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【8巻発売中!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第948話 商会内の話し合いですが何か?

 マイスタの街、ミナトミュラー商会本部では、研究開発部門が騒がしくなっていた。


「これが魔境の森奥地の作物か……」


 リュー達に同行していたマッドサイン達が、珍しいものをかき集めてきた成果を、商会長代理であるノストラが、一つ一つ吟味していた。


 そこにはなぜか、総務隊を率いる幹部のルチーナもいる。


「この大麦、真っ黒なんだけど大丈夫かい?」


 ルチーナが、束で置かれていた魔境の森原産の植物の一つを手にした。


「ルチーナ、お前が何でここにいるんだよ」


 ノストラは疑問に答えず、注意する。


「私は仕事で寄っただけよ。若が以前持ち込んだ魔境の森の毒植物の血清ができたっていうからね。それを施設に運ぶ為の護衛役として人手が足りないって言うから、私が代わりに来たのさ」


 ルチーナは肩を竦めつつ、興味は完全に珍しい植物に向けられていた。


「まあ、いいが、あまり、色々触るなよ? ──マッドサイン、タガヤ、これらを持ち帰った理由を簡単に教えてくれ。研究するにしても、その為の人員や資金を検討しないといけないからな」


 ノストラは、商会長代理として、無限に予算を出すわけにはいかない。


 以前に比べ、裏社会で得たお金を資金洗浄し、表に回せるようになった事で、戦後直後の資金難を乗り越える事はできたが、なんにでも資金を投入するわけにはいかないのだ。


「ではこちらから──」


 マッドサインが、ルチーナの手にしていた真っ黒の穂をつけた大麦を指差し、農業部門のタガヤが、代わりに説明を始めた。


「この魔境大麦(仮称)は、現地の古代獣人族が酒造りに使用していたものですだ。魔境大麦は驚く事に、魔境の森という過酷な環境下でも元気に育ち、大きな実をつけるので、従来種と掛け合わせ、災害に強く、お酒の材料として良いものが作れるのではないかと考えているんですだ」


 タガヤは育てる側の人間なので、酒造りの職人もこの場に呼び寄せていた。


 職人は、魔境大麦の穂の一つの皮を剥くと、中から出てきた白い実に驚く。


 普通は黄色や白に近い薄いベージュの実だからだ。


 職人はそれを口に放って味わいを確認した。


「こいつはいいかもしれない……。商会長代理、これは、面白そうなのができそうだ。研究のし甲斐があると思いますぜ?」


 職人は満足げに頷く。


「……職人からも了解が出た。魔境大麦は、合格。研究に入ってくれ。必要な資金も投入する。──次、魔境小麦はどうだ?」


 次々に、魔境の森原産の珍しい作物の吟味が続く。


 マッドサインとタガヤが選び抜いて持ち帰っただけあり、ほとんど合格が続き、研究の為の人員と資金の投入が決まっていった。


「……ルチーナ、いつまでここにいるんだよ」


 ノストラは、護衛任務で来ているはずのルチーナがいい加減帰らないので、再度、注意した。


「なにさ、確認が必要なものがまだいくつか残っているだろう? 私はあれが食べた……試食してみたいんだけど?」


 ルチーナは、ごつごつとした実を指差した。


 それは魔境の森産の果実と思われるものだった。


 リューが移動途中で見つけたが、先を急ぐという事で回収できずに残念がって、愚痴を漏らしていたものだ。


 ルチーナはその時の特徴を聞いて覚えていたのである。


「この硬い実の事か? ……タガヤ、これはなんだ?」


「これは、果物ですだ。おいらも味見してみましたけど、果汁がたっぷりで、甘く美味しい食べ物ですだ」


 タガヤがお気に入りの一つだった。


「私の記憶通りなら、若が美味しいと言っていたものと特徴が一緒だよ」


 ルチーナもここぞとばかりに情報を付け足す。


「若が!? ──(ごくりっ!)……よし、一つ味見してみよう」


 ノストラはリューへの絶対的な信頼があるので、リューが褒めていたものに興味を惹かれた。


 早速、タガヤが代表してその果実上部の葉を切り落とし、硬い実に刃物を入れて切り分けた。


 とてもフルーティーな香りが、室内に広がる。


 そして何より、お皿の底に溜まった果汁の量が印象的だった。


「……これは」


 ノストラ、ルチーナ、立ち会っていた酒造職人などが、欠片を口に放り込む。


「「「美味い!」」」


 一同は、思わず声を上げた。


「若が回収できずに残念がっていたのがわかるわ。甘さと酸味が丁度よくて、美味しいもの」


 ルチーナが満足気に美味しさに酔いしれる。


「確かに……。初めて見る果実だが、果汁が多いし、そのまま食べる以外にも使えそうだな。──どうだ?」


 ノストラも満足気に頷くと、職人に確認した。


「これだけ香りが強く酸味とのバランスが取れた果汁なら、ドラスタ(酒造部門のブランド名の一つ)で作っている果実酒の一つとして商品化しても面白いかもしれません」


 職人は楽しそうに頷く。


「よし、育てるのはもちろんだが、それまでは若にお願いして、そのアニマーザルの街から輸入し、果実酒の製造に着手しろ。上手くいけば、大売れしそうな気がするぞ。──それで、この果実の名は?」


 ノストラは、大金の予感に笑みを浮かべた。


「若はパイナップルって言ってたわよ?」


 ルチーナがすぐに応じた。


「古代獣人族は、『パイナポ』と呼んでいましたな」


 マッドサインが答えると、タガヤも頷く。


「パイナップル……、パイナポ……。どっちも言いづらいから、『パイン』に省略していいか若に確認しよう」


 ノストラは、咄嗟に判断すると、このおいしい果実をもう一切れ、口に頬張るのだった。


 この後もミナトミュラー商会本部、研究開発部門の室内では今後の商品開発の為の話し合いが行われた。


 後日、ここから、ドラスタの銘柄のお酒が改善されたり、新酒が生まれ、リューは顧客のみならず、酒造ギルド会長付き顧問として、改めて評価される事になるのだが、それはまた別の話である。

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