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この世界はループし続けている。五億九千八十八回も。その五億九千八十九回も終わろうとしている。五億九千九十回目に突入しないように、やるべきことがある。
「何を言っている!」
やっとの思いでフレイヴは口を開いた。向かい側にいる、自分によく似た誰かは「事実だ」と答えるのだった。
「世界を終わらせるか、それとも繰り返されるか。クラッシャーである俺と名なしが何度もやっているゲームだよ」
「そんな簡単に……!」
「簡単な話だよ。ルールは一つ、どちらかの完璧な死によって勝敗が決まる。そんなゲームにお前も参加せざるを得なくなってしまった。それだけの話だ」
「でも、ぼくはナズーの楽園を認めない!」
「ンなの、どうだっていい。どうせ、どちらかが終わればいなくなるんだからな」
「えっ?」
「ただ、この世界がまたループをするならば、お前は五億九千九十回目の悲しみを味わうだけ。記憶はリセットされてな」
――今、なんと言った? クラッシャーはなんと言った? 五億九千九十回目の悲しみを味わうだって? ぼくはこれまで五億九千八十九回も同じ悲しみを永遠と繰り返し味わってきたとでも? 両親、大切な人がナズーになってしまった。それを五億九千八十九回も?
「別に同じことを繰り返してもいいって思うなら、あいつにそう伝えないとな。ノーヒントではいけなかったと学ぶだろう」
「えっ、ぼく……?」
「ああ、そうそう」
自分に似た誰か――クラッシャーが握るカムラの剣によく似たその武器をフレイヴに向けた。それに思わず怯む。
「五億九千八十八回までのお前、全員名なしか俺に殺されているよ」
今回もそうなのかな、と笑顔が不気味だ。背筋が凍る。足が震えてきた。ここにきて、自分の意思がすべて挫かれた気分である。カムラを助けに行きたいのに。ナズーのいない世界にしたいはずなのに。それらの願いを叶えるため、どんな犠牲も厭わなかったはずなのに。ここまで築き上げてきたものをここで壊すと? 冗談じゃない。
「今回はあいつの考えがちょっと甘かったことが欠点だったな。さあ、俺もあいつもまた一からやり直しかぁ。それじゃあ、バイバイ」
――さようなら、五億九千八十九回目の魔王の代理さん。今度は五億九千九十回目のフレイヴという人物に期待しようではないか。
振り下ろされる刃。フレイヴに死という恐怖が迫りくる中、彼は――その一撃を止めた。目を見開き、息遣いが荒い。その気迫から連想されるものは「死にたくない」である。流石は正直者だな。それでも、よく似ている。
「世界を終わらせたくなかったんじゃないの?」
「この世界を作り上げたのは魔王だ。ぼくは魔王と話をしたい」
これは時間稼ぎではない。世界の真実を直接魔王から訊きたいからだ。たとえ、クラッシャーの言葉が本当であっても、この世を創り上げた彼の発言ならば、信じることができる。そういう思いでフレイヴは剣を止めたのであった。




