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首を切断された自称囮役の男。ころん、と首が転がり、フレイヴに顔を見せたのは自分自身の顔面だった。その顔はにやにやと、いかにも何かしらの企みを抱えていますよ。なんて言っているようである。
このあまりにも衝撃的なことに言葉を詰まらせた。その顔面は笑っているが、その笑い声は軋む音によって掻き消される。この音は男の体から聞こえているようだった。特に首から飛び出たカムラの剣の根が今にも体を突き破ろうとしているではないか。
「ぼく?」
やっとの思いで言葉を出せた。その疑問に答えるようにして、男の体からカムラの剣の根が伸びてくる。それは気味悪く笑っている頭を拾い上げて、胴体に装着した。
「なんで、ぼくの姿……? 誰?」
魔王と同等に見られていたことよりも、こちらの方が驚きらしい。フレイヴの頭の隅には苛立ちは残っているものの、驚愕の方が押し退けていた。
目を丸くするフレイヴに、彼に似た誰かは「誰って」と右手の平からカムラの剣に似た武器を取り出した。
「知っているんじゃないのか?」
「は?」
言っている意味がわからなかった。混乱するフレイヴをよそに「ここにいる時点でさ」と何かを知っている様子。
「全部知ったから。俺とあいつに……」
と、ここで口を止めてこちらを見た。じっとこちらを見てくる目だけはフレイヴと少しだけ違うようだ。目は薄い青色の目である。なんだか、魔王の目と似ているようで似ていない。
ややあって、フレイヴに似た誰かは「そういうことかよ」と鼻で笑ってきた。
「あえて、今回はほぼノーヒントで連れてこさせたってか」
「さっきから言っている意味がわからない」
ここまで来て、敵意を一切持たない相手が現れたことに安心感があるのか、フレイヴは少しだけ落ち着きを取り戻せた。この自分と同じ顔をした誰かは何かを知っているようだ。それはオルチェも知らないことか。囮役だというのに、最後まで使えないやつだったな。
フレイヴに似た誰かはカムラの剣に似た真っ黒な剣を地面に突き刺すと、それを背もたれにするようにして寄りかかった。小さな息を吐くと「そんじゃ」そう、フレイヴにリラックスするように促す。だが、これは罠という可能性だってある。それが故に、警戒心は解けそうにない。そんな彼に「おいおい」と苦笑い。
「そう気を立てるなよ。時間はたっぷりあるんだから」
「たっぷりだって? 言っておくけど、ぼくは一刻も早く魔王に囚われた友達を助けに行きたいし、魔王を倒して世界を平和にしたいんだ。こうして話している時間でさえも惜しいんだよ」
「友達?」
「カムラっていうぼくの友達だ」
急いでいるから、と戦う気のない相手を背に向けてフレイヴはこの場を後にしようとするのだが――目の前には真っ黒な剣が立ち塞がった。
「まあ、待て」
「…………」
「ルール変更してるなら、きちんと教えてあげないとフェアじゃないだろ」
ルール変更? フェア? 何を言っているのだろうか。なんて言っても誰も教えてくれないし、曖昧な答えしか返ってこないのは目に見えていた。だが、この人物は――なぜだか自分が知りたいことを教えてくれそうな気がするのだった。




