第950話 名付けですが何か?
火の森で発見した地獄火炎鳥の亜種の青い炎の鳥は、すっかりハンナに懐いた様子を見せていた。
ハンナに反応して、羽を広げて見せたり、頭上を飛んで見せたりと言う事をしっかり聞いているからだ。
さらには、ムササビデビルのサビを、ハンナの次に偉い相手と判断したのか、サビに対しても、大人しくしている。
やはり、強い相手に従うのは、魔獣世界でも一緒のようだ。
「名前を付けて主従関係を作らないとね」
リューが青い炎の鳥と戯れるハンナに声をかけた。
「うーん、どうしよう……。──リューお兄ちゃん、考えて!」
ハンナは急に何か思いついたようにリューに頼んできた。
「僕が? これはテイムしたハンナが考えるべきじゃないの?」
「ちょっと、試してみたい事があって」
「試したい事? ……わかった。じゃあ、『ブルー』とかどう?」
リューは、炎の色から安直に命名した。
「じゃあ、あなたは今日からブルーよ!」
ハンナが青い炎の鳥に、ブルーと名付けた。
すると、ブルーは名前が気に入ったのか、ハンナの肩の上で翼を広げた。
そして、奇妙な事に、リューの肩にも飛び乗り、翼を広げるではないか。
「……どういう事?」
リューはブルーの反応に首を傾げる。
「テイムしたのはハンナだけど、リューお兄ちゃんが名前考えたから、どちらに対しても従う意思を見せたんだと思う」
ハンナが試してみたかった事の結果を口にした。
「サビがそうなんだけど、主従関係を結んだ相手の場所が本能でわかるの。ブルーがいれば、リューお兄ちゃんの場所まで案内してくれるし、その逆もできると思う」
ハンナは笑顔で答えた。
「なるほど……。もし、ハンナに何かあっても、ブルーは僕のところに迷う事無く知らせに来てくれるわけか!」
ハンナのやりたかった事ようやく理解した。
ハンナはそれに、リューがテイムをしたがっていた事も考慮した結果だろう。
兄思いの妹にリューは、嬉しくなるのだった。
ブルーは、大きさの割に結構強そうだった。
翼を広げると八十センチほどの大きさしかないが、サビの首もとを掴んで高い場所まで運び、サビが滑空するのを手伝う事ができる程だったし、上空まで舞い、そこから青い炎を纏って滑空すると、とんでもない速度になる。
青い閃光のような速度で地面すれすれを飛んで、生えている草をナイフのような切れ味でカットして見せたりもした。
「これだけ速く飛べるなら、伝書鳩みたいな事もできそうだね。と言っても、僕とハンナの間でしかできないのだろうけど」
リューは使用が限定されるものを口にした。
「ふふふっ。仲の良い兄妹ね」
シャームがペットのフレバを肩に止まらせて、リューとハンナを褒めた。
「うちのハンナは凄いでしょ? 古代黒竜戦で活躍した特製ポーションもハンナの作成したものだから」
リューは妹が褒められたと解釈して、自慢した。
「それはもう知っているわ。今回、ここに戻ってきたがったのも、ハンナちゃんが、魔境の森で採取できる薬草に興味を持ったからだもの」
シャームは、妹を自慢するリューが微笑ましかった。
「そうでした。はははっ」
リューは少し照れて笑うのだった。
『次元回廊』でアニマーザルの街に戻ったリュー達は、珍しい薬草探しに移った。
と言っても、シャーム達にとっては、見慣れている薬草を教えるだけだったが、これがリューやハンナにとってはかなり驚きが勝るものばかりだった。
残念ながら、しばらく街に滞在していたマッドサインやタガヤの部下達は、新たな作物や珍しい魔法陣技術や魔導具に目を奪われていたので、未知の薬草の類にはあまり気づかなかったようだ。
リューとハンナはシャームに治癒や、各毒に効果のあるもの、火傷や各麻痺治療に効果のあるものなども教えてもらった。
中には石化に効果があるという薬草まであった。
リュー達の世界ではありえない、もしくは伝説やお伽噺レベルのものが出てくるので、リューもハンナもポーション作りが得意な身としては、心躍る時間となった。
今となってはハンナの特製ポーションが家族の中では有名になっていたが、大元となるもののほとんどは、リューが作ったものである。
ハンナはリューが作ったものを参考にする事で、それを改良して効力を強化したり、飲みやすくしたりしているのだ。
リューの発想力で生まれたものをハンナが改良する事で、市場には出せない程の効果を持つものが、次々に開発されているのだった。
「石化に効果か……。考えた事もなかったなぁ。──シャーム、どう使うものなの?」
リューは早速、興味を持った薬草の使用法と確認しだした。
ハンナも師匠というべきリューの一言一句を聞き逃さないように、二人の会話に耳を傾ける。
「二人ともやっぱり、兄妹ね。後ろ姿が似てきたわ」
リーンは、シャームの説明を受ける二人の背中を眺めてほほ笑む。
「ハンナ様はいつもリューの兄貴の背中を追っていましたから」
ハンナの親衛隊で護衛役でもあるイトラが応じた。
親友のココともう一人の護衛フレトもその言葉に頷く。
「ふふふっ、そうね。ハンナ、リューに会う時、いつも楽しそうだもの」
リーンが笑う。
「リーン! リューお兄ちゃんがまた、凄い事考えついたよ!」
ハンナは家族の一員であるリーンに、リューの発見を知らせる。
「どんな事?」
リーンは興味を惹かれて、リュー達の会話に入っていく。
それをリューの護衛役であるスードと、ハンナの護衛役であるココ達は、尊い時間として微笑ましく眺めるのだった。
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