30_Imprinting 〈強者には、強者の流儀で〉
第四十一話「Imprinting」。サブタイトルは「強者には、強者の流儀で」。
調査の為に出掛けようとしていたニーロのもとに訪問者が訪れる。
遠い西の果てからやって来た、夜の神に仕える美しい神官の姿をしているが、無彩の魔術師は別人であると瞬時に見抜いた。
濃密な魔術の気配を漂わせるその人物は「ロウラン」と名乗り、ラフィ・ルーザ・サロに溺れるウィルフレドを連れ帰るよう要請してくる。
夜の神官の中にはもう一人、別の人物の魂が宿っているのだという。
〇 ロウラン
夜の神に仕える神官ラフィ・ルーザ・サロの中に潜んでいた魔術師。
見た目はラフィとまったく同じだが、男性であり、話し方や雰囲気は大きく異なる。
出身は遥か西方、美食の都と呼ばれたシャルディア。ラフィの生まれたハーマールの隣国の首都だが、既に滅びていて今では別の名の街になっている。
ロウランは底知れぬ魔力と魔術の腕を持ち、ラディケンヴィルスの抱く迷宮に強い興味を抱いたようだ。
正体不明の魔術師はウィルフレドたちと「白」の探索に出かけ、実力を示していく。
〇 ノーアン・パルト
ニーロが迎えた新たなスカウト。二人の戦士、神官と組んだ四人組のうちの一人で、ポンパ・オーエンと協力しながら探索をしている。
登場時の年齢は二十三歳で、探索者になって五年目。髪の色は茶色、鳶色の瞳をした細身の青年。
人当たりが良く明るい印象で、腕が良く良識的な性格をしている。
ニーロに声をかけられて初踏破を目指す探索に挑むことになった。
― 迷宮都市豆知識 ―
□もうひとつの魂
調査に出かけようとしていたニーロを止めたのは、夜の神官と同じ形をした誰か。
ラフィの登場時からニーロは魔術師の気配を感じ取っており、とうとう対面を果たしたことになる。
魔術師は自身の名を忘れたと話しているが、これは嘘。
彼の名はロウゼン・ランザーロ。古い時代を生き、時を超えて迷宮都市に現れた魂であり、この物語における唯一の「チート」キャラクターである。
□お財布事情
ウィルフレドはラフィに誘われるまま、南にある宿で過ごしていた。
北にある安宿とはまるで正反対の高級店であり、大部屋、個室が揃っており、立派なベッドと風呂のようなものが揃えられている。
戦士は既に一流の探索者として知られてはいるがそこまでの蓄えはなくて、財布は空になる寸前のようだ。
□顔合わせ
ニーロが「白」の最下層を目指すと決めたのは、ソー兄弟の残した地図からヒントが得た上、新たなスカウトとの出会いがあったから。
28話でポンパが襲撃され、仲間たちは魔術師の匿ってほしいという願いを断っているが、二人ずつに分かれて売家で暮らしているとわかって、ニーロは後日改めてノーアンを訪ね、声をかけている。
□広まる噂
腕の良い探索者は噂の的になりやすく、ウィルフレドと美女の話もあっという間に広まっている。
美男美女が高級宿に二人きりで連泊しているとなれば、商人たちも黙ってはいられないのだろう。
キーレイのもとにはウィルフレドの話が山のように持ち込まれ、しばらく業務の邪魔になったほど。
□懊悩するウィルフレド
すべての過去を捨て、戦いの中に身を投じて果ててやろうと考えていた様子のウィルフレド。
だがここに来て、新たな悩みに囚われているようだ。
最も心にひっかかっているのはシュヴァルについてで、誰にどう知らせるべきか考えを巡らせている。
□ラフィの過去
街中の廃屋でラフィと再会し、ウィルフレドは神官の秘密を打ち明けられている。
体の中にもう一人の魂が宿っていること、複雑な過去があり、命を失ったことなど。
既にニーロに会いに行っているという話はすんなりと受け入れられないもので、戦士は困惑してしまう。
□魔術師との邂逅
結局南の宿に戻ったウィルフレドだったが、目が覚めた時、隣にいたのは魔術師だった。
ラフィの言葉を受けて敵視するも、魔術師の言葉は意味深で、神官への思いは揺らいでいく。
この揺らぎは瞬時に見抜かれ、ラフィは姿を消してしまい、戦士は一人で取り残されることに。
□探索の準備
一文無しになってしまったウィルフレドが家に戻ると、上機嫌な様子の魔術師が現れ、ロウランと名乗る。
ラフィではなくなってしまったものの、体は同一であるのは間違いなく、ウィルフレドは共に食事に出かけ、探索の準備を進めていく。
