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「ぼくはきみが大っ嫌いだ」
――ぼくの本心ではない。これはクラッシャーの罠だ。
「嘘つきのきみが嫌い、嫌い、大っ嫌い。思うよ、死ねばいいって。何度殺しても死なないならば、ぼくが殺してあげる。ぼくがこの世界を終わらせてあげる」
フレイヴの心の中に侵入したクラッシャー。彼はただ単に傍観しているだけと思われていたのだが、ここにきて割り込み開始。自分の心の中とは真逆の発言を勝手に口借りて発信したのだ。
自分の本音ではない、とフレイヴは首を横に振りながら口を塞いだ。だが、そのように否定したところで言葉というものはそう簡単に取り消せない。徐々にカムラの怒りは膨れ上がる。彼女自身が檻を叩いているのではないのだが、ガンガンと鈍い音が鳴り響いているではないか。
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン。
嫌な予感しかしなかった。それは魔王にも伝わったようで――彼は右手にカムラの剣のような武器を持って檻ごと叩き斬ろうとした。直後、彼の左目からは「戦え」という指示が下る。もちろん、体は勝手に動き出す。クラッシャーが動かしているから。
フレイヴの体が勝手に身構えた頃、カムラが入っていた鳥かごのような檻は完全に破壊され――彼女は出てきた。人の姿ではなく、本の姿として。
「いよいよ大詰めだなぁ」
頭の中で能天気にクラッシャーはそう言う。口に出してふざけるなと怒罵を浴びせたかったのだが、生憎口を開かせるほど彼は優しくないらしい。完全に乗っ取られてしまった。
本の姿のカムラは体を宙に浮かせていた。ぺらぺらとページが捲れながら「勝手言ってんじゃねぇよ」とご立腹の様子。
「ルールを破るお前らが全部悪いに決まってんだろっ! 勝手にこの世界の事実を改変しやがって、挙句の果てにはこの世界を終わらせるだぁ!? 妄想も大概にしろっ! お前らなんて、お前らなんて……!」
カムラ自身、元男だということを思い出させるかのような口の悪さ。何か厄介なことが起きることだけはわかる。不穏な風が部屋中を舞っているからだ。それ以上は事が起きない限りどう予想していいのかわからなかった。
どのようにすれば、カムラを落ち着かせることができるのだろうか。フレイヴが必死になって口や体を動かそうと試みるが「無駄だ」と腹立つクラッシャー。
「今から名なしの本の中に入れ。そうすれば、俺はお前の心から出ていくことを約束しよう」
「はあ!?」
クラッシャーの言っている意味がわからなかった。カムラの本の中に入れだと? 正気か? 人が本の中に入るだなんて。しかし、彼は中に入ればフレイヴの心から出ていくと約束した。彼は嘘つきではない、と言っているが――信用できるだろうか。そもそも、中に入って何をしろと?
なんてフレイヴが迷いを見せているときだった。より強力な風が周りに吹き交った。それに足元が取られるようにして――。
「永遠にこの中で彷徨っていろっ!!」
こちらが行動するが先ではなかった。なぜならば、カムラ自身がフレイヴと魔王を吸い込んでしまったのだから。




