32_Sense of Justice 〈猟犬と調教師〉
第四十四話「Sense of Justice」。サブタイトルは「猟犬と調教師」。
ひとつ前のエピソードで登場したヘイリー・ダングが、妹になにが起きたのか真相を探す為に迷宮調査団入りし、街で暮らし始める様子が描かれる。
居座るように調査団に入ると言い張り、団長に受け入れられて、ヘイリーの調査団員としての日々が始まった。
既にいくつかの気懸りに気付いているヘイリーは、偶然出会った探索者から聞かされた情報をもとに、貸家街へと向かう。
〇 ガラン・ディッチ
迷宮調査団で下働きをしている青年。本編では未出だが、苗字はディッチ。
働き口を探しにラディケンヴィルスにやって来て、調査団での仕事に辿り着いている。
気真面目なガランにとって調査団は良い職場であり、金払いの良さもあって気に入っているようだ。
初登場は実は「21_Self‐Reliance」で、まともに働けないチェニーの補佐をしている。
このエピソード時の年齢は二十四歳。髪の色はこげ茶、瞳は茶色とありふれた組み合わせ。
慎重は百七十一センチとやや小柄で、武道などの心得はない。
この時点では判明しないが、記憶力が良く、情報をまとめるのがかなり得意。
さほど裕福な家の出ではないが、祖父が神官だったりした影響もあり、読み書き計算はしっかりできる。
やや怖がりだが信仰心が強く、面倒見はかなり良い方。
― 迷宮都市豆知識 ―
□ざっくりとした組織
迷宮都市に必要な機関でなくすわけにはいかないけれど、積極的に活動しているわけでもない。
治安に関しては商人たち独自のルールが先行しており、今更勝手な真似はできない。
そんな事情を抱えた迷宮調査団は非常にざっくりとした組織になっており、人員補充も仕方もざっくり。
素性の知れない人間を抱えるわけにはいかないので王都から人を送ってもらうが、うまく活用できているわけでもない。
ヘイリーの立ち位置は確かに調査団行きにぴったりの状態で、騎士団に戻っていても派遣されていたかもしれない。
□よろず相談受付
迷宮都市の住人は調査団に期待などしていないので、迷宮で起きたこと以外は滅多に持ち込まれない。
だがこの日、元仲間との揉め事を解決できずにやって来た女がいて、ヘイリーが相談に乗る。
やって来たのはユレーであり、どうしても助けてやりたかった怪我人はもちろんヌエルだ。
□善行集団の最期
ティーオも仲間に入りかけた「善なる集団」はこの日解散する。
ユレーの扱いは最低最悪で、X5話で新たに入った女性探索者にも同じようにしようとした結果、あっという間に逃げられたそうな。
□放っておけない
ヘイリーはこれまでにいなかったタイプの団員で、街に不慣れなままでも構わずに飛び出そうとし、ガランは見かねて最後まで同行してやっている。
妹の死から始まった様々な出来事に打ちのめされ、暗い顔をしているのに、人を救う為に全力を尽くす。
ガランの目に映るヘイリーの印象はこんな風で、ユレーが救われたことにもほっとした様子を見せている。
□迷宮へ
調査団の一員になったのだからという理由で、ヘイリーは迷宮に足を踏み入れてみようと考える。
ガランは難しいことだといくつか注意をするが、ギアノに相談をし、フェリクスたちを紹介され、その日のうちに「橙」へ向かうことに。
□「橙」歩き
フェリクスたちと共に「橙」の迷宮を歩きながら、ヘイリーは妹のことを思い出している。
ヘイリーとチェニーは二歳差の兄妹で、一緒に剣に見立てた棒を振り回して遊び、共に騎士になろうと誓った。
迷宮歩き中に物思いに耽ると注意を受けるし、些細な言葉使いのせいでフォールードと衝突してしまい、ヘイリーは五人組に妹の死について明かす。
こんな経緯からフェリクスも近しい経験をしたとわかり、ほのかな縁が生まれることに。
□一家離散
騎士団に戻ってはどうかとガランに言われて、ヘイリーは家族に起きたことをすべて語って聞かせている。
醜聞が広く知れ渡った結果、両親は田舎に引っ込み、ヘイリーの縁談も潰れてなくなった。
チェニーが自ら死を選んだのは、噂が真実だったから。
周囲にはそう捉えられており、実はヘイリーの両親も娘を信じ切れず、王都を去ると決めている。
□ガランのチェニー・ダング評
ヘイリーの人となりを少し理解したガランは、改めてチェニーについてどう思っていたか問われ、王都で流れた噂について話す。
醜聞や適当なうわさ話は迷宮都市でこそ流れるものであり、王都でだけ流れるのはおかしい。
女性としての魅力が乏しかったと語るのは心苦しいものだったが、ここでガランが口にした話はどれも重要極まりない情報で、ヘイリーは「気障な金髪の男」を探すべきだと考えている。
