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ナズーとは少し違ったバケモノ? 幽霊? とやらが忘れられた森に現れるという噂を聞いた。当時、自分にとって幽霊という存在はこの世の真理を知っている知能的存在だと思っていた。どうせ、今の自分に縛られるものは何もない。失うものはない。それと会話をしてみたいから忘れられた森へと行ってみた。行く先々であの老人と出くわさないか、ナズーと遭遇しないかとひやひやしたものだが――無事に辿り着いた。
忘れられた森の第一印象は気味が悪いの一言で済むような感じだった。いかにも茂みからナズーが飛び出してきそうだ、とびくびくしながら「おーい」と呼んでみた。当然、返事はない。わかっていたことだ。所詮相手は幽霊。人の――それもみすぼらしいクソガキの相手をする気になんてなれないだろう。こんなあのバケモノが出るかわからないような場所にいるより、掃き溜めのようなスラム街で死活問題に向き合う方がよっぽどマシだ。なんて思い、引き返そうとした。
「私を呼びましたか」
目の前にピカピカに光る石像がしゃべった。思わず、「なはぁっ!?」と変な声を出す。衝撃的なことばかりで、言いたいことばかりで喉の奥にある言葉がきちんと整列してくれなくて何も言えなかった。それでも、謎の石像は「初めまして」とマイペース。
「私はあなたがここに来ると思って待っていましたよ、クラッシャーの囮役さん」
「へ?」
ようやく出せた一言がそれだけだった。いや、それ以外の疑問はいっぱいある。訊きたいことはいっぱいある。でも、出ない。何これ、こいつの嫌がらせ?
頭が混乱し過ぎて、何を訊ねようか十分は要したかもしれない。だが、実際は十秒ぐらいのはず。体感時間が狂っているようだ。
「俺が、クラッシャーの囮役?」
そもそも、クラッシャーって誰だレベル。光る石像は律儀に答えてくれた。
「その通りです。あなたは生まれながらにして世界改変をした者の囮役ですよ」
「生まれながらって……?」
「ただの偶然ではないんですよ。必然としてあなたは囮役としてこの世に生を授かった。それだけの話なのです」
何も言えなかった。何かしらの反応を見せたくても、話の内容が信じがたくて――それでも、この石像の存在を否定できないから黙って聞いた。
「そう、誰もがこの世界に存在意義を持って生まれているんですよ。この世自体が一つの物語のようにして。主人公も決まっています。もちろん、あなたの配役もです。役を変えたくても、そういう事実がすでに決まっているから変えられない。あなたは一生クラッシャーの囮役としてこの世を生き続けなければなりません。囮役は道化役と一緒。あなたは事のすべてを知らなければならないのです」




