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己が存在する意義を物語とやらに反映させるために強くなろうと思った。強くなるためには軍隊に入るべきだと思ったが、あの老人の顔を思い出してしまう。気分が悪くて、入隊する気にはなれなかった。それでも、強いという存在はオルチェにとってナズーを倒せるという誰かだと思った。考えに考えた末、軍役期間を過ぎるまで独学で体術を取得した。強くなるためには危険なことをやり遂げようと、拳銃を手に入れるためにケレントのもとを訪れた。
自分は名なしとは敵対関係に値する。だからこそ、名なしと同等の存在である魔王を倒す。どんな手を使ってでも、クラッシャーの囮ならばこれぐらいのことをしなければ。そう思って。
戦友軍へと入るや否や、ナズーの情報を片っ端から集めるようになった。入団して五年の月日が流れた頃、仲間からは戦友軍一ナズーに詳しい男だなんて言われるほど。この世界に関しての情報を網羅していると自負していた。だが、現実は違った。フレイヴやカムラが現れ、アルフレッド、国の調査員、大口ナズー――彼らを見る度、己が持っていた情報は些細なことだと思い知らされた。
自身の存在意義がわからなくなって仕方がなかった。何のためにこの世にいるのだろうか。これまでの十一年間は何だったというのか。くだらなくて嘆きたくなるほど。
――なあ、俺の配役ってこの物語に必要か?
「戦え、囮役」
こちらを見下すような視線を向けるのは魔王からクラッシャーと呼ばれたただの少年。そう、彼はただの少年だ。そんな彼に命令された。自分より十一歳も年下なのに。それなのにである。
オルチェは思わず、口角を上げた。どこか嬉しそうであっても、冷や汗が尋常ではない。
「囮役ならば、ぼくのために戦って死ね」
――その通りだ。俺の存在意義。俺の配役。『クラッシャーの囮役』。フレイヴのためならば、死ぬのは当然。目の前にいる勝てそうにない敵に突っ込むのも当たり前。まさしく道化師だ。すべてを知っているからこそ――。
「仰せの通りに」
――俺は物語の最中で存在意義を反映させるしか、配役としてカッコよくはない。元より、道化師役はカッコ悪いが定義であると思える。それをこの俺が、クラッシャーの囮役だという脇役が変えようとしているのだ。変えて何の問題があるというのだ? 世界の事実を書き変えていた最低野郎の手下だぞ。誰かに咎められたり、指図される筋合いはないのだから。
射撃砲を手にオルチェは周りにいる武装集団を見据えた。その目に宿るのは覚悟の光。誰にも止められないような強い光を帯びていた。そんな彼の目に光があるのは当然だとして、フレイヴは横に立った。手に持つカムラの剣は美しい光を露わにしている。
「ここがオルチェさんの見せどころですよ」
「ああ」
途端、武装集団は武器を構え出す。それを見て、オルチェは再びにやりと不敵な笑みを浮かべるのだった。
――どけ、モブどもが。




