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フレイヴの目の前にいるのは魔王であるのは確かである。だが、これまで見てきた黒い鎧を着たようなバケモノとは違う姿をしていた。その姿こそ、彼――いや、クラッシャーに瓜二つである。ただ、クラッシャーと違うところを挙げるとするならば、右手が真っ黒い状態だということぐらいか。そんな魔王を見て、唖然とするばかり。もう訳がわからない状態だった。クラッシャーは自分に似ているし、魔王はクラッシャーそのものだし。どうなっているんだ?
「なんで、その姿……」
思っていたことが、フレイヴの口から出る。その独り言のような呟きに魔王は「ああ」と気付いたようにして答えてくれた。
「右手はどうしようもないけれども、元に戻れたんだな」
「クラッシャーも魔王と同じ顔……ぼくとも同じだった」
「そう。でも、俺はどっちが先かはわからないんだ。俺自身が先の顔なのか、クラッシャーが先の顔なのか」
その疑問はフレイヴにとってはどうでもいいものだと思えたが、魔王が言っていたことを思い出す。クラッシャーが自分たちを作った、と。だからこそ、どちらが先なのかは一目瞭然ではないのか。
「クラッシャーが先じゃないの?」
「客観的にはそうだよな。それでも、俺とクラッシャーが初めて会ったとき、あいつって顔がなかったからカートゥーンキャラクターのお面をしていたんだぜ」
そういう魔王は苦笑を浮かべた。何だろう、このやるせなさそうな少年の困り笑顔は。彼は人間らしい、そういう笑みを見せることだってできたのか。元人間、だなんて言われていたが――彼が一番人間らしい人間だったのかもしれない。
フレイヴが黙って魔王を見ていると「言いたいこと、気が済んだか?」そう、訊いてくれた。
「時間がない。やらなきゃならないことがあるんだ」
「世界を終わらせるの?」
もちろん、と魔王は頷いた。彼は嘘つきだと聞いていたから、これが嘘であってもいいのに。止めたいのだけれども、止める気にはなれないフレイヴは複雑な気持ちだった。
「じゃないと、俺とお前はまたこうして嫌な形で出会うかもしれないから。もう、あの子を殺せだなんて言わない。ここならば、俺にだってできることはある」
すべてが始まる前にこの手で終わらせる、という言葉にフレイヴは顔を上げた。その場を立ち去ろうとする魔王を「待って」と呼び止める。彼は立ち止まって、こちらの方を見てくれた。「最後に」とフレイヴ。
「魔王とカムラって……どういう関係だったの?」
「ああ、俺とあいつは――」
魔王が口を開こうとするのだが、そちらよりも目を見開いた。その表情からして驚きを隠せていないようだ。この理由はすぐにわかった。フレイヴの胸が苦しくなったからだ。喉奥から温かい何かがあふれ出てくる。少しだけ時間をおいて、それが血の味がすると気がつく。自身の胸を見れば――何度も見た淡い光を帯びた美しい剣先。これは――。




