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――ぼくの願いって何だっけ?
自分が願っていたことすらもわからなくなってしまっているフレイヴ。そんな混乱をしている彼の後ろから音が聞こえてきた。人の声だ。何だか、怖くなってしまったフレイヴは茂みの方へと隠れた。ややあって、いたぞという声と共に数名の軍人らしき人物に魔王は抱えられて行ってしまう。
抱えられている魔王を見て、フレイヴはあることに気付いた。いつの間にかカムラの剣がなくなっているではないか。胸に刺さっていたのに。思わず、彼は自身の胸部分に触れた。そう言えば、いつの間にか痛みはなくなっている――それどころか、カムラに刺された傷は一切なかった。
「えっ? 嘘? えっ? あれ?」
あれだけ胸が苦しかったのに。普通に死ぬような状況だったのに。なぜに?
更なる困惑が襲いかかっている状態のフレイヴへと――またしても戸惑いの塊がやって来た。それは「刺されたことがなかったことになっているからですよ」と嘲笑する物言いでだ。声からして、クラッシャーだと思ったのだが――違った。何より、クラッシャーは丁寧な物言いではなかったはずだ。それなのに、今回は丁寧。どういうことだ。
フレイヴは声がした方を見ると、誰かがいた。だが、その誰かと言うのにはいささか抵抗がある。一番気になるのは顔がないということだ。ないから、真っ黒。不気味だ。それでも、どうにかかろうじてクラッシャーだとわかる。魔王が言っていた。彼が出会ったときのクラッシャーの顔は何もなかった、と。
怪訝そうな目でクラッシャーを見ていると「仕方ないんですよ」と肩を竦めてきた。
「魔王サマが消えてしまったので、私の姿形は不安定なんですよ」
もちろん、あなたも。そうクラッシャーはフレイヴを指差した。慌てて、自身の手の平などを確認するが、特別おかしなところはないようだ。
「と、冗談を言ってみました。あなたは大丈夫ですよ」
「悪洒落だ」
「まあまあ、そんなけんけんなさらず」
今まで姿すら見当たらなかったというのに、どこにいたのだろうか。そして、何を今更姿をこちらに見せてきたのだろうか。まさか、狙いは神様の日記とでも? 確かに、フレイヴにとって必要ではない代物ではないかもしれないが――。クラッシャーは「いえね」と左手を差し出してきた。
「この世界の仕組みはわかったでしょう? それならば、どうすればこの世界が終わるのかも把握したはず。どうです? 私と手を組んでこの世界を終わらせてみませんか?」
敵意、殺意のない左手。それと顔のないクラッシャーを交互に見た。信じてもいいのだろうか、と不安になるフレイヴのもとに――。
「あなたが協力していただければ、そう時間はかからないでしょう」
二人目のクラッシャーが出現するのだった。