ロウランは様々な話を戦士に聞かせるが、ラフィと共通しているのは神官に起きた悲劇的な過去の出来事についてだけ。
ウィルフレドはなにをどう信じたらいいかわからないと感じているものの、魔術師の言葉はじっとりと記憶に沁み込み、戦士の中に根を張っていく。
美しい神官との逢瀬の時間は甘美なばかりで「都合が良すぎる」。
戦士もそう感じていたからこそ、根は長く伸び、しっかりと張り巡らされていくことになった。
□六人組
結局神官が戻ることはなく、ウィルフレドたちは六人で「白」へと向かう。
ニーロ以外の三人には予告なしの飛び入り参加であり、驚かれるものの、拒否する者もいなかった。
こんな上級探索者らしい経緯で探索が始まり、ノーアンの先導で迷宮歩きが始まる。
ロウランは初めての探索をエンジョイしており、仲間たちにも親しげに話しかけ、特にニーロと会話を弾ませているようだ。
□それぞれの反応
ノーアンは参加した全員と初めての探索であり、そういうものかとすべて受け入れているが、キーレイとマリートは戸惑いを隠せない。
キーレイは夜の神官に起きた異変に驚き、マリートは戦士の醜聞について言及し、怒ったような顔を見せている。
マリートはウィルフレドを立派でデキる男だと思っているので、妙な魔術師がやって来て意外だしガッカリだしなんか怖いし、混乱しつつもイライラが少し上回る状態になっていた。
□道中のおしゃべり
後列で並ぶニーロとロウランは、魔術や迷宮に関する話で盛り上がっている。
ロウランは歩くだけで迷宮に関する様々なことに気付き、知識を深めているようだ。
一方、ウィルフレド相手には下世話な軽口を叩き、キーレイには新たな可能性について話している。
集中するよう注意されるが、ロウランはどこまでも余裕で、初の魔法生物との戦いで力を示した。
□三十層目
六人での探索は順調に進み、一行は三十層目へ辿り着く。
初めて足を踏み入れたところでは、地図の作成をしながら進まなければならない。
「白」は上下の移動が多く必要なところで、回復の泉を探し当てるにも時間がかかるだろう。
ウィルフレドたちは慎重に進み始めたが、すぐに新たな敵との遭遇があり、予想外のアクシデントに見舞われる。
□迷宮移動
鎧型の敵との戦いの後、ウィルフレドはキーレイ、ロウランと共に異様な現象に巻き込まれる。
気が付いた時には「青」の迷宮らしきところに居て、三人は急いで脱出をする。
この謎の現象はロウランの言う通りで攻撃ではなく、「迷宮渡り」の移動に巻き込まれた為。
違う迷宮の違う層へ移動してしまう為、巻き込まれたら現在地を把握することはほぼ出来ない。
ダメージはないがとても危険な現象であり、迷宮で起きる不可解はこの魔法生物の仕業であることが多い。
□三人の反省会
思わぬ形で探索は終了し、次の日、ウィルフレドはキーレイの家を訪れる。
神官長の部屋にはマリートもいて、三人は「白」の探索について話し合っていく。
話題の中心は魔術師ロウランであり、キーレイも二つの魂の同居について思うところがあるようだ。
思いがけずマリートの本名を知って、自身の呼ばれ方についてウィルフレドは考えを巡らせている。
□最後の仕込み
家に戻るとニーロとロウランがいて、ウィルフレドはラフィの行方について魔術師に尋ねる。
ロウランは思わせぶりな言葉を口にし、戦士の心を翻弄していく。
夜になるとラフィの声が聞こえて来て、ウィルフレドは迷いの末に神官を拒否した。
深く繋がったはずの心は離れ、戦士は夜の神官の消失を感じている。
□ウィルフレドになにをしたのですか
ウィルフレドとの間に流れる不穏に気付き、ニーロはロウランに問いかける。
ロウランの返答からすると、夜の神官は決して消え去ったわけではないようだ。
□秘術について
ロウランはニーロを連れてホーカ・ヒーカムの屋敷へ赴き、迷宮内で話していた「移動の魔術」を試し、見事に成功してみせた。
自身の力を示し同居を取り付けたロウランに、ニーロは再び問いを投げかけている。
他人の命を支配することは可能なのか。
ロウランは自分を見ればわかることだと、あっさりと認めている。
ニーロはかつての仲間であるピエルナの辿った運命について、詳細に知りたいと願っている。
底知れぬロウランの力を警戒しつつも、大きな学びがあると信じて、受け入れると決めたようだ。




