31_Rapid Growth 〈世界を塗り替えていく〉
第四十二話「Rapid Growth」。サブタイトルは「世界を塗り替えていく」。
「緑」の迷宮入口から話は始まる。
緊張する魔術師を含めた五人組は探索の為に出掛け、それを薬草業者の男が見つめていた。
脱出の魔術を覚えたばかりの魔術師はコルフ、彼の組む五人組を見つめているのはミッシュ商会で働くオーリーに身を窶したデルフィ・カージンだ。
ジマシュから身を隠しつつ、ベリオたちの行方を追いたい。
そう考えた鍛冶の神官は偶然出会った少年を助け、共にミッシュ商会に入り込み、働きながら暮らしている。
デルフィを陰ながら支えていたメハルはそんな日々の中、世界の新たな姿を知り、成長を果たしていく。
― 迷宮都市豆知識 ―
□脱出を覚えたコルフ
コルフは通う塾を変え、グラジラム・ポラーを新たな師に選び、無事脱出の魔術を覚えたようだ。
この日は仲間たちと共に「緑」で探索をし、魔術の力で戻ると決めている。
コルフが組むパーティにはアダルツォとフェリクスがいて、デルフィは見覚えのある探索者の姿に気付いていた。
□阿呆のオーリー
デルフィはメハルと共に暮らし協力してもらっているが、本名や自身に起きた過去の詳細は語っていない。
くだらないことばかり言うおバカキャラを演じているお陰で誰にも気づかれずに済んでいるが、このキャラクターのせいで出来ないこともいくつかある。
人探しはその最たるもので、神官とは無関係、子供らしい外見のメハルの方が明らかに向いているだろう。
□小さいのは体だけ
メハルは小柄で、年齢よりも幼く見える。
両親を早くに亡くし、親戚の家をたらいまわしにされて、まともな食事もとれないまま育ったからだ。
ルーレイ兄妹は体が小さく童顔な為若く見られるが、メハルは栄養不足なせいで小さい。
苦労して育った為世間を見る目は冷めており、過剰な期待はしない、諦めの精神が既に備わっている。
一方で義理堅い面もあって、自分を救ってくれたオーリーの恩に報いたい気持ちはかなり大きい。
□ティーオの良品へ
ミンゲに頼まれ、おつかいのついでにメハルはティーオの良品へと向かう。
閉店寸前の店に残っているのは革製品と保存食が四種類だけ。
ティーオの店はかなり繁盛しているが、客層の偏りが悩みになっているようだ。
なのでティーオはメハルの来店を喜び、ちょっとだけサービスしてくれる。
□シュナ
薬草の加工作業を頼まれ、メハルはシュナという少女に絡まれる。
シュナは働き始めて一年が過ぎたところだが、散財癖と面倒くさい性格のせいでいろいろとうまくいっていない。
年下のメハルが採集係に選ばれ、自分よりも多く給料をもらっていると聞きつけて、この日は難癖をつけにきた。
寮で暮らす少女たちはスパイシーな話題で盛り上がることが多く、自分が明らかに出遅れていると感じ、焦りが募った結果、こんな絡み方をしてしまっている。
□屋敷と神殿
魔術師街へおつかいを頼まれたメハルは道に迷い、偶然コルフたちの五人組を見かけることになる。
五人は樹木の神殿の隣の屋敷に入っていき、立ち止まったところでキーレイに声を掛けられ、神官長との出会いを果たした。
□新しい視点
深い層へ貴重な草を採りに行く計画があり、メハルはルンゲに挑戦してみないか誘われる。
メハルは驚き、ルンゲやファッソが自分に告げた言葉の意味について深く考えていく。
幼い日々に受けた否定的な冷たい言葉の数々と現状とを冷静に比較し、人生に変化が訪れているのだと理解をする。
心に深く根を張っていた空虚なものが解かれ、少年は初めて空高いところを見つめていた。
□僕は泣いてはならないのです
深い層への挑戦が出来るかどうか問うメハルに、デルフィは心のうちを少しだけ明かしている。
少年の力を認め、素晴らしいと思いながらも、迷宮歩きとは切り離せない危険について語り、涙をこぼす。
メハルはオーリーの抱えた哀しみの大きさを感じ取り、少し浮かれていた分、強く心を震わせることになってしまう。
□休みと事件
涙を止められなかったメハルは大人たちに心配され、一日の休みを与えられる。
オーリーを慰め、励ましたいと考えたメハルはティーオの良品に向かい、菓子を買って楽しい時間を持つが、店に戻って手伝いをしている間にシュナに乾燥果実を奪われてしまう。
世間には自分が知らなかった善意や親切が溢れているが、場所が変わったからといって嫉妬や憎しみがなくなることはない。
理不尽な目にあったメハルは心を冷やして自分を諫めていたが、周囲の大人たちの反応や意見を受けて、どう受け止めるべきかより深く考えを巡らせていく。
□果実のかけら
乾燥果実をシュナに食べられてしまったが故に、メハルは夜明かしの最中にルンゲに試食用のかけらを渡す。
二つしかなかったかけらはミンゲとオーリーに渡す為に半分に割られ、オーリーはそれを口にして呆然とした様子を見せる。
それはベリオと一緒に食べた思い出の味で、驚きと悲しみのあまり阿呆の仮面が外れそうになっていた。
ギアノが無事でいて、ベリオとの約束も覚えていてくれた。
果実のかけらはデルフィにそう気付かせ、ほのかな希望を与えている。
ルンゲの頼みを快く聞き入れ、オーリーを元気づけたいと考えたメハルの行動がこの偶然を呼び寄せたといっていいだろう。
□メハルの精神
デルフィの協力者になる少年に名付けた「メハル」は、「助け合う仲間」を意味するアイルランドの言葉。
単に助けるだけではなく、「自分の役割を果たすことで他人の力になる」ような意味合いを持っている。
デルフィはメハルに手を差し伸べ、メハルは成長してデルフィの力になっていく。
メハルはタイトル通りに急成長しており、初登場の22話よりも落ち着いた様子を見せている。




