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死んだと思っていた。思っていたはずなのに、どこかで見覚えのある通路に立っていた。外の光は一切入ってこない。窓がないから。あるのは橙色をした光が目先の道を照らしてくれるだけ。しかしながら、この通路――少しくさいと思う。
ここはどこだ。不安に思うフレイヴはどうすることもないまま先へと進んだ。行動しなければ、何も始まらないのは当たり前だからだ。この奥は何が待ち構えているのだろうか。ゆっくりとした足取りで進んでいると――。
「何者だ?」
雰囲気はアルフレッドだろう。年が彼に近いということもあるかもしれないが。中年男性と髪の長いカムラがこちらを怪訝そうに見ていた。ここにきて、何者だという設問。自分はこの場所に入ってくることが場違いだったと言えるのかもしれない。
「すみません、間違ってここに……」
「そ。だけども、どうやって入ってきたか、だよな?」
中年男性は彼女を横目で見た。髪の長いカムラは小さく頷く。
「きみぃ、ここがどういう場所か本当は理解しているんじゃないのぉ?」
先ほどのカムラとは打って変わって、穏やかに話しかけてきていた。それでも、内心はにやにやとこちらが墓穴を掘るのを待っている面持ちではある。しかし、フレイヴはここがどんな場所であるのかは存じ上げない。本当にここはどこなんだ。
「知りません。何ですか、ここは」
お菓子工場ではないことは当然か。本当は訊かない方がよかったのかもしれない、と発言してから後悔した。フレイヴの言葉に反応したかのようにして、中年男性はじろじろとこちらを見てくる。どこかもの不思議そうな目付きではある。そんなに珍しい格好でもしているのか。
「軍関係ではなさそうだな」
「ぼく、軍隊に入っていませんよ」
「っぽいなぁ。丸腰状態でここに、か。ふぅん?」
途端、男に銃口を突きつけられた。オルチェが持っていた拳銃の燃料とは違うにおいがする。これも燃料のにおいなのか。
「けど、ただのガキでも軍に報告することぐらいは、手足を動かすぐらい簡単なことだよな」
「報告……?」
「本当は気付いていたんだろ? 知っているぜ。ここ最近、軍の連中が町を嗅ぎ回っているからなぁ」
「知らないっ!」
中年男性が引き金に指を置いたとき、背中に冷や汗がどっと流れ出す。死への恐怖が迫り来ているようで、心拍音がうるさかった。どうにかして逃げなければ。どうやって?
「坊主、安心しろよ。死んでも、俺たちはお前の体を無駄にはしないつもりだ」
長い髪のカムラと目が合ったとき、彼女はにこっと笑った。が、フレイヴにとってその笑みは不気味なものにしか見えなかった。彼女はこちらを人間として見ていない気がして気分が悪い。カムラは「そうだよぅ」と笑顔を絶やさない。
「独りは寂しいじゃん?」
カムラの言葉を聞き入れている場合ではないというのに、なぜだか頷く。これに彼女はにっこり。反応してくれたのが嬉しいのだろう。
「だよねぇ。でも、大丈夫。寂しいなら、あたしがお友達を紹介してあげるから」
その言葉に反応するかのようにして、通路の壁を破壊して現れたのは――ナズーだった。そして、何より異臭がきつかった。吐き気がしそうなほど。その一瞬の油断が死の気配を察知してくれたようで――。
耳を塞ぎたくなるほどの破裂音が鳴り響いた。フレイヴは男が手にしていた拳銃の口を真上に向けて――間一髪で死を免れたのだった。そう、これがチャンスだ。隙を見た彼はその場からの逃走を図るのだった。四肢が捥がれても、動かなければ。彼らは自分をナズーにする気満々なのだから!
逃げるフレイヴの背中をどこか残念そうに見つめるのは長い髪のカムラだった。男に対して、発砲することを止めているようで――。
「いつか、会えるよぅ」と信じて疑わない様子だった。




