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羽を生やし、大きな口から鋭い牙を覗かせた獣のようなナズーの姿をしているクラッシャーは余裕のある笑みを浮かべているようだった。
「五億九千八十九回目はとことん残念な結果となりましたねぇ。あなたが『戦おう』とするからですよ」
クラッシャーはフレイヴが悪い、と申し立てる。だが、なぜに自分が悪いのかがわからなかった。何も悪いことはしていないはず。自分自身、世界のループを望んでいなければ、世界の終わりすらも望んでいない。勝手に決めつけられてたまったもんではなかった。勝手なレッテルを貼るな。あんたらみたいな鬼畜外道に格付けをされたかないんだよ。ぼくはぼくだ。五億九千八十九回目のぼくとしての意思を持っている。ぼくはお人形さんじゃないのだから。
「カムラ」
フレイヴは両手に赤と黒の剣を抱えたカムラに呼び掛けた。彼女はクラッシャーを睨みつけていたようで、視線を逸らさずに「何ぃ?」と返してくれた。
「なんかの提案?」
「もちろん」
それは都合がいい、と失笑をし出す。別におかしなところはなかったが、フレイヴもつられて小さく笑った。
「でぇ、どういう作戦? こんなデカブツの相手って複雑骨折並みに骨が折れるよぅ」
そのたとえ方、フレイヴが知っているカムラという少女に似ている気がした。気がするだけ。自分が知っているあの子はこうして間延びした言い方はしない。確信的ではないから。たとえ話に思わずにやけながらも「当然」と言う。
「ぼくたちの力量から言えば、勝率はゼロパーセントだ。だけれども、それはあくまで五億九千八十八回までの話だってこと」
「つまりぃ、未来が視えないならば、勝率を大きく傾けちゃおうってわけぇ?」
「そういうことだ」
「はぁ、そういうことかぁ」
――なるほど、なるほどねぇ。うん、言いたいことはよぉくわかる。わかるからこそ、笑っていい? 面白過ぎでしょ。本当は勝率ゼロパーセントだとわかりきっているのに、この戦いでの自分たちの勝率は限りなく百パーセントに近いだなんて。びっくりぃ!
極端過ぎて意味不明な勝率だと思う。しかし、その手に乗らないわけにはいかない。自分の目的と隣に立つ少年の目的は一緒なのだから。結局、一人よりも二人の方が勝率は格段と跳ね上がるのだ。それならば、動かなければ。戦わねば。この初対面の少年と。それだからこそ、カムラは「乗ったぁ!」と不敵に笑う。
「そんな賭けも悪くないねぇ!」
具体的に何をすればいい? そうカムラが訊ねると、フレイヴは「うん」と教えてくれた。
「空中戦だとぼくたちの分が悪い」
「そだねぇ。あたしたちは人間のお姿。たとえ、どっちも中身が人間でなくてもねぇ」
「だから、カムラが人間の姿じゃなくて、鳥の姿になればいいと思う」
「なるほど、なるほどねぇ。わか――わからんっ! わかってたまるかっ!」
なぜに鳥の姿にならなければならないのか。全く以て意味不明であった。




