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この世界の真実を知ったとき、頭を抱えた。いや、何もこのときの自分だけではなかったはずだ。前回も、前々回も。五億九千八十八回前すらもだ。何度も同じようなことを繰り返ししては、また最初に戻るだけ。
薄暗がりの中、魔王は神様の日記に触れた。幾度となく見てきた色あせたピンク色の表紙。最初に見たときは――名なしが持っているのを見たとき。本当はクラッシャーが持ち出して、この世界に逃げ込んだとどちらからも聞いた。どちらが正しいかなんて、何も知らない正義だと思う方を選ぶばかり。何度も同じことを繰り返しして。
「終わらせなきゃ……」
願うはこの世界の終わり。そうでないと、この世に未来は存在しないから。昔、未来が視える人に会ったことがある。その人は人の死相が視えるということだった。自分自身の死相が視えないのは当たり前。当然だ、自分以外のあの時代のみんなは全員死んでしまったのだから。
分厚いピンク色の本を開いた。ぺらぺらと捲っていき、最後のページを見た。この文章は一見誰かに宛てた文章のように見えるが、実はそうではない。これはクラッシャーに課せられたルールだ。クラッシャーにも魔王にも名なしにも誰にとっても未来はない。こうして、物語は最初に戻る直前まで差しかかっている。終盤ではない。繰り返す前として――。
そうならないためにも、今回ばかりは捻りに捻ってみた。味方は多い方が有利に尽きるだなんて聞くけれども、経験したけれども――そうしても結果としてはやり直しとなる。だったら――。
魔王は本を閉じて、ある場所へと向かった。そこにいたのは鳥かごのような檻に閉じ込められたカムラだった。彼女は半ばやけにでもなったかのようにして、荒んだ目付きでこちらを睨みつけているようである。
「足掻いても無駄だ」
その言葉にカムラは鼻で笑った。どこかこちらをばかにしているようである。
「それはあんたの方でしょ。世界は終わらない。また歴史を繰り返すだけ」
「いや、それはどうかな」
「偉そうに。クラッシャーがいなかったら存在しない元人間が調子に乗って」
「お互い様だ。お前だってそうだろ?」
じっと二人は互いの目を見た。さながら探り合い合戦のようだ。何かのしっぽを掴もうと、何かの確信を得ようとしていた。向こうがクロだということは知っている。それでも、決定打がないから何も言えやしないのだ。それだからこそ、泳がせてみた。やってみた。幼い頃、そうされたように。
「嘘も何もかも、すべては本当の内に入れる。嘘で相手の信頼を得る。俺が二度目の戦いの後の名なしをこの時代に呼び寄せたのもそうだ。その時代のお前だからこそわかりやすいだろうと思ってな」
「あんたがあたしをこの時代に……」
「どの時代からお前を呼び寄せたらいいか、悩んだんだ。『俺』が一番信頼しやすいやつと仲良くなれるかをな」
「だったら、この姿は……誰? あんたが知っている誰か?」
「だから、言っただろ。『俺』が一番信頼しやすいやつと仲良くさせるためだって」
「ていうか、誰があんたとなんか――」
カムラがそこまで言ったときだった。魔王は「まだか」と呆れた様子。
「いい加減、そのふりを止めたらどうだ。そういう風に嘘をついていたら、『俺』は怒り狂って、お前を殺すぞ」
「はっ、殺せるものなら殺してみれば? あたしの何が目的か知らないけれども!」
「ああ、殺させるさ。あいつに」
その言葉にカムラは硬直した。どうやら予想外の言葉のようで、我が耳を疑っているとでも言いたげである。そんなに何度も聞きたいならば、言ってやる。しつこいぐらいに言ってやる。知ることは当然の権利だから。
「あいつ――『俺』――フレイヴにお前を殺させる。それがこの世界を終わらせる方法だと思っているから」




