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雪山に現れた二つの謎の存在。誰もが見れば、これはまさしくこの世の終わりではないかと連想するほど迫力があった。空には巨大な真っ黒バケモノ、地上には巨大な光る石像。カムラは唖然とするばかり。両手に持った武器を呆然と手にして。
「なっ、何これ……?」
ようやく、口を開いたとしても、そんな感想が関の山。カムラにとって初めて目にするもののようだ。だが、それは他の者もそう。フレイヴはただ単に、この世界そのものに語りかけただけだ。それがこちらに返事をした。それだけのことである。それだけのことだというのに、世界そのものであるカムラは現れてくれた。フレイヴのためだけに。
フレイヴはもう一度、人の姿をしている方のカムラに言う。
「カムラ! 鳥になろう! そして、あいつを倒すんだ!」
まだ無茶ぶりを言うか。そんなの不可能なのに。無理に決まっているだろ、とツッコミを入れようとしたが――巨大な光る石像は人の姿をしたカムラの方を見た。その視線が怖いのか、思わず肩を強張らせる。えっ、何? 石像は片手を上げる。あれ、嫌な予感しかしない。大きく上げられた手は、そのまま真っ直ぐ彼女の頭上へと――その場に地響きがした。下手すれば、上の方から雪崩がやってきそうなぐらい揺れたようだ。地響きと共に何かしら潰れたような爆音が聞こえたかと思えば――。
「は、えっ?」
人の姿をした方のカムラは――いや、人の姿をしていた方のカムラは鳥のような姿へと変わっていた。生き物のような鳥ではない。彼女はフレイヴが持っている過去の歯車と同じような材質の鳥なのだ。それも上手く飛べている。人一人が上に乗れるほど大きな姿をして。
「本当に鳥になったぁ!?」
困惑するのも無理はないだろう。そんな鳥の姿をしたカムラと巨大な光る石像のカムラは目が合った。石像から何かしら言葉を受け取ったのだろうか。彼女はゆっくりと地上へ降りるとフレイヴを乗せたのだ。
「なんだか、よくわかんないけどぉ、あのクソ野郎を倒してくれるってならっ!」
「倒すさ。絶対に」
「来いっ、我が意思を尊重しない者どもよ!」
『ぼくは予知能力を持たない。だからと言って、何かしらの能力があるわけでもなければ、魔法使いでもない。俗に言うただの人間なんだ。そのただの人間は不安なんだ。これから先のことが特に。不安で、恐怖で、未来で待ち構えていることが怖くてたまらない。先が見えないからこその恐怖心。それのせいで、魔王が倒れた後の未来がわからないんだ。魔王がいなくなった世界はきっといいこと尽くめだろうけど、本当に世界が平和になるとは思えない。世界はナズーがいたから戦争を停めていた。もしも、ナズーがいなくなってしまえば? 結局変わらないんだって思うんだ。これはただの人間が思う憶測。本気にしないで。冗談交じりだと思って聞いて欲しい。いや、見て欲しいが正解なのかな? どちらでも構わないけれどもね。』
『カムラって、ぼくが知らない真実を知っているんじゃないの?』
『知らないよ。』
『そっか、知らないなら、知らないんだもんね。仕方ないよ。』
『いきなりどうしたの? フレイヴらしくないね。』
『そうかな。不安ばっかりだから、変なことを思っているのかもね。ゴメン、気にしないで。』
『いいよ、別に。フレイヴが思うことをあたしの本に書き溜めればいい。それでフレイヴの気分が落ち着くならば、あたしは一向に構わないよ。』
『ありがとう。でも、カムラに会ったあの日からずっと思っているんだ。世界は心を孤独にするほどぼくたちを嫌っているんじゃないかなって。言いたくなければ、言わなくてもいいよ。』
『ねえ、カムラって自分のことが嫌いだろ? それだから、嘘とかついちゃう。もっと、自分のことを好きになりなよ。きみはすばらしいやつなんだからさ。』
『ありがとう。』
※カムラの本の一部より




