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お仕事は簡単。一人の人物を殺すだけ。そうすれば、あなたの願いは叶います。そう聞いて、フレイヴはあやしい宗教団体が言いそうなことだな、と怪訝そうにしていた。
「この世界にいる魔王サマは不死者となりましたので、約千二百年間我々ではどうすることもできません。ですが、名なしさんが完全に死ねば世界は終わります。この世界の未来に生きたいと思うあなたが殺すならばの話ですが」
「もうあなたは同じことを繰り返したくないでしょう? 家族、友人、彼らは異形の生物として人間には戻れない。見たはずです」
是非とも、と言ってくる二人のクラッシャー。こちらを揺さぶってくるものだから、フレイヴの心が揺らぎそうである。だが、魔王がいなくなる間際に言われたことを思い出した。
【お前が決めてくれないか?】
託された神様の日記。
クラッシャーは言っていた。
【五億九千八十八回までのお前、全員名なしか俺に殺されているよ】
魔王はフレイヴに殺意は一切なかった。きっと、戦ったとしても――戦うことを放棄されていたはずだ。ここでクラッシャーの誘いを断れば、彼らは自分を消そうとするだろう。たとえ、それに逃れられたとしても、まだカムラがいる。彼女によって殺害される可能性だってあるのだ。
考えろ、この五億九千八十八回までのとは違うやり方で自分が望む世界になるはずだ。
「さあ、いかがなさいますか?」
「私たちに協力するか、しないか」
おそらくはどちらを選んでも――結果は変わらないだろう。フレイヴにはわかっていた。カムラを殺そうとすれば、返り討ちに遭う。逆に誘いを断れば、クラッシャーに殺される。どちらでもない選択肢を作らなければならない。今この場で。今すぐに。
世界を終わらせる条件は魔王の死か、カムラの死。この時代の魔王は不死者。クラッシャーの誘いに乗ろうが、乗るまいがこちらが死んで世界はループするだけ。
クラッシャーたちは徐々にフレイヴへと近寄ってくる。すぐにでも殺せる準備は万端だと言っているようだった。だが、殺されてたまるか。どちらでもない選択肢を――早く!
『もしも、俺の願いが叶わないならば、フレイヴ・アイザニラの願いは叶うだろう。』
神様の日記を握りしめながら、魔王が残した言葉を思い出す。フレイヴの願い。その願いは――ナズーのいない世界を望むこと。そのためには、すべての原因である魔王を倒すことだった。しかし、今現在魔王は存在しない。そんな魔王はクラッシャーによって作られた。大元を辿れば、彼らが悪い。
誘いを断れば、自分は返り討ちに遭っているはずだ。だが、魔王が書き残した文章では――この本は神様の日記。クラッシャーも魔王もこれを使って世界改変を行った。そして、魔王はいなくなる直前にも事実改変とやらを行っている。
『もしも、俺の願いが叶わないならば、フレイヴ・アイザニラの願いは叶うだろう。』
【俺は好きな人とずっと一緒にいたいって願いはあったけど……叶いそうにもないな】
存在を消した魔王は奇しくも望みは叶っていない。フレイヴの望みはナズーのいない世界。ナズーというバケモノを生み出した魔王――大元を倒すこと。
――そうだ、ぼくはクラッシャーと戦って勝つという事実がこの神様の日記に記されているんだ!