□嫌な新情報
ヘイリーはキーレイを訪ねようと決め、先にギアノのもとに向かう。
ギアノはニーロにいろいろと聞いているものの、ヘイリーには話さないように言われており、珍しく態度が固い。
ほんの僅かな違和感に気付いたヘイリーは、一か八かで管理人に強く当たり、なにか隠しているのではないかと迫る。
この場面では、手札を多く持っていたギアノがうまく振舞い、核心には触れずに終わる。
とはいえ、チェニーがなにをして、なにを苦にしていたか想起させる情報はヘイリーに大きなダメージを与え、新入りの調査団員を激しく打ちのめしてしまう。
□デルフィの相棒
管理人の部屋から揉める声が聞こえて、フェリクスとアダルツォが様子を見にやって来る。
ヘイリーがした話にはインパクトがあり、そんな事情を抱えた調査官を二人は心配し、落ち着くように食堂へ招いた。
真実を求めて「波打った金髪の男」について尋ねると、フェリクスの顔色が変わり、ジマシュの名前が告げられてしまう。
ギアノは一生懸命隠したのに、そんな事情を知らないフェリクスはデルフィについても知っていると話した上、二人が暮らしていた貸家まで案内してしまう。
□慌てるジュスタン
貸家には誰もおらず、ヘイリーは気落ちしながら調査団へ向かって歩いている。
その途中で声をかけてきたのは、ジュスタン・ノープ。チェニーの実兄であるヘイリーがジマシュの貸家に現れたという異常事態に気付いて、慌てて様子を窺う為に声をかけた。
チェニーに兄がいること、迷宮都市にやって来たことは既に掴んでおり、制服姿で歩き回るようになった為、調査団入りもしっかりと察している。
何故貸家を訪れたのか少しでも探ろうと考えて接触したが、気分を悪くしたヘイリーはろくに答えずに足早に去っていってしまい、結果的にジュスタンをかなり焦らせることになった。
□ガランの気遣い
不機嫌な顔で戻って来たヘイリーを、ガランが出迎えてくれる。
ガランはヘイリーを気遣い、カッカーに会ってみてはどうか提案し、辛い思いをしながらも正義の為に働く姿を褒める。
まだ自分がどう振舞うべきか決め切れていないヘイリーだが、ガランの言葉を前向きに受け止め、気持ちを整えていく。
□キーレイとの面会
次の日、ヘイリーはようやくキーレイと面会し、カッカーと話したい旨も伝える。
ヘイリーは迷宮都市の抱える問題点について話し、神官たちもまた悩みの中にあると知った。
キーレイはちょうどやって来たウィルフレドをヘイリーに紹介し、調査団員は戦士の姿を目の当たりにし、ブルノー・ルディスではないかと考える。
ウィルフレドはチェニーと会った時のことを話してくれているが、ブルノー疑惑に囚われ、少し気が散った状態のまま話を聞いている。
□尾行
西へ向かうヘイリーを、二人の男が尾行していた。
一人はジマシュの手下、ヌエルに指示を出していたジュスタンであり、部下の監視中。
もう一人はヘイリーを直接付け回す役回りのヘリスで、ジマシュの手下たちのやり口が少しだけわかる。
普段から必要な情報を得る為、二重、三重に人員を配置して尾行をしているが、彼らのコンセプトは「絶対にバレない」というもの。
失敗があった時には誰かがカバーに回れるよう常に傍に誰かを控えさせているが、今回はそれが仇になり、ジュスタンはロウランの術中にはまってしまうことに。
□ロウランの放った「毒」
ここでロウランがジュスタンを惑わせたのは、ニーロが抱えている事情に気が付いた為。
ニーロは時々カッカーかキーレイに頼まれ、仕事に向かう。
それ以外にも「調査」に時間を使っており、ロウランはなにを調べまわっているのか探って、ジマシュの存在に気付いている。
ニーロが自由になればもっと探索に時間を割けるはず。ロウランの求めるものはシンプルであり、彼の力があれば問題はあっという間に片が付く。
そう示す為にジュスタンを惑わせ、反逆心に火をつけてみせた。
ジュスタン・ノープを完全に操らなかったのは、ずっと対象のそばにいなければならない為。
そこまでするまでもないと考えたロウランは、ジュスタンの中に燻っていたものを刺激し、裏切るよう仕向けている。
□ラーデンのせい
ジュスタンが錯乱する様を、ニーロもはっきりと目にしているが、ロウランがなにをしたのかはわかっていない。
ロウランは理解できて当然という態度をし、ニーロの中に潜む特殊なものに気付いたようだ。
ニーロはこの時点ではまだロウランの力の強大さをわかっておらず、ジマシュの作り上げた硬い「殻」を破る機会になるのでは、と考えている。
二人はごく普通に家に帰っただけだが、ロウランの計らいによって誰にも姿を見られないまま、家の中に入っていった。




