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大口ナズー戦でカムラの剣を木の根っこのようにして拘束させた。今回も同じだった。自称囮役の男はフレイヴがつけた傷口から、地面から――まるで木の根のように、人の血管のようにして体の内側から張り巡らされて身動きを奪われてしまう。それが体を固定しているものだから、無理に動かそうとすれば、血肉がぐちゃぐちゃになるほどの痛感を覚えるだろう。
これならば、力に差があっても勝利はあると見込んだフレイヴは嬉しそうだった。だが、男の一言で――。
「お前も可哀想なやつだな」
憤慨した。
――誰が可哀想だって? ぼくが? お前も、って「も」って誰? まさか、魔王とかいうんじゃないだろうな? 魔王が可哀想であるならば、ぼくはなんだ? なんで、この人はぼくを哀れんでいるのだろう? なんで、そんな目でこっちを見てくるのだろう?
今の男に目はない。カムラの剣の根に目玉を抉り抜かれてしまったから。目なんて存在しないのに、目があった場所からは「可哀想」だなんて言いたげにこちらを向いていた。それがひどく煩わしいと思う。勝手に可哀想なやつだと決めつけないで欲しい。事実、そうなのかもしれないが、なぜにそれをお前が言うのか。それはお前の台詞に値するとでも? ああ、むかつく。むかつく。とってもむかつく。
「ムカつくことを言うなぁああ!!」
知らない、初対面のやつに嫌なこと言われた。とても悔しい。心の奥底から涙があふれ出てきそうだった。フレイヴは身動きが取れない男に向かって、カムラの剣を振り下ろした。真横に一閃する。斬る、というより叩きつける。それだからこそ、体はめちゃくちゃだった。
「むかつくんだよ!! お前が言うなっ! 囮役のくせにっ!」
一番強く叩きつけた気分だ。そのせいであるかは定かではないが、男の頭が刎ねた。ごろん、とフレイヴの足元に転がる。首からは血は出てこない。首からはカムラの剣の根が蠢いている。これ、人間じゃない。いや、そうだ、と思う。
――こいつはぼくと魔王を一緒の扱いにした。だから、人間じゃない。ぼくはこういうことを言うやつを人間と見なさない。こういうやつは積極的に排除するべきだ。要らない存在だから。要らない、要らない、要らない。本当に要らない。囮役だなんて。実にくだらない。
絶対に生き返ることのない男の死体をフレイヴが見下していると、転がって後頭部しか見えなかった彼の頭が転がった。その頭の顔はあの男ではなく――。
「事実は隠そうとはしないんだ」
フレイヴがいた。




