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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆最終章 フレイヴとカムラ◆
255/263

255ページ

 自分があげた物を持った誰かさんを追いかけようとしていた。だが、そちらよりも珍しい状況に遭遇してしまったではないか。長期に亘る作戦よりも、短期間にしてさっさと終われそうな案件だ。敵は二人。味方は一人とこちらが入れば互角。まさに好都合。これほどまでに好ましいことはあっただろうか。ここまで頬が緩むほどなことはなかったはず。あったら、あったでそれは忘れているだけだ。思い出すならば、先にこちらを終わらせてからにしよう!


「あなたはっ……!」


 二人のクラッシャーは想定外なことが起きて戸惑いを隠しきれていないようだった。表情は――顔がないからわからないのだが、わかる。声音からして焦っているのはわかる、わかる。へぇ、これってチャンスじゃないの? いいじゃん、いいじゃん。


「その武器、あの子から奪ったってわけじゃなさそうだしぃ」


 クラッシャーたちを見ていた人物――少女――名なしは真っ赤な剣を肩に担いだ。


「どっからどう見ても、あたしの味方さんだよねぇ? あの子に似ているけどさぁ」


「ぼくはフレイヴ・アイザニラだ。きみの知っている誰かと重ねないでくれ」


「あぁ、言っとくけど、あたしはきみって名前じゃないなぁ」


 味方がいるからなのか、けらけらと能天気に笑っているではないか。別に癪に障るというわけではないにしても、随分と余裕があるではないか。


 少女、名なしは助太刀した真っ黒な剣を拾い上げて――二人のクラッシャーに向けて構えた。



「あたしの名前は、カムラとでも名乗っときますかねぇ」



「知ってる」



「え」


 なぜに知っている、と名なし――カムラが訊ねようとするが、それはクラッシャーたちに阻止されてしまった。悠長におしゃべりする時間を与えてくれないらしい。それはそれで困ったものだ。


「最期のおしゃべりの時間は終わりですよ!」


 強い衝撃が二人の剣にぶつかった。同時にカムラはフレイヴと競り合っているクラッシャーの足を強く踏む。その隙をついて彼は剣を捌き、彼女と対峙しているクラッシャーとの間に過去の歯車で割り入った。鋭い金属音が吹雪より打ち勝つ。


「何度も死んできたあなたが私たちに勝てるわけがないっ!」


 足を踏まれたクラッシャーは割って入ったフレイヴの喉元を狙おうとする。これをカムラが真っ赤な剣で弾いた。予想以上にこの二人の反応は早いようである。だが、独りで戦っているわけではない。隣には頼もしい味方がいるのだから!


 これならば、勝てる! すべての元凶であるクラッシャーに。過去を清算とし、未来へと行こうとする『過去の歯車』と思い描く未来を示してくれる『未来のコンパス』があれば。

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