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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆最終章 フレイヴとカムラ◆
253/263

253ページ

 五億九千八十八回の間にフレイヴは名なしとクラッシャーに殺されている。その理由はクラッシャーたちの誘いに乗ったから名なしに殺されたこと。もしくは彼らの誘いに乗らなかったから、殺されたことだ。選ぶということ自体が間違いだったのだ。それだからこそ、世界はループし続けている。すべての原因であるクラッシャーのせいで。


――選ぶな。ここにある選択肢で迷うな。作れ、新たな選択肢を。


 フレイヴには世界の事実を変えた神様の日記がある。魔王が自分の願いが叶うようにしてくれた。


――ぼくは二つの選択肢を選ぶということをするのではなく、ここにない一つの選択肢を選ぶべきなんだ。それはすべての元凶であるクラッシャーを倒すということ。


 何より、フレイヴは世界の終わりを願ってはいない。彼が望むのはナズーがいない世界という願いだけだ。ループはさせない。だが、世界は終わらせない。


 神様の日記から出てくるのは――カムラの剣ではあるが、これまで見てきた美しい光はそれ以上に光っていた。眩しいほどに。目を開けていられないほどに。この剣を握ったとき、誰かが教えてくれた気がした。


――これは『過去の歯車』だよ。


――命名の意味は何?


――それは、歯車を過去の時間として見立てているんだ。


――それで、動かせばどうなる?


――過去というのは、清算して未来を切り拓くんだ。過去は変えられるものじゃない、事実を改変するんじゃない。それらを含めて未来にいくこと。それこそが『過去の歯車』という本来の存在なんだ。その意味に今まで気付けなくて……こんな役目を任せてしまってごめんな。


 誰か――おそらくではあるが、魔王だと思う。彼がこれまで生きてきた人生の中で覚った事実。本当は、過去なんて変えられない。事実なんて改変できない。誰かは見ている。誰かが知っている。隠しても、いつかはバレてしまう。それに気付いたときは遅かったのだ。しかし、まだフレイヴがいる。ここに魔王が託した希望がいる。


 フレイヴは過去の歯車を手に構えた。





「ぼくはこれまでの過去を、五億九千八十八回分、全部を未来に持っていく」





 ここから先の未来は誰も知らない。過去を未来に持っていたらば、どうなるのだろう。その事実を受け入れて、成長できたらばいいなと思う。本当にそれだけだ。世界を救おうなんて考えちゃいない。フレイヴはただ単にナズーがいない平和な世界を望んでいるだけなのだから。

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