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自分があげた物を持った誰かさんを追いかけようとしていた。だが、そちらよりも珍しい状況に遭遇してしまったではないか。長期に亘る作戦よりも、短期間にしてさっさと終われそうな案件だ。敵は二人。味方は一人とこちらが入れば互角。まさに好都合。これほどまでに好ましいことはあっただろうか。ここまで頬が緩むほどなことはなかったはず。あったら、あったでそれは忘れているだけだ。思い出すならば、先にこちらを終わらせてからにしよう!
「あなたはっ……!」
二人のクラッシャーは想定外なことが起きて戸惑いを隠しきれていないようだった。表情は――顔がないからわからないのだが、わかる。声音からして焦っているのはわかる、わかる。へぇ、これってチャンスじゃないの? いいじゃん、いいじゃん。
「その武器、あの子から奪ったってわけじゃなさそうだしぃ」
クラッシャーたちを見ていた人物――少女――名なしは真っ赤な剣を肩に担いだ。
「どっからどう見ても、あたしの味方さんだよねぇ? あの子に似ているけどさぁ」
「ぼくはフレイヴ・アイザニラだ。きみの知っている誰かと重ねないでくれ」
「あぁ、言っとくけど、あたしはきみって名前じゃないなぁ」
味方がいるからなのか、けらけらと能天気に笑っているではないか。別に癪に障るというわけではないにしても、随分と余裕があるではないか。
少女、名なしは助太刀した真っ黒な剣を拾い上げて――二人のクラッシャーに向けて構えた。
「あたしの名前は、カムラとでも名乗っときますかねぇ」
「知ってる」
「え」
なぜに知っている、と名なし――カムラが訊ねようとするが、それはクラッシャーたちに阻止されてしまった。悠長におしゃべりする時間を与えてくれないらしい。それはそれで困ったものだ。
「最期のおしゃべりの時間は終わりですよ!」
強い衝撃が二人の剣にぶつかった。同時にカムラはフレイヴと競り合っているクラッシャーの足を強く踏む。その隙をついて彼は剣を捌き、彼女と対峙しているクラッシャーとの間に過去の歯車で割り入った。鋭い金属音が吹雪より打ち勝つ。
「何度も死んできたあなたが私たちに勝てるわけがないっ!」
足を踏まれたクラッシャーは割って入ったフレイヴの喉元を狙おうとする。これをカムラが真っ赤な剣で弾いた。予想以上にこの二人の反応は早いようである。だが、独りで戦っているわけではない。隣には頼もしい味方がいるのだから!
これならば、勝てる! すべての元凶であるクラッシャーに。過去を清算とし、未来へと行こうとする『過去の歯車』と思い描く未来を示してくれる『未来のコンパス』があれば。




