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ようやくカムラと会えたと思ったのに。クラッシャーが逆なでしてしまったようで、フレイヴと魔王は彼女の本の中へと吸い込まれてしまった。今現在、彼は暗がりの中、独りでいた。誰もいない。もちろん、心の中にいたクラッシャーだって。言っていた。本の中に入れば、出ていくと。本の中に入ることを目的としていたとでも? それならば、どのような目的が? クラッシャーがいないからわからなかった。誰かに質問をしたいが、誰もいない。とにかく、誰でもいいから会いたかった。
光る石像もクラッシャーも魔王ならば、すべてを教えてくれると言っていた。どうせならば、魔王に会いたい。会って話がしたい。何があったのか、この世界はどうなっているのか。
不思議と落ち着ける場所だと思えた。急ぐ気持ちはあるが、これまでにおける疑問点の整理がつきそうだ。カムラたちに会うまではずっと私利私欲のために動いていたようなものだったから。それでも、これまでの自分の行動は当然の結果だと信じたい。何もおかしな話ではないはずだ。自分は嘘つきではないから。
右手を見た。しっかりと握っていたはずのカムラの剣がなくなっていることに気付く。これで完全に独りだと知らしめされた気分。思わず、泣きそうな顔をする。
「なんで……」
その悲しみはやがて、天から水が降り注ぐ。いや、これは雨だ。雨が降っている。いつの間にかフレイヴが立っていた場所はどこかの町。荒野で見た箱型の何かが地面を滑るように行き交っていた。そこにぽつんと自分が立っている。まるで、この場所に取り残されたようにして。よくわからない場所。ここがカムラの本の中であるならば、彼女の記憶なのか。
「どこ?」
本当にその通りだった。大通りから間道に入ったところに見覚えのある少女が雨に濡れていたのだから。その佇まいからして、どうでもよさそうにしている。
「カムラ?」
そう、そこにいたのはカムラ――であるが、普段の彼女はショートカットの黒髪だ。この少女の髪は背中まで長かった。昔の彼女? だとしても、待て。彼女は言っていた。自分は元男だ、と。男だったはずなのに? どういうことなのだろうか。
人が数名入り込めるような箱が自分たちを横切る。水たまりが跳ねて、どうでもよさそうにしているカムラに似た子に降りかかった。おかげでびしょ濡れ。周りの人たちは気にしていない様子。流石に可哀想だ、と思ったフレイヴだが――彼の横を誰かが通り過ぎた。こちらに対して向ける背中――デジャヴ。ああ、いや、そこで全部投げ出したい子とそっくりだ。双子なのかな。家族なら慰めてくれるよ。なんて思っていた。
「随分と投げやり」
ずぶ濡れのカムラに似た少女に、もう一人の少女はそう言い放った。その言葉は明らかに心配そうにはしていない。なぜって、びしょ濡れの少女は彼女を見て唖然としていたのだから。その表情が意味するのは――。
「もらうから、あんたの名前」
「え」
フレイヴと濡れている少女は口を揃えて驚愕するだけだった。




