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フレイヴの目先には双子のように互いにそっくりな髪の長いカムラたちがいた。その内の一人はびしょ濡れになっていたカムラに向かって「もらうから」と彼女の名前を取ったらしい。そんな実感はないように見えるのだが――。
「要らないんでしょ?」
「えっ、あぁ。待って……よぉ」
名前を取られてしまったらしい。カムラは状況を理解できていないようで、不安そうな目を見せた。人の名前を取った彼女の言っている意味は訳がわからない。
「それはどう待てと? あんた、どうでもいいんでしょ? 自分なんてどうにでもなれって思ったんでしょ? だったら、あたしがもらう。寄こせ。代わりにこちらが上手く活用してやるから」
名前を取られてしまったカムラに似た子はその場に座り込むだけで、何も言わなかった。一方で名前を取った少女は言いたいことを言うだけ言って、踵を返した。その場を去るつもりなのか、こちらの方へとやって来る。
段々と近付いてくるのに対して、フレイヴは迷っていた。声をかけるか、かけまいか。呼びかけたとしても、何と言えば? だが、そこでへたり込んでいる少女を見過ごすわけにはいかないだろう。思わず彼は――。
「か、カムラ!」
正直言って、今のカムラに声をかけるのはすごく怖い。それでも、名前を取られてしまった少女が可哀想に思ったから。フレイヴに髪の長いカムラは眉根を寄せて怪訝そうにこちらを見た。
「はぁ?」
第一声がそれだった。当然、なのか? この時間はカムラと出会う前になるのか? よくわからない。
「あんた、誰ぇ? なんで、あたしをカムラ?」
「あの子の名前……盗ったらダメだろ。可哀想だろ」
フレイヴが言える精いっぱいの言葉。こちらはカムラのことを知っているというのに対して、向こうは知らない。それが逆に怖かった。
「それぇ、あんたに関係あるの?」
「でもっ――」
「あぁ、そういうことぉ」
なぜだか、勝手に納得された。長い髪のカムラは大きく独りでに頷くと「騙されないんだから」そう言った。彼女の手にはカムラの剣が握られている。美しくて淡い光が自分の首元を突きつけていた。
「え」
「そうして、あたしをストーカー張りにあとを着けてきたってわけかっ。クラッシャー!」
その言葉の直後、カムラはフレイヴに斬りつけてくるのだった。




