてもらう為に寝床を移し、兄妹に手を差し伸べた謎の神官の話をした後、アダルツォは妹を嫁にもらってくれないかとギアノに頼む。
アダルツォは素直に妹の幸せを願っていると話し、ギアノに対する信頼の深さを語る。
驚き戸惑うギアノにアダルツォは謝り、自分が勝手に言っているだけと説明するが、実際にはかなり真剣に考えてほしいと願っている。
X8話でギアノの恋人なのかとマティルデに問い、はっきりと「違う」と答えられたことも大きく影響している。
ここでマティルデが頬を染めたり、くねくねしていたら、アダルツォも察してこんな風に言わなかったはず。
□貸家の三人組
翌朝、アデルミラを意識してしまい、ギアノは自らティーオの店に配達に行く。
ちょうど来店していたレテウスたちと遭遇し、チェニーの持っていた剣について問い、間違いなくバルジのものだと確信することに。
その後貸家に寄ることになり、ギアノはクリュと家族の関係について知る。
家族には頼れない、家には二度と戻らないと話すクリュを慰め、ギアノは結局昼食作りを一人で引き受けることになった。
□立ち直る為に
貸家から戻ったギアノは、アデルミラからマティルデに関する提案を受ける。
男性への恐怖心を克服する為に雲の神殿に頼ってはどうかというもので、ギアノは良い案だと考え、マティルデを説得する。
さぼり癖のあるマティルデはなかなか前向きにならず、ギアノにしては珍しく厳しい言葉を並べているが、直前にクリュの話を聞いていたのが大きな理由だ。
特別な理由がないのなら、故郷に戻った方が良い。ギアノはマティルデを心から案じて説得をしているが、マティルデは迷宮都市に留まりたい思いを優先し、神殿に頼ると決めている。
□子育て名人ギアノ
アデルミラたちが出かけて、ギアノは一人でリーチェたちの為のおやつを作っている。
そんな中、兄姉たちの子供が生まれたのか考え、子育てから解放された現状に驚いている。
まだ十歳にもならない頃から、ギアノは甥姪の世話に明け暮れていた。
頼まれた仕事をしながらでもよく面倒を見、遊んでやっていた為、あんな態度をとっていたブラウジでさえも本当はギアノが好きでたまらなかったりする。
□連日押し掛けるヘイリー
迷宮調査団で妹について話を聞き、ヘイリーは落ち込んだ様子でギアノを訪ねてくる。
チェニーの評判は芳しくなく、真相についてなにひとつわからない状況に苦しみ、デルフィ宛ての手紙を開けたいと頼みにやって来た。
ヘイリーの剣幕に押されて、ギアノはデルフィ宛ての手紙を開封するが、中には理解不能な文言が並んでおり、二人は愕然としてしまう。
それでもギアノはなんとかヘイリーを慰め、自分に出来ることをすると約束した。
□心を鎮めるには
登場時から一貫しているが、ギアノは悩みがある時には家事に集中して心を落ち着けている。
慣れていることをやっていた方が気が休まると考えていたが、ヘイリーの訪問後、その理由に気付かされることになった。
心を鎮めた後に、ギアノは自分を理解し、寄り添ってくれている存在にも気付く。
アデルミラの優しさに支えられていると感じたギアノは、二人で夕食をとり、感謝を伝えている。
□俺のこと好きになってきたか
ギアノのこの口癖も、アデルミラには見抜かれている。
リーチェに懐かれていることから発展した「好き」の定義に、ギアノは何故か驚き、衝撃を受けている。
ちなみにこの口癖は男性にのみ発せられるもので、女性相手には言わない。
これはギアノが恋愛感情を自分とは無縁のものにしようとしていた心の現れで、故郷で仕事の檻に封じられている間に形成されたもの。
好きになった女の子が誰かしらの妻になっていく様子を見続けてきた末に、ギアノは既に諦めの境地に至っていた。
□優しいあなたが好きなんです
「好き」の意味を「便利」に置き換えていたギアノに、アデルミラはそうではないのだと真実を告げる。
ギアノは優しく、信頼出来る、他人の為に力を尽くす素晴らしい人で、誰もがあなたのことが好きだと断言してしまう。
□決定的な証言
忙しい一日の終わりに、ニーロにも話を聞きたいと考え、ギアノは魔術師のもとへ向かう。
ニーロはチェニーと最近会ったことを話し、剣の行方についても教えてくれる。
決定的な情報だと喜んだギアノだったが、ニーロの口からは更なる情報が飛び出してきて、二人はいくつかの真相へとたどり着いていた。
バルジと名乗っていた戦士の本当の名前と、背の高い雲の神官の正体と。
更にデルフィの幼馴染である邪悪な男の存在を告げられ、ヘイリーには黙っておくよう口止めをされてしまう。
ニーロはジマシュ・カレートに近付いてはならないとギアノに警告し、調査をするなら慎重に進めるよう注意をしている。
□解けた呪縛
ニーロの話を聞いて戻ったギアノを、アデルミラは起きて待っていてくれた。
神官は自分が余計なことを言ったと話し、管理人の青年はそこでようやく、大きな気付きを得る。
自分の人生を必要以上に縛る必要はなく、自分の選択で人生を歩んで良いのだと理解し、ギアノはアデルミラの手を取り祈った。
□Sibling
この話のタイトルは「Sibling」で、これは「きょうだい」を意味する言葉。
兄、姉、弟、妹問わずあらゆる「きょうだい」を指す単語であり、サブタイトルとはまったく関係ない。




