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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第二十章 囮役とその最期◆
224/263

224ページ

 弾丸が武装集団の男女二人の体へと吸い込まれていく。これを見て、誰もが思うだろう。確実な死であると。これである程度の厄介者はいなくなった。残すところはあの筋肉マッチョのおじさんとその他のモブぐらいか。


 ようやくと言っていいほど、オルチェはフレイヴの方を向いた。フレイヴはハンマーを持った男相手に苦戦をしているようだ。よっしゃあ! 今助けるぜ!


 駆けるオルチェ。それに男は気付いていない様子。ずっとフレイヴの相手をしているようだった。であるならば、この相手をするのにも時間はそんなに要らない。なぜならば、この男の隙をつけばいいのだから。周りをよそ見しているとはいいご身分だこと。それじゃあ、今すぐにその大きな体に一刺しをしてあげようじゃないか。


 射撃砲の形からリーチの長い剣へと変えた。一歩近付く度に嬉しさ倍増。残り数歩辺りでカウントダウンをし始めた。五、シンプルに首からいこうか。四、足を落としてびっくりさせようかな。三、腕を削ぎ落すか? 二、心臓目掛けて一撃か。一、ああ、迷う――。


 途端、オルチェの視界はひっくり返ってしまった。気がつけば、視線の先は乾いた大地。なぜだ。その理由はあとでわかった。遅れて顔を歪めるほどの激痛が足に襲い掛かってきたのだ。これが何であるかを瞬時に理解する。エキストラが邪魔をしたからだ。ふざけんな、冗談じゃねえ。むかつくからオルチェは足に攻撃を当てた武装集団を睨みつけた。本気で殺したいと思った。思うだけに飽き足らず、想像だけ終わらせずに行動を移す。ここからではすぐに詰め寄れないから、剣から射撃砲へと再び戻した。そして、呼吸するようにして引き金を引く。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死に逝け。本当のモブが脇役の邪魔をするな。俺が残そうとする存在を退けようとするな。俺を誰だと思っていやがる?


「俺はクラッシャーの囮役だぁあああああ!!」


「――――」


 直後、何が起きたのかはフレイヴもわからなかった。見たままの光景を話すとするならば、大声を張り上げたオルチェに向かってハンマーを手にした男がそれを振り下ろしたということか。潰されて、血が飛び散るかと思った。それが当たり前の常識であると知っていたからだ。しかし、現実はそうでないのである。オルチェを叩いたハンマー。それは彼を死体にしたのではなく、白い花びらへと変わってしまったのだ。何もそうなったのは彼だけではない。オルチェがきっかけで、フレイヴ以外の存在は白い花びらへと散り変わってしまった。


 これはとても美しいものだ、と思った。だが、そう思っている場合ではないことは当然である。オルチェが自分の前から消えてしまったのだから。それだからこそ、フレイヴは一呼吸を置いた後にオルチェの名前を叫び呼ぶのだった。彼からの返事は一切ない。すべてが花びらに変わってしまった衝撃に耐えきれなくて。誰もいないという恐怖に駆られて思わずカムラの剣を振り回す。


――何がどうしてどうなった? 理解不能、意味不明、なんだ、これは!


 ただ闇雲に剣を振り回していたフレイヴ。その刃がやがて、一枚の白い花びらを斬ったとき――どこまでも続く荒野から一変して大きな都市が目の前に現れるのだった。その敏の中央部には巨大な塔がそびえ立っている。新王国の首都でも独立の国の首都でも見ない景色だ。ということは、魔王に関連する昔の町なのか。


「…………」


 唐突に都市が出現したことにより、少しばかり落ち着きを取り戻したフレイヴはその町の方へと行ってみることにするのだった。

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