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一言で表すならば、つらいで事足りた。非常に苦戦を強いられているのだ。フレイヴはオルチェに「戦え」と命令を下した。どこにでもいそうな少年だというのに、その命令を肯じなければならないと怯えるしかなかった。彼は「死ね」とも言っている。つまり、このシーンで、オルチェ自身は戦って死ななければならないという決まりになっているのだ。初めての感覚だ。己の死を知った状態で死に逝くなんて。なんて贅沢なのだろうか、最初から死にどきがわかっているなんて。未来を視ている気分だ。
もはや、笑うしかない。武装集団はそこまでにおいて強いのだから。向こうはごちゃごちゃと訳のわからん言葉を使っているが、こちらは何か口にすることは不可能だ。強いて言うならば、笑うことぐらいしかできないから笑い声は出している。フレイヴはどのような表情で戦っているのだろうか。彼の方を見たくても見られなかった。見ている暇がないのだから。そのようなことをすれば確実な死が待っている。確かに死ねとは言われたが、今すぐのことではない。戦った後に死ねなのだ。故に今は死ねない。死んでしまったらば、クラッシャーの命に背いたこととなるのだから。
武装集団は着実に二人の命を狙っている。遠方からやって来る弾、目の前に迫りくる刃。反撃の隙がない。逃げるばかり。それはもちろん、フレイヴも同様。
向こうの人数は十人弱、こちらは二人。勝ち目はほぼない。だとしても、これが人でよかったとは実感している。もしも、ナズーであればすぐにこちらの敗北が決定していたのだから。
――そうだ、マシと思えるからこそ動けるんだ。こいつらも結局はただの人間。そう思えるからとても楽だと思うぜっ!
見えていないとでも思ったか。背後に迫っていた少年。このクソガキを見逃すわけにはいかない。にやりと笑みがこぼれるオルチェは自身を殺そうとする少年の手を掴み取った。彼が手にしているのは一振りの剣。対するオルチェが手にしているのは射撃砲ではなく、普段愛用している拳銃だ。これは片手で操作できるから簡単でいい。引き金とやらを人差し指で引けば眼前にいたはずの相手はすぐにお陀仏。一つの動作で人をあの世に連れて逝ける優れた道具なのだ。流石はすばらしい! この世界の文明に感謝だ。
乾いた音、憎しみを持った少年の眉間からは血が流れる。周りが騒然とする。おそらくはこの子どものことを嘆いているのだろう。言葉がわからないから、ただの憶測にしか過ぎない。少年が死んだと同時に槍を持った女性と双剣を手にした男が動き出した。先ほどまでフレイヴを狙っていたのに、今度はこちらか。なるほど、仲間の敵討ちというところか。うん、うん。なるほどねぇ、困難に立ち向かいながらも仲間と共に過ごしてきた日々を忘れたわけじゃない。忘れたくないからこそ、自分は仲間を殺した相手を殺す気だ。そう言いたいのかな?
――お生憎様。
口で開くよりも、心の中で言う方が早い。考える方が早い。
――俺はお仲間が死んだから弔い合戦だとか、敵討ちだなんてクソくらえだと思ってんだよ!
死んだ少年から真っ黒な武器を取り上げ、それの形を変化させた。飛距離は射撃砲、威力は拳銃。どちらのいいところを取った優れものの飛び道具「射撃砲・改」だ。
――キラキラしてんな。その目。仲間が殺されたから、その報いを受けろってか? それをそのまま俺がこれで返してやるよ!
オルチェは飛び掛かる男女二人に対して、黒い射撃砲の引き金を引くのだった。
「死ねぇえええ!!」




