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ゆっくり話をしよう、とフレイヴに似た誰かに足止めされた。彼はオルチェよりもこの世界の真理を知っているようである。いや、この言い方には語弊があった。彼はこう言っていた。
ルール変更しているなら、きちんと教えてあげないとフェアじゃないだろ、と。
ルールの変更。それはこの世界における何かしらの条件か。すべてを知っているはずのオルチェも知らない何か。この人物、一体何者なのか。
「お友達を助けに行くんだってな。それなら、ここがどういうところなのか知った上で言っているのか?」
「……魔王の記憶で作られた場所」
「そうだな。ここは記憶為想思って場所だ。あいつ……まあ、魔王でいいか。魔王のためによる、魔王のための居場所でもある」
可哀想なことに魔王の居場所とやらはこの世界にないから、とフレイヴに似た誰かは魔王をばかにしたように笑った。その失笑には同意する。なぜって、魔王がいるからこの世はナズーだらけで誰もが悲しい思いをしなければならなかった。魔王がいなかったらどんなによかったか。どんなに幸せな日々を過ごせたか。すべては魔王が悪い。
フレイヴが「当然だろうね」と肩を竦めた。
「これまでぼくはこの場所で色んな人たちに会ってきた。それも全員が全く知らない人で敵意を持っていた。世間では魔王は嫌われ者になるのは当たり前。ナズーを作った最悪なやつだから」
「だなぁ。神様の日記、必死になって書き変えしていたし。それ以前にも……」
「魔王と知り合いなんでしょ? 敵同士なんでしょ? 話がわかるし。ねえ、手伝ってよ。魔王を倒すの」
そうだ、これまで見てきた者たち、会ってきた者たち全員は敵意があった。フレイヴに似た誰かが言う魔王の記憶での存在ならば、彼だって敵であることには変わりないはず。それならば、自分たちが協力して魔王を倒せばいいに決まっている。フレイヴはもちろん、彼だってこの世から魔王がいなくなることを望んでいるはずなのだから。
敵意を見せていない。相手は話がわかるのだから。「一緒に」と手を差し伸べるフレイヴなのだが――。
「ヤだね」
フレイヴの誘いを拒否した。思わず硬直する。その一方で「何を考えてんだ」と独り言を言う。
「今の俺はあいつを倒せないし。あー……、魔王とやらを倒そうとするお前の考えを変えなきゃなぁ」
どうやら目の前にいる人物はフレイヴの意思にそぐわない存在らしい。それならば、話は変わってくる。やはり、この場所で出会う者たちが自分の味方になることはありえないようだ。結果は敵。どこまで行っても独り。仲間に出会えた、と少しばかり喜んだ自分がばかだった。残念だった。いいやつそうだと思ったなのにな。
「交渉決裂か」
そうフレイヴが身構えたときだった。自分に似た誰かは「そうじゃない」と否定した。どういう意味なのか。彼の考えは明らかに邪魔するような発言だった。今のこの世界を肯定するような最低なことを言っていたのに。フレイヴは言葉を待った。自分に似た誰かは「話がまだ終わっていない」と言った。
「なんで、あいつはこんな世界にしたのか。なんで、お前がここに存在するのか。それらを知らないくせして魔王サマに会いに行くのか?」
「でも、きみは魔王の敵じゃないのか?」
これまで会ってきた者たちの共通点である。だが、フレイヴに似た誰かは「だから、話を聞けよ」とどこか煩わしそう。
「いいか、お前の言うお友達というやつこそがお前にとっての敵なんだよ」




